2024年02月25日

四百年前の落語を聞く会

☆四百年前の落語を聞く会

 出演:林家菊丸さん、三遊亭はらしょう、月亭天使さん
(2024/2/25 14時開演 誓願寺)


 昨年2023年は落語の祖とされる安楽庵策伝上人による醒睡笑が世に出されてちょうど400年。
 偶然そのことに気がついた旧知のドキュメンタリー落語家三遊亭はらしょう、早速策伝上人とゆかりの深い誓願寺に訊ねてみたところ、まったく関連のイベントが企画されていないことを知らされる。
 それじゃあ、自分がやりましょうと企画したのが今回の『四百年前の落語を聞く会』である。
 そういったあたりは、はらしょう自身がドキュメンタリー落語『醒睡笑』で語っていたところだが、その前に高座の横に鎮座する立命館大学所蔵の誓願寺門前図屏風の複製図について同大学の矢野桂司先生から説明をいただく。
 で、はらしょうの企画説明も兼ねたドキュメンタリー落語ののちは、月亭天使さんが高座へ上がる。
 『醒睡笑』由来の落語からということで、少し予定を変更して『平林』から。
 天使さんの『平林』は、ずいぶん前に錦湯さんの会で接したことがあるが、使いに出される丁稚(男の子)の造形がやはり柄に合っている。
 平林の読み方を尋ね尋ねしているうちにうかれてくるあたりが印象に残った。
 仲入りを挟んで、再び天使さんが高座へ。
 もともと予定していた『犬の無筆』をかける。
 これだけではあまりにも短いということで、先に『平林』を話したのだ。
 本人が語っていたように、猫好きの天使さんが犬を演じてみせるのがおかしい。
 そして、三人目に登場するのは、林家菊丸さん。
 ラジオなどで前々から接していたが、生の菊丸さんは実はこれが初めて。
 20日の七本松落語会はまだ体調が今一つだったため、残念ながら断念してしまっていた。
 今日かけたのは『青菜』。
 季節は外れるが、これも『醒睡笑』がもとになる噺なのだ。
 まずは自分の落語家人生のスタートがかつて新京極にあった京都花月だと語り、続けて師匠に入門したあとの梅田花月の楽屋風景で大いにわかす。
 本題も、笑いのツボをしっかり押さえて評判に違わぬおかしさ。
 とともに、細やかさも兼ね備えた充実した口演になっていた。
 いやあ、面白かった。
 最後に再びはらしょうが登場し、本当なら『青菜』で〆るのがベストなのだがと、自作のドキュメンタリー落語『誓願寺とビートルズ』を演じる。
 あな、懐かしや。
 この誓願寺ではらしょう、当時ハラダリャンは演劇公演を行ったのだ。
 僕もちゃんと観に行っている。
 ただし、主筋はそこではなくてこの公演の際に使用したビートルズと自分の出会いについて。
 それこそかつての一人芝居のおなじみのキャラも登場し、そうそうはらしょう、ではなくこの場合はハラダリャンはこれなんだと感慨ひとしおだった。
 菊丸さん、はらしょう、天使さん、おつかれさまでした。
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2023年09月02日

京都らくごワークショップ発表会

京都らくごワークショップ発表会

 開演:14時
 会場:スタジオ松田


 落語家の桂ちょうばさんを講師に迎えて、今年の7月から9回にわたって行われていた京都らくごワークショップの受講生による落語発表会を観に行って来た。
 会場は、ワークショップを含めて旧知の松田裕一郎さん宅1階にあるスタジオ松田。
 ちなみに、ちょうばさんと松田さんとは30年近くの交流があり、今回のワークショップもその縁で開催されたとのこと。
 受講生募集に関しては、こちらもSNS上でほんの少しだけお手伝いをした。

 まずは、ちょうばさんが高座へ。
 現在40代半ば、京都市出身で桂ざこばさんのお弟子さんであるちょうばさんは、上方落語若手噺家グランプリで優勝するなど、実力派の中堅落語家として活躍中を続けている。
 ちょうばさんは受講生をフォローしつつ、『酒の粕』をかける。
 これから発表があるということも考えながら軽めで、それでいてプロとしてのあり様もきちんと示す話しぶり。
 生のちょうばさんは初めてだったが、やはり流石だなあと思う。

 で、以下7人の受講生の方々が高座に上がる。
 下は小学校4年生(松田さんの息子さん)から上は還暦世代(若い!)の方までバラエティに富んだ顔触れ。
 松田さんとの繋がりから、演劇関係の人が若干多めだったが。
 僅か一ヶ月弱で、こうやってお客さんの前で落語を話すのは大変だろうなと感じる反面、小学生のころ落語家になりたかった人間としては、ちょっと羨ましくもあったり。
 文章は人というが、落語も人だなあと改めて感じ入った次第。
 そうそう、トリは松田さん本人。
 ワークショップの説明に小話、そして『始末の極意』とやる気満々の高座だった。

 終了後、松田さんと少しお話ししたが、できれば3年は継続できればとのことだった。
 落語なんてよくわからない、という方にも強くお勧めしたいワークショップである。
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2023年02月25日

玉田玉山京都講談勉強会

☆玉田玉山京都講談勉強会

(2023年2月25日19時開演/京都西院・京新ビル3F)


 遂に年季明けを果たした玉田玉山の京都での2回目の勉強会に足を運んだ。
 会場は前回と同じく西院京新ビルの3階にある一室で、なかなかの入りにまずは何より。

 で、ちょっとしたマクラののち、まずは玉田玉山物語から短めの一席を読む。
 ちなみに玉田玉山物語とは、自分自身の体験や身近な人のエピソードを講談化した新作講談の「私講談」。
 今回読んだのは、お父様が主人公となる物語だが、長大となる(はずの)玉田玉山物語の発端ともなっているところがミソだ。

 二席目は、積極的に新しい仕事を開拓していかなければという体で挑んでみた食レポ講談。
 ただし、いわゆる三ツ星レストランやテレビ雑誌ネットで取り上げられる有名店とは無縁のあたりが玉山君らしい。
 特に、自分がが住んでいる界隈で起こったエピソードは笑ったなあ。

 そして、待ってました!
 最後は大ネタの『講談・加藤の乱 〜加藤紘一の三度返し〜』である。
 ちなみに2000年11月に勃発した「加藤の乱」とは、自民党内の派閥の領袖加藤紘一と山崎拓がタッグを組み、野党提出の内閣不信任案に賛成することで支持率が最低ラインに達していた当時の森喜朗総理大臣を辞任に追い込もうとしたものの、野中広務幹事長の切り崩し策などで結局頓挫してしまった政治的事件をいう。
 その加藤の乱のハイライトといえば、ホテルオークラでののちの自民党総裁谷垣禎一が加藤に向かって口にした「加藤先生は大将なんだから!」の場面だが、これは同じく旧知の月亭太遊とゲスト出演したKBS京都のラジオ番組『角田龍平の蛤御門のヘン』で披露済。
(そういえば、錦湯で太遊さんがわざと弱気な発言をしてみせたとき、「後藤さん(太遊さんの本名)は大将なんだから!」と芝居気たっぷりに返したことがあったなあ)
 今夜は、その後の国会に出席して不信任案に賛成するか、それとも欠席に留めるかという加藤紘一の逡巡が巧みに描かれていた。
 政治好きな玉山君は、「自分自身が愉しくてやる」ので勘弁して欲しい旨断っていたけど、なんのなんの、小学校高学年で戸川猪佐武の『小説吉田学校』<角川文庫>を読みふけり、初めて映画館で観た映画も森谷司郎監督の『小説吉田学校』、おまけに小中高の友人で『小説吉田学校』仲間だったH君と放送部内の部長選挙で三角大福も真っ青の権力闘争を行うことになってしまった人間にとっては、実に面白く愉しい一席だった。
 というか、加藤紘一の弱気に山崎拓の侠気、対する野中広務の老獪さという濃い人間ドラマは、例えば関ヶ原の合戦時の石田三成や大谷吉継、徳川家康らにも通じるわけで、それこそ講談だからこそのネタになっているとも思う。
 かなうことならば、玉田玉山が好きな泡沫候補と呼ばれる面々をネタにした物語も読んでもらいたい。

 と、大いに笑い大いに愉しんだ勉強会。
 次回が待ち遠しい。
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2022年09月29日

玉田玉山講談勉強会

☆玉田玉山講談勉強会

(2022年9月29日19時開演/京都西院・京新ビル3F)


 かつて大好きな京都小劇場の演者の一人に、丸山交通公園がいた。
 自ら率いる友達図鑑や劇団員だった月面クロワッサンもそうだが、彼の本領発揮といえばやっぱり丸山交通公園ワンマンショーだろう。
 本当に足繁く通ったものだ。
 だけど、彼が四代目玉田玉秀斎に入門し、講談師玉田玉山となってからは、コロナだのなんだのあってなかなか接する機会を得ず、先日の第30次笑の内閣『なんであんたはんは市会議員になれへんのか』でようやく久しぶりの「再会」を果たした。
 その丸山交通公園改め玉田玉山が、京都西院で初の講談勉強会を開くというので迷わず足を運んだ。
 会場は、前はウエストコートといったんじゃなかったっけ、今はアイハートというスーパーが1階に入る京新ビルの3階奥の部屋。
 ワンマンショーの会場を少し広くしてよりディープにした、という説明じゃわかりにくいかな、小ぶりな学習塾の教室といった趣の部屋だった。

 で、初の勉強会となる今夜は古典と彼自身のエピソードを講談に仕立てた玉田玉山物語が読まれていた。
 古典のほうは、『般若寺の焼き討ち』。
 大坂の陣の折、奈良の般若寺に滞在中の徳川家康が、真田幸村の謀略によって寺を爆破され、命からがら逃げのびるといった内容。
 武将と武将、武士と武士の激突を流れよくメリハリをつけて読むいわゆる修羅場では、玉田玉山のこの間の研鑽がよく表れていた。
 一方、台詞の部分では彼の演者としての経験(に古い邦画好きも加えていいか)も巧く活かされていたように思う。
 そして、この『般若寺の焼き討ち』の前後は、なんと140を数えるという玉田玉山物語の中から家族のエピソード、それから修業中のエピソードが読まれた。
 こうした自分語りはワンマンショー時代も得意中の得意だったけれど、「我流では限界がある、後ろ盾となるものが必要」という自覚の中で選んだ講談の藝が大きな力となってより構成が堅固になり、要所急所のツボも明確に押さえられるようになっていた。
 とともに、講談の独特の語り口も笑いに厚みを加えていたのではないか。
 いずれにしても、今後の玉田玉山の研鑽と活躍を心から願うに相応しい足を運んで大正解の勉強会だった。
 ああ、面白かった!!!
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2022年07月23日

黒川寄席 vol.31 特別版〜黒川猛・三遊亭はらしょう二人会

THE GO AND MO'S
黒川寄席 vol.31 特別版〜黒川猛・三遊亭はらしょう二人会

 出演:黒川猛、三遊亭はらしょう
(2022年7月23日14時開演/スタジオ松田の家)


 久しぶりの三遊亭はらしょうの京都での公演、加えて土曜開催ということもあって、本当に久しぶりにTHE GO AND MO'Sの黒川寄席を観に旧知の松田裕一郎さん宅1階のスペース・スタジオ松田の家へ足を運んだ。

 で、まずは開口一番、黒川さんの漫談から。
 嘘、というよりもこれはほら話、それも吹きも吹いたり大ぼら話である。
 岸和田出身というお父さん、そして北九州(福岡と長崎の違いはあるが、九州の北側の人の持つ陽性というか、はっちゃけた感じは十分わかる)の血と育ちを巧く取り込んだ内容になっていた。

 続いては、ゲストのはらしょう。
 はらしょうの活動拠点の一つ、ナイツで話題(?)の浅草東洋館の客席や楽屋裏の情景を語りながら場の雰囲気をうかがったのち、古典落語の『八九升(はっくしょう)』をはめ込んだドキュメント落語。
 圓生一門に伝わるという噺だが、実は耳にするのはこれが初めて。
 古典の落語家としては破門されながら、現実にあったエピソードを落語に仕立て上げるドキュメンタリー落語家として認められたはらしょうの師匠三遊亭圓丈への想いも感じられる仕掛けになっていた。

 再び黒川さんが登場して、新作落語を披露する。
 こちらは無手勝流の趣。
 宮本武蔵と佐々木小次郎の巌流島の決闘を題材に、二人の「闘い」がどんどんエスカレートしていく辺りは、当然先の漫談と繋がっていておかしい。

 そして、トリははらしょうのドキュメンタリー落語。
 1991年10月(もう30年以上前になるのか!)の宮沢りえのヘアヌード写真集『サンタフェ』に興奮する原田亮少年ら中学生たちの姿を描いたで、関西弁でのやり取りにかつてのハラダリャン時代の一人芝居なども思い出す。
 とともに、はらしょうがあえて「ドキュメンタリー」「落語」と名乗る理由の一端もわかる話であった。
(終演後聴いたところ、ここ3年ほど東京でも関西の言葉で口演を行っているとのこと。昨年亡くなった圓丈師匠から指摘されたように、確かにはらしょうにとって関西弁は強みになるだろうな。もちろんそれは、先代の桂小南流儀の上方古典落語とは違い、ドキュメンタリー=実録=即興的な部分にも大きく関わってくるという意味で)

 最後は、お客さんとのやり取りなども交えながら黒川さんとはらしょうのトークで〆た。
 14時開演で、約1時間半から2時間程度。
 愉しい時間を過ごすことができた。
 THE GO AND MO'Sもそうだし、三遊亭はらしょうの公演にもまたぜひ京都で接したい。
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2020年02月09日

THE GO AND MO'S 黒川寄席vol.2

☆THE GO AND MO’S 黒川寄席vol.2

 作・演出・出演:黒川猛
(2020年2月9日14時開演/スタジオ松田の家)


 黒川猛さんが自作の創作落語を毎月2本ずつ演じていこうというTHE GO AND MO’Sの新企画黒川寄席も、はや2回目。
 青空は見えつつも、気温は低く、しかも時折雪がちらつくようなお天気の中、果たして集客や如何、と部外者ながら心配していたところ、会場のスタジオ松田の家(旧知の松田裕一郎さんご自宅1階のフラットスペース)に足を運んで嬉しいびっくり。
 蓋を開ければ満席の入りで、まずは何より。

 さて、今回は『鼻』と『裏鼻』の2本。

 『鼻』は、言わずと知れた芥川龍之介の小説を下敷きにした作品だ。
 原典に関するあらすじやら、黒川さん自身のお母さんのエピソードに触れながらコンプレックスやらについてマクラで語ったのち、本題に入る。
 芥川龍之介の描写通りのでっかい鼻だと、いったい何をしゃべっているのかわからんやろう、という発想から生まれた、鼻の大きなお坊さんとその弟子のとんちんかんちんな掛け合い。
 古典の『こんにゃく問答』をもっとエネルギッシュにしたようなやり取りである。
 で、基礎の部分はしっかり作り込みつつも、そこに生ならではの跳躍や爆発、必死のぱっちが加わるのが、黒川さんの魅力で、この『鼻』でもそれが存分に発揮されていた。
 特に、なんとか自分の説教が相手に伝わるよう四苦八苦する姿のおかしいこと。
 いやあ、面白いな。

 続いて、2本目は『裏鼻』だ。
 実は、先ほど演じた『鼻』はとある公演に出演した際、幕間に演じさせてもらった創作落語なのだと、黒川さんが切り出す。
 さらに、公演場所がお寺なのでそれにちなんだ話にして欲しいという要望があり、しかも下ネタはやめて欲しいと釘を刺されたとも黒川さんは続ける。
 それでは、普段通りに下ネタを入れてしまえばどうなるか?
 そこで、つくってみたのがこの『裏鼻』。
 なんと鼻の形が男性のあれそのものというお坊さん、これではまともに人前に出られない…。
 ところが、そこに救いの神、ならぬ救いの魔人が現れる。
 どこぞで手に入れたランプを擦ってみたところ、出て来た出て来た魔人が出て来た。
 でも、この魔人、アラジンではなくアラチンという名前で…。
 まさしく下ネタ全開。
 ただし、そこにコンプレックスの話が巧く盛り込まれているのも、流石黒川さんである。
 笑いのための笑いと侮るなかれ!
 そして、サゲも見事。

 と、寒中足を運んで大いにあったまることのできた黒川寄席でした。
 ああ、面白かった!!!

 次回vol.3は3月15日の14時から、同じくスタジオ松田の家で。
 また、3月29日の14時からは、伏見いきいき市民活動センター会議室305で黒川の笑その17(ゲストに延命聡子さん)も予定されている。
 さらに、2月22日〜24日、THEATRE E9 KYOTOで開催予定のルドルフ『隕石の栞』に、黒川さんが出演されるとのこと。
 ご都合よろしい方はぜひ!!!
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2020年01月19日

THE GO AND MO'S 黒川寄席vol.1

☆THE GO AND MO’S 黒川寄席 vol.1

 出演:黒川猛
(2020年1月19日14時開演/スタジオ松田の家)


 THE GO AND MO’Sの黒川猛さんが、旧知の松田裕一郎さん宅1階のスタジオ松田の家で毎月1回ずつ新たな企画を始めるというので早速足を運んだ。
 題して、黒川寄席!
 創作落語を二本ずつ演じていこうという意欲的な企てである。

 で、一本目は「蜘蛛の糸」。
 ごぞんじ芥川龍之介の名作を落語に仕立て直したものだ。
 閻魔様の前に現れたカンダタならぬカンダタカシ(往年の名脇役神田隆じゃないよ)だったが、なんと死神のミスで2年も早く死ぬことになってしまったと。
 それならすぐさま現世に戻してほしいところだけれど、残念ながら一度地獄へ行ってお釈迦様に助けてもらわなければならないと閻魔様は言う。
 仕方がないので地獄に向かったカンダタカシだったが、善行の少ない彼に与えられる脱出アイテムというのが揃いも揃って…。
 まずもってお釈迦様が次々と落とすアイテムのチョイスに捻りがあるし、必死のぱっちの黒川さんの様がまたおかしい。
 大いに笑う。

 続いて、二本目は「落とし物」。
 財布を持たない人間ゆえ、去年二回もお札を落としてしまったとマクラで語ったのちの本題は、封筒に入った5万円を拾った男の葛藤を描いた作品。
 心のうちの悪魔と天使(?)のキャラクター付けが面白く、中盤以降の天使(?)の妄想ぶりには、古典の「湯屋番」を想起したりもする。
 ラスボス登場の感もあるサゲにも納得。
 もちろん黒川さんのこと、善悪てななんだなんて大上段に振りかぶることは全くないけれど、二本の創作落語に繋がるものもあって、その点でも存分に愉しめた。
 〆て40分程度。
 ああ、面白かった!!!

 日曜の午後のひととき、ご都合よろしければ皆さんもぜひ!
 Vol.2は、2月9日14時開演の予定です。
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2019年12月23日

第100回座錦湯

☆第100回座錦湯

 出演:桂三幸さん、桂あおばさん、林家染八さん、桂米輝さん
(2019年12月23日20時開演/錦湯)


 忙しさにかまけて3ケ月近く伺うことのできていなかった座錦湯だが、何しろ今夜は記念すべき100回目、月亭太遊さんが創めたネオラクゴ・フロンティアから数えると番外企画を除いて250回目の記念すべき回というわけで、何はなくとも足を運んだ。
 終演後に耳にしたお話によると、最近はビリートップの5人に加え、ここでの会によく参加している若手落語家さんが都合にあわせて差配を勤めているとのことで、今夜は米朝一門の桂米輝さんがその任にあった。
 ゲストは、二代目支配人の桂三幸さんに初期からお馴染み桂あおばさん、そして米輝さんと同期でこれまたお馴染み林家染八さんの三人。
 お客さんはというと、けっこうな寒さにも関わらず、懐かしい人から常連さん、リピーターさん、ご新規さんと幅広い方々が集まって、演者観客共に進化を遂げつつある座錦湯のメモリアル・デーに相応しい顔触れとなっていた。

 定刻20時頃、三味線片手に米輝さんが登場、流行り歌を調子よく歌う。
 で、ちょっとした挨拶のあと、来年新春の一門会で長唄の五郎時致の三味線を勤める、本当は三味線だけでいいのだけれど、やれないと悔しいのでここで挑戦してみたい旨断って、弾き唄いを行う。
 五郎時致は、その題名通り、鎌倉時代の曾我兄弟の仇討弟曽我の五郎時致を題材にした長唄で、前段では仇討絡みの事どもが後段では色濃い絡みの事どもが唄われている。
 こうした藝がフラットに演じられるのも、座錦湯ならではだ。

 続いては、染八さんが高座へ。
 昨日のM1に触発されて急に落語がやりたくなったからと、米輝さんとのエピソードなどマクラは短めに、本題の『粗忽長屋』に入る。
 基本は粘らず、緩急強弱のデフォルメのよく効いた語り口で、ここぞというところで笑いを起こしていた。

 三人目は、あおばさん。
 そういえば、少し前になるかMBSラジオ深夜の『あどりぶラヂオ』にあおばさんが出ていて、洒脱なおしゃべりを披露していたんだった。
 今夜も、今日一緒だったあおばさんとのエピソードや師匠桂ざこばさんとのエピソードでまずは大きく盛り上げる。
 途中、あおば頑張れとお客さんからのエールが飛び出したのもご愛嬌。
 これまたM1グランプリに触発されて、昨夜一気に書き上げた新作落語をネタおろししたいんだけれど、どう考えてもすべってしまう。
 すべるとわかっているのにやるのは…、と逡巡する様がこれまたおかしい。
 で、コンビニの面接から漫才に繋がる短いネタだったけれど、なんのなんのきちんと笑いを生んでいた。
 続いて、おなじくネタおろしとなる『湯屋番』。
 若旦那の妄想っぷりが肝となるお馴染みの古典だが、あおばさんの柄、かろみがその若旦那によくあっているように思う。
 高座を重ねたあとに、またぜひ聴いてみたい。

 さてどんじりに控えしは、我らが三幸さんだ。
 怖いものないんですね、とは後述ラストのトークでの米輝さんの言葉だけれど、まさしくマクラからして怖いものなし。
 本題は、本番間近に迫っているかつて演じた新作。
 バンドがテーマの作品で、途中ト書きを読んでいるような処理もあったりして、こちらも怖いものなし。
 久しぶりに三幸さんのハイブリッドさを愉しむことができた。

 最後は、四人による〆のトーク。
 自分で発したとある言葉(フレーズ)に爆笑する三幸さんに、こちらまでつられて大笑いしてしまった。
 やっぱり怖いものなし!

 と、100回目も盛りだくさんの座錦湯でした。
 月曜20時は、皆さんも錦湯さんにぜひ!!
 ああ、面白かった!!!
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2019年10月08日

第90回座錦湯

☆第90回座錦湯

 出演:月亭遊真さん、笑福亭大智さん
 シークレットゲスト:桂三度さん
(2019年10月7日20時開演/錦湯)


 二度あることは三度ある。
 どころではない、これで五度目。
 月亭太遊さん主宰、ネオラクゴ・フロンティアの名で2014年10月からスタートした錦湯さんでの落語会も、今夜でちょうど5回目のアニバーサリーデイを迎えた。
 ということで、ここのところずっとご無沙汰していた錦湯さんへ万難を排して足を運んだ。
 で、第90回目となる座錦湯は、ビリートップ五人衆のうち月亭遊真さんに笑福亭大智さんほかの出演で、誕生回に相応しい充実した内容となっていた。

 定刻20時を少し過ぎたあたり、まず高座に上がったのは大智さんだ。
 大智さんは笑福亭仁智さんのお弟子さんですでに何度も錦湯さんの会に出演しているが、ラジオ好きの当方としてはABCラジオの『兵動大樹のほわ〜っとエエ感じ。』の兵動さんのトーク内での印象も強い落語家さんである。
 マクラは、その『兵動大樹のほわ〜っとエエ感じ。』でも宣伝されていた大智さんメインとしたよしもと祇園花月での怪談イベント『忘霊』にも関係している泥棒がらみの怖い話。
 そこから、本題の『打飼盗人』に入る。
 盗人が忍び込んだ長屋の住人というのが、博打好きのどうしようもない男。
 大事な大工道具も質に入れっぱなし、これではおまんまの食い上げ、ところが質受けしようと借金しようにもだあれも金を貸してくれない。
 見かねた盗人は、男に金を与えるが…。
 長屋の男が下手下手に出つつ、盗人から金を巻き上げていく様がおかしく、「へてな」という言葉が巧くルーティンとなっている。
 今夜がネタおろしという大智さんは、名は体を表す体は藝を表すで大ぶりせせこましさのない語り口。
 それでいて、押しつけがましさとは無縁なので、長屋の男が盗人の懐に入っていくあたりが柄によく合っていると感じた。

 続いては、遊真さんが高座へ。
 近況報告を兼ねたマクラののち、おなじみの『饅頭こわい』を演じる。
 と、言ってもコンビニで売っているような手軽で気軽に買えるお饅頭(それはそれで美味しいけれど)とは違って、遊真さんが演じたのは鶴屋なんとかだとか何某堂で売っているような本寸法長尺の『饅頭こわい』。
 若いもんらが寄り集まって何が好きだ、何が嫌いだ何がこわいとわいわいがやがやおしゃべりに興じている部分から、農人橋で起こる怪談話のくだり、そして題名そのものの「饅頭こわい」の終盤まで遊真さんはたっぷりと語っていく。
 怪談話の部分でじっくりと語り込み、最後の饅頭騒動でぱんとはじける結構は、まもなく入門5年目となる遊真さんにとって好んで取り上げたくもなるだろうと十分に合点がいった。
 やっぱり継続は力なり。

 で、ここで終わらないのがアニバーサリーデイ。
 嬉しいサプライズがあったのだけれど、あえて詳細は語らないことに。
 いやあ、笑ったなあ。
 とともに、かつて培ったものと新たに積み重ねたものの強みを痛感したりもした。
 そうそう、ときどきふと大好きな高田次郎さん(『あかんたれ』の)を思い出したことを付け加えておきたい。

 と、今夜も盛りだくさんの座錦湯でした。
 ああ、面白かった!!!
 そして、二度あることは三度ある、五度あることは六度あるどころじゃない、十度も十五度もと今後も着実に回を重ねることを心より願っております。
 そのためにも、月曜夜は皆さんも錦湯さんへぜひ!!!
(と記すこちらもなかなか足を運べていないのですが、そこは平にご容赦のほど)


*追記
 差配の遊真さんが、シークレットゲストとして桂三度さんが出演されたことをツイートされたので追記。
 高座に上がる前から、もうこれは笑わないと仕方ないというエネルギーがみなぎっている。
 むろん、一世を風靡した「世界のナベアツ」のイメージからの影響もないとは言えないけれど、逆にそうやってこれまで培ってきたものの力の強さがこうやって醸し出されていることもまた否定できない事実だろう。
 ちょっとしたネタで笑いを生んでから、早速本題の『大工調べ』へ。
 江戸落語で有名な噺を上方に移したもの。
 もっちゃりとした語り口だと、もしかしたら違和感を覚えたかもしれないが、三度さんの流れのよい口跡がここでは効いている。
 くすぐりも豊富だし、棟梁(とうりゅう)の啖呵も見事。
 そうそう、上述した通り、時折因業家主が高田次郎さんに見えたりもしたんだった。
 大いに笑った。
 とともに、三度さんのクレバーさというか、自らが落語家であることへの強い自覚を感じたりもした。
 それにしても、蓋が開いてしまうと、二度あることは三度あるって言葉がなんともお恥ずかしい。
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2019年09月29日

三遊亭はらしょう 秋の独演会ツアー千秋楽in京都

☆三遊亭はらしょう 秋の独演会ツアー千秋楽in京都

(2019年9月29日14時開演/☆スタジオ松田の家)


 奴が帰って来た!
 と言っても、特攻野郎Aチームではない、ドキュ落ことドキュメンタリー落語家三遊亭はらしょうのお話。
 名古屋神戸と続いたはらしょうの秋の独演会ツアーの千秋楽が京都は☆スタジオ松田の家で開催されるというので、迷わず足を運んだ。
(ちなみに、☆スタジオ松田の家とは、笑の内閣の公演などに出演されている旧知の松田裕一郎さんのご自宅1階にある小公演並びに稽古が可能なスペースで、当方もササハラユウキ監督の『あしたのねがい』の撮影練習に使わせていただいたことがある。阪急でいえば西院駅、京都市バスだと四条中新道の西行きバス停が最寄りとなるか)

 で、松田さんの家に着いてまずびっくりしたのは、受付になんとGOMO’Sの黒川猛さんが座っていたこと!
 黒川さん曰く、受付をやるのは人生初体験だそうだ。

 で、開演時間を過ぎたあたり、その黒川さんが前説として登場。
 はらしょう目当てで集まったコアなファンも、これには大いにわく。
 黒川さん曰く、前説をやるのも人生初体験だそうだ。

 で、手にしたスマホから流れる出囃子にのってはらしょうが登場し、松田さんがこしらえた高座に上がる。
 勝手知ったる客人たちということもあってか、前回の独演会の話などひとくさりしたのち、本題のドキュメンタリー落語へと入る。
 はて、ドキュメンタリー落語とは…。
 まあ、三遊亭圓丈師匠に入門してどうのこうのといったややこしい部分は全てはしょって、つまるところ、はらしょう自身が実際に体験した面白おかしいエピソードやら強く心に残ったエピソードをドキュメンタリー映画やドキュメンタリー番組の如く、なおかつ当然笑えるネタとして構成し直したものがドキュメンタリー落語ということになるのではないか。
 いずれにしても、はらしょうの観察眼と笑いのセンスが十分十二分に発揮された藝のスタイルだ。
 で、前半のネタは、はらしょうが身近に接している芸人世界の先輩たちを題材にしたもの。
 まずは有名どころのベートーヴェン鈴木(日本全国酒飲み音頭の人)のとあるエピソードに始まり、話題はコアな方向へ。
 最近はらしょうが親しく接しているという、芸歴47年の大先輩の姿がなんともおかしく、ほんのちょっぴり切なかったりもする『まだまだ早い』の一席である。

 で、小休止を挟んだ後半ははらしょうに俄か入門した(?)松田さんのとうねんとって5歳の息子さんが高座に上がって、『寿限無』のおなじみのくだりをつらつらと口にして拍手喝采。
 あいにく息子さんはすぐに破門になってしまったが。

 で、後半は温泉に関するドキュメンタリー落語『浅草観音温泉』と『アウフグース』の二席。
 ただし、温泉といっても、草津だとか別府だとかああいう温泉とは違って、街中にある銭湯が大きくなったようなもの。
 『浅草観音温泉』は、その名の通り廃墟同然の浅草観音温泉なる建物に入った際の体験がホラー映画調に語られていって、そうそうはらしょうは映画好きでもあったんだと改めて気づいたりもした。
 で、続く『アウフグース』は、はらしょうの家の近所にあるスーパー銭湯のサウナでのエピソードに変わる。
 ネタばれはしたくないので、詳細は語らぬものの、お客さんがお客さんとうこともあってか(?)、アトラクション付きの大ぶりな作品に仕上がっていた。

 で、1時間半ほど。
 はらしょうの今をたっぷり愉しむことができました。
 ああ、面白かった!!!

 で、終演後のトークでも話されていたけど、黒川さんとの二人での企画など、はらしょうの京都での会をこれからもどんどん愉しんでいきたいものだ。
 皆さんもよろしかったらぜひ!!!
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2019年07月23日

第81回座錦湯

☆第81回座錦湯

 出演:桂文五郎さん、笑福亭笑利さん
(2019年7月22日20時開演/錦湯)


 5月27日の第74回以来だから、約2ケ月ぶりの錦湯さんだ。
 雨は上がったもののどんよりとしたお天気の京都の夜だったが、常連さんやリピーターさんとなかなかの入りでまずは何より。
 で、第81回目となる座錦湯は、桂文五郎さんの差配で、ゲストは笑福亭笑利さんという5月13日の第72回と同じ組み合わせ。
 参議院選挙も押しのけて、社長が長時間に渡る会見を行う折も折、当然全くそのことに触れないというわけにもいかなかったが(直営業についての簡単な説明など)、そこは落語家さん二人。
 あえて、落語で攻めに攻めようと、これまで全く縁のなかった『皿屋敷』を文五郎さんが、『栴檀の森』(ふたなり)を笑利さんが演じてみた。
 もちろんこれも、錦湯さんだからの試みで無謀は百も承知。
 なので、内容についてはあえて省略。
 そして、落語や落語家、落語界についてのトークで大いに盛り上げた。
 ついつい思ったことを言葉にしてしまいがちな、一言居士ならぬ直言居士の笑利さんだが、言葉の中身が伝わるならまだしも、ただただ直言するという部分だけが一人歩きしているのもどうかと思い、最近は言葉をセーブしているとのこと。
 それでも、「関大落語(関西大学の落語研究会出身者の若手の面々に見受けられる高座口演の癖)は許さない」、「(月亭太遊さんの)ネオラクゴは認めない」と自分の考えをしっかり口にしていた。
 そうした笑利さんの言葉を受けつつも、文五郎さんは見解が異なる部分に関しては自分の考えをはっきり示していた。
 いずれにしても、スリリング、なおかつ刺激的で笑いにも富んだ会でした。
 ああ、面白かった!!

 こちらもなかなか足を運べていませんが、月曜夜20時は皆さんも座錦湯へぜひ!!!
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2019年05月28日

第74回座錦湯

☆第74回座錦湯

 出演:桂文五郎さん、笑福亭笑利さん
(2019年5月27日20時開演/錦湯)


 5月下旬というのに夏かと思うほどの暑さが続く京この頃。
 それでも、夕方頃から少しは涼しくなってきたか。
 今夜は無事時間を確保できたので、錦湯さんへと足を運ぶ。
 74回目となる座錦湯は、差配の桂文五郎さんに、久しぶりの登場となる笑福亭笑利さんのお二人の出演だ。
 ちなみにお客さんのほうは、常連さんにリピーターさん、そして別のお客さんに偶然誘われてという京都を旅行中の方が顔を揃えていた。

 冒頭のトークでは、近況報告も兼ねて、ここのところの落語家としての活動状況を語って大いに盛り上げた。

 さて、頃合いのよいところで文五郎さんが高座へ。
 マクラは近況報告をさらに詳しく。
 約40年ぶりに復活した祇園花月での「はなしか団地」の模様などが語られる。
 で、今夜は「船づくし」という趣向で文五郎さんの本題は『兵庫船』。
 なぞかけなど、喜六と清八をはじめとした船上の人々の掛け合いが肝となる噺で、文五郎さんはぽんぽんぽんぽんぽんぽぽんとテンポよい口演だ。
 ところどころ挟まれる、文五郎さんの「懐疑の念」も薬味というか、よいくすぐりになっていた。

 トリは、笑利さん。
 能楽師の安田登さんとのお付き合いの中で演じることとなった『船弁慶』のネタおろしである。
 マクラでは、落語のもととなった『船弁慶』の梗概に加え、能そのものについても簡単な説明が行われていた。
 ちなみに、同時代の文献資料から考察するに、昔の能は現在よりも相当速いテンポで演じられていたのではないかということだ。
 クラシック音楽にピリオド奏法、ピリオド・スタイルがあるように、能楽でもそうしたオーセンティックな上演が行われることがいずれあったりして…。
 錦湯さんでの『船弁慶』といえば、名は体を表すじゃない、体は藝を表す的な桂恩狸さんの大柄、かつ登場人物が強烈でアグレッシブな口演が印象的だけれど、笑利さんはネタおろしということもあってか、丹念、かつ緩急強弱の間合いをしっかり取りながらの噺運び。
 とともに、登場人物が人好かれするというか、人を惹きつける感じも笑利さんらしいと感じた。
 上述した本番の企画のほうも気になるところだ。

 と、落語二席をたっぷりと愉しみました。
 ああ、面白かった!!
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2019年05月14日

第72回座錦湯

☆第72回座錦湯

 出演:桂文五郎さん、笑福亭智丸さん
(2019年5月13日20時開演/錦湯)


 月日の流れは速いもの。
 映画撮影などが重なって、錦湯さんに足を運ぶのもひと月以上ぶり。
 常連さんやリピーターさんも顔を見せていたが、新しいお客さんも増えているようで、まずは何よりだ。
 72回目となる座錦湯は、支配人五人衆のうち桂文五郎さんが差配で、ゲストはこの1月にビリートップを卒業し、支配人の座も降りた笑福亭智丸さん。
 冒頭のトークでも、同期二人の微妙な関係性を肴にして盛り上げた。

 で、頃合いのよいところで文五郎さんが高座へ。
 まずは、おなじみの『青菜』から。
 日中の気温30度というもはや初夏の勢いの京この頃にはぴったりの古典だ。
 途中幾度もライヴ特有のアクシデントが発生したが、それも笑いに変えつつ、文五郎さんは最後まで乗り切った。

 続いては、智丸さん。
 はじめに令和改元の話題を口にしてから、世の中には変わった祭があると本題の方向へ。
 そして、花火大会を訪れたカップルが二人。
 打ち上がる花火を喜ぶ彼女に対し、花火は嫌いと言い放つ彼氏。
 それはなぜかと尋ねたら、実は彼氏は南大阪のとある地方に伝わる尻花火(口から火薬などを飲み込んで尻から花火を打ち上げる!)を受け継ぐ一族の末裔で…。
 その名も、旭堂南湖さんの『尻花火』である。
 〆のトークでも語っていた通り、錦湯の智丸さんといえば、シモがかったネタをよく取り上げているが、それが下品というより不条理に傾いて聴こえるのは智丸さんの人徳(?)か。

 休憩を挟んで、再び智丸さんが登場する。
 今度は、一転、古典の『鬼の面』。
 丹念、丁寧な語り口で、噺を進めて行く。
 ちまちまの愛称に相応しく(?)、おせつのキュートさいじらしさも印象に残った。

 トリは、文五郎さん。
 予告通り、芝居噺の『七段目』をかける。
 マクラでは、自分自身の高校時代の実体験を交えて笑いをとりながら、『七段目』の内容の背景について説明し、ついでに平成の「言葉狩り」の風潮が令和になってもっと極端なものではないように変わってもらえればとも。
 何はなくとも芝居好きの若だんさん、大だんさんから厳しく叱られれば叱られるほど芝居(歌舞伎)の真似を繰り返す始末。
 遂には客人が来るからと二階に追いやられてしまったが、それでも芝居の真似を止めることはなく…。
 といったおなじみの展開。
 やはり、ここでは若だんさんのエスカレートする芝居真似ぶりがおかしくて仕方ない。
 文五郎さんは、それこそ大向う受けする役者真似ぶりだった。
 リアルな商家風の錦湯さんでの高座も愉しかったが、今度はさらに大きな小屋で接することができたらと思った。

 と、文五郎さん智丸さんで計落語4席。
 久しぶりの生の落語を愉しみました。
 ああ、面白かった!!
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2019年04月09日

第67回座錦湯 帰って来た三河さん

☆第67回座錦湯

 出演:桂三実さん、桂三幸さん、桂健枝郎さん/桂三河さん
(2019年4月8日20時開演/錦湯)


 4月とはいえ、まだまだ肌寒さを感じる今日この頃。
 それでも錦湯には、常連さんやリピーターさんが集まって何より。
 67回目となる今夜の座錦湯は、桂三実さんの差配で、今年で入門2年目となる桂健枝郎さん、おなじみの桂三幸さん、そして秋田県住みます芸人を卒業して2年8ケ月ぶりに関西に戻ってきた桂三河さんと、桂文枝一門が顔を揃えた。

 定刻20時を少し過ぎたあたり、三実さんが開口の挨拶を行ったのち、三河さん、健枝郎さんが登場する。
 錦湯での落語会が始まってしばらく、月亭太遊さんを支える形で何度も出演を重ね、秋田に移る際には「ネオラクゴ・サンガサル」と題した特別のイベントが設けられた三河さんがようやく帰って来たのである!
 と、こう記すとなんだかお涙頂戴調に思えるが、そこは三実さんのこと、ここぞというところではわざとすっと交わして全くドライ、なおかつ軽快にトークを引き出す。

 で、頃合いのよいところで、健枝郎さんが高座へ。
 現在修行中だけれど、三実さんがお師匠の文枝さんにきちんと断りを入れて座錦湯への出演となったそうだ。
 今回が2度目の高座となるそうで、かけたネタは古典の『普請ほめ』。
 ところどころ筋をきっちりと確認しつつ、丹念に話を進めていった。
 顔は二の線、好スタイル、おまけに声もよく通るということで、今後の活躍が愉しみである。
(ちなみに、ラストのトークで、健枝郎さんが早稲田大学で映像などを専門に学んでいたことを知る。ぜひ今度はそういった話をうかがえれば)

 続いては、急な出演となった三幸さん。
 実は、上方若手噺家グランプリでのネタを確認したいということで、いつもの三幸流マクラを重ねたあとは、自作の『二つの未来』を演じた。
 来週グランプリの予選があるため、あえて詳しくは記さないけれど、ハイブリッド落語の作り手たる三幸さんらしい、「とんがり」具合も秘めた作品となっている。
 もちろん、ネオはめ物も大活躍。

 三席目は、三実さんだ。
 マクラの代わりは、2、3分程度の短い落語を二席。
 いい塩梅に捻りが加わった作品である。
 本題は、このおなじみ『動物園』。
 基本の部分は端正丁寧に、でもそこに細かいくすぐりが加わって三実さんらしい口演に仕上がっていた。
 三実さんの高座は、新作古典ともに要注目である!

 トリは、待ってました!
 三河さん。
 秋田でのエピソードをマクラで語って笑いをとる。
 そして、お師匠文枝さんとのエピソードなどから徐々にフグの話題を持ち出して、古典の『河豚鍋』へと入った。
 久しぶりに観聴きする三河さんは、噺の恰幅がよくなったというか、大柄で簡明な語り口だった。
 それでいて、河豚を「おこも」さんに食わせようと算段するあたりでの表情など、三河さん自身の新作『春の一大寺』に通ずる怪しさを感じたりもしておかしかった。
 三河さん、これからもぜひ座錦湯さんへ!

 最後は、全員のトークで〆た。
 三河さんに対して、三幸さんや三実さんが仕掛けるすかす。
 いやあ、嬉しいな。

 と、今夜も盛りだくさんな座錦湯でした。
 ああ、面白かった!!
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2019年03月31日

三遊亭はらしょう京都公演

☆三遊亭はらしょう京都公演

 出演:三遊亭はらしょう
 ゲスト:ロシュフォール姉妹
(2019年3月31日14時開演/京都アンテナカフェ&スペース御所西)


 かつてハラダリャンの名で京都小劇場界に嵐を巻き起こした男、三遊亭はらしょうが京都にやって来る、やあ、やあ、やあ!!!
 ということで、「三遊亭はらしょうin名古屋・神戸・京都 2019春のドキュ落まつり」のうち、千秋楽ともなる京都公演を観に京都アンテナカフェ&スペース御所西まで足を運んだ。
 ちなみに、京都アンテナカフェ&スペース御所西は第二日赤病院近く、丸太町通から新町通を上がって少し行ったところにあるカフェ風なイベントスペースである。

 で、ピエール瀧だとか内田裕也だとか萩原健一のことを絡めつつ、表現する人間が自分の内なるどうとかこうとかとそれらしいことを書き連ねようかなんて思ってたけど、いやあ、そういうのは全くいらない。
 ただただ面白かった!

 ゲストのロシュフォール姉妹(後述!)の前説に続いて、早速はらしょうが高座へ。
 据え置きの机の上にこしらえた高座に、胡散臭い宗匠風のいで立ちのはらしょうが上がっていくだけで実におかしい。
 が、そうしたいで立ちに反して語り口のほうは、この間の研鑽経験を大いに感じさせる至極真っ当なもの、全然胡散臭くない。
 そうそう、はらしょうが見出したドキュ落=ドキュメンタリー落語とは、「ホントの実話を落語で語る噂のドキュメンタリーな落語」(チラシの惹句より)で、彼自身の身近に起こった様々な出来事を落語の骨法を活かしつつ語っていくというもの。
 一席目は、出番の多い浅草の劇場でのエピソードから師匠三遊亭圓丈とのエピソードに転じてくのだが、まずもってエピソードそのものがおかしい。
 途中、前座時代に圓丈さんにつけてもらった古典落語の『やかん』を織り込みつつ、人物造形のデフォルメもきかせて、笑いの豊富なネタに仕上がっていた。

 続いては、ロシュフォール姉妹の登場だ。
 おフランスからやって来た煌びやかに着飾った妙齢な女性の二人組、客席から見て左側はパンダーヌ、右側はトヨシベール。
 ってこの二人、京都小劇場で長く活躍しており、ハラダリャンとの共演者でもあった大熊ぱんださんと豊島由香さんにそっくりだなあ…。
 歌と振りとを交えて掴みは十分。
 その後は、ドキュ落に対抗とばかり、ハラダリャンとのコアなエピソードを語って客席をわかせる。
 思わぬ昔話には、はらしょう自身もどっきり?

 気を取り直して高座に上がったはらしょう、足がつったのもなんのその、二本目のネタに入る。
 今度は、俳優で第一線を目指して頑張っていた頃の映画『パッチギ!』と朝の連続テレビ小説『瞳』の現場で起こったエピソードから、それよりずいぶん前、NHKの大阪放送局(馬場町時代)内にあった喫茶店でバイトをしていた時代のエピソードに転じていくもので、ここでもはらしょうのエピソード遭遇率の高さに感心しつつ大いに笑う。
 『瞳』での某先輩俳優との掛け合いなど、想像するだけでおかしくなってしまう。

 で、振り返ってみるに、ドキュメンタリー落語というのは、結局はらしょうそのものなんだなあと改めて感じる。
 一人芝居をはじめとした小劇場時代、東京に移って落語家修行を続けていた時代のエッセンスがぎゅっとこのドキュメンタリー落語につまっているわけだし、それより何より、彼の日々の生活、人生が即ネタなのだから。
 そして、ロシュフォール姉妹の二人がはらしょう・ハラダリャンについて語った、「自分自身のみっともない部分、弱い部分、みじめな部分も隠さずさらけ出して、それを笑いに変えている」という趣旨の言葉が全てを言い表していると思う。

 ああ、面白かった!!!
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2019年03月19日

第64回座錦湯

☆第64回座錦湯

 出演:月亭天使さん、月亭希遊さん、桂三四郎さん
 大喜利出演:貯蓄アンドザシティさん、あふろだんぺ〜さん
(2019年3月18日20時開演/錦湯)


 途中2週続けてお休みがあったりもしたのだけれど、1月21日以来だから約2ケ月ぶりに座錦湯に足を運んだ。
 夕方以降冷え込みが厳しい京都だけれど、常連さんやリピーターさん、ご新規さんとなかなかの入りでまずは何よりである。
 64回目となる今夜は、ビリートップの面々がよんどころない事情のため、月亭天使さんが代わって主任を務め、2回目の出演となる月亭希遊さん、そして久しぶりの錦湯登場となる桂三四郎さんが顔を揃えた。

 定刻20時、天使さんの呼び込みと共に三四郎さん、希遊さんが登場し、トークが始まる。
 というのは、錦湯さんでの会のオーソドックスなスタイル。
 ここでは、三四郎さんが天使さんの婚活エピソードを引き出して大いに盛り上げる。
 希遊さんも、facebookでの体験をネタにするなど、要所要所で笑いを誘っていた。

 で、頃合いのよいところで、希遊さんが高座へ。
 おなじみ古典の『道具屋』を演じた。
 冒頭のトークで今年で31になると話していたが、入門1年半ということもあって、教わったことを丁寧に辿る筋運びというか、初々しさを感じる口演だった。
 あと、前回も感じたことだけれど、希遊さんは落語家向きの声質をしているなあと感じた。

 続いては、三四郎さんだ。
 トークでの婚活エピソードから自分自身の友人たちの結婚事情などをマクラにしたのち入った本題は、18歳の娘ができちゃった結婚をするという30代後半の父親に関する新作落語。
 出来立てほやほやのまさしくネタおろしだから、あえて詳しくは記さないけれど、家族親子関係が作品の主題になっているあたりは、師匠桂文枝さんの規矩に則っているなと思う一方、設定や登場人物の造形、細かいくすぐりには三四郎さんらしさもまた強く表されていたのではないか。
 笑いどころも多い話で、これけらどう膨らんでいくかが愉しみ。
 それにしても、三四郎さんはやっぱり面白いなあ。

 トリは、天使さん。
 実は、天使さんも結婚絡みの新作落語。
 通常の寄席やら落語会なら、(ネタが)「つく」ため避けるべきところだろうけれど、ここは錦湯さんの会である。
 全く無問題!!
 こちらは、アラフォー世代の女性の結婚(式)願望が如実に反映された作品だけれど、もちろんあれやこれやとデフォルメが仕掛けられている。
 結婚相手のチョイスもおかしい。

 時間の都合で、三四郎さんがあいさつをして退場したのち、大喜利がスタート。
 天使さんの仕切りで、希遊さん、並びに大喜利連の貯蓄アンドザシティさんとあふろだんぺ〜さん(この三人、同じ学年とのこと)がお題に挑んでいった。
 錦湯さん据え置きのけっこう難しいお題だが、そこはもともと芸人をしていたということもあり、大喜利連何するものぞ、希遊さんもコンスタントに回答を重ねていた。

 と、久しぶりの座錦湯は盛りだくさんでした。
 ああ、面白かった!!

 諸々あって、しばらく足を運ぶ機会も少なくなるかと思いますが、その点、平にご容赦のほど。
 その代わり、毎週月曜夜は皆さん錦湯さんにぜひぜひ!!!
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2018年12月21日

笑福亭笑利歴史落語公演 平賀源内

☆笑福亭笑利歴史落語公演 平賀源内

 出演:笑福亭笑利さん
(2018年12月21日19時開演/瑞泉寺)


 今では泣いてばかりいる西田敏行だけれど、正直昔は怖い役者の一人だった。
 あいにく出だしの頃の青年座の舞台は観ていないが、吉村公三郎監督の『襤褸の旗』はもちろんのこと、ある程度有名になったあとでさえ、彼の顔付きには飢えた山犬のような鋭さがあった。
 例えば、『特捜最前線』の高杉刑事にしても、『西遊記』の猪八戒にしても、池中玄太やサンキュー先生にしても、『おんな太閤記』の豊臣秀吉にしても、コミカルな演技を披瀝しつつも、目が怖い、顔が怖い。
 そんな彼がソフトタッチに変化し始めたのは、まずもって『釣りバカ日誌』のハマちゃん、そしてナショナル時代劇『翔んでる!平賀源内』の平賀源内あたりではなかろうか。
 残念ながら、『キラキラ音頭』というテーマ曲がいっちゃい過ぎていたか、もしくはコミカルな造りが敬遠されたか、それより何より水戸黄門や大岡越前といった権威主義まずありきの固定視聴者には平賀源内の魅力が伝わらなかったか、いずれにしても1シーズン限りで番組自体が翔んで行ってしまった『翔んでる!平賀源内』だが、いつもは悪役ばかりの川合伸旺が善玉を軽妙に演じていたこととともに、西田敏行の路線変更を窺わせたドラマとして強く印象に残る。
 ただ、当方より少し上の世代の方々となると、平賀源内といえば早坂暁脚本、二代目クイズタイムショック、「くどい、くどいぞ忠相!」の怒りん坊将軍山口崇が源内を演じた『天下御免』ということになるらしく、今夜、笑福亭笑利さんがお客さん方に「平賀源内ってどんな人か知ってますか?」と話題を振った際に出た答えも、やはり『天下御免』のほうだった。

 そう、この度笑福亭笑利さんが京都三条木屋町は瑞泉寺(松屋のすぐ隣)で始めた歴史落語公演は、まさしく笑利さんとお客さんが一緒に創り上げていくスタイルがとられているのである。
 で、その一回目に笑利さんが取り上げたのが、何を隠そう、いやちっとも隠していない平賀源内なのだ。
 江戸時代中期、マルチな人として活躍した平賀源内だけれど、名前ばかりが先にきて、例のエレキテル以外は今一つ何をやった人だかわからない。
 そんな源内の人となりについて、お客さんと共に確認していこうというのが、今回の大きなテーマとなっている。
 だから、落語以外のパートでは、お客さんからの反応質問合いの手も大いにウェルカム。
 さらに、紙切りや『鯉つかみ』などこれまでも手先の器用さを発揮してきた笑利さんは、源内が少年時代に発明したといわれるお神酒天神(顔が赤く変わる掛け軸)やエレキテルのレプリカを自作したり、ビニールのカップとアルミ箔でエレキテルに使用されたライデン瓶(静電気を溜めた上で電気を発電させる)と同じ仕組みを造ってバチバチと実際にやってみたりと、お客さんを巻き込んでいく。
 もちろん、そこは落語公演なので、きっちり自作の新作歴史落語のネタおろしも行う。
 杉田玄白や田沼意次といった歴史上の人物を織り込みながら、江戸に出て高松藩から「仕官お構い」(他藩だろうが幕府だろうが、雇われてはならぬという命令)となった平賀源内の姿を扱った話で、あえて悲惨な晩年を描かなかった点など笑利さんの想いがよく伝わってきたし、笑利さんお得意の(と)ぼけたキャラクターが出て来てお客さんの笑いを掴んでいた。

 あれやこれやと一手に引き受けて笑利さんも大変そうだったが、お客さんが40人を超えた上に、ご住職の中川龍学さん(中川学名義でイラストレーターとしても活躍。会のチラシのイラストも中川さんによるものだ。実は、お話をしたのは今夜が初めてだったが、『父のこころ』の谷口正晃監督のご友人で、その際お世話にもなっていた)も非常に積極的だし、お客さんとして来場されていた磯田道史先生が時折助け船を出すなど、笑利さんの繋がりの豊かさを強く感じる会でもあった。
 ぜひとも長く継続してもらいたい。
 ああ、面白かった!!!

 そうそう、アンケートで好きな歴史上の人物として堺幸彦と書いたけど、これは堺利彦の間違い。
 うっかりして、堤幸彦とごっちゃにしてしまった。
 あと一人は、足利義昭。
 我ながら、らしい人選ではある。

 あっ、書き忘れていた。
 休憩中、目薬の木を煎じたお茶が笑利さんから振る舞われたんだった。
 非常に苦いものの、なんだか癖になる味だ。
 まずい、もう一杯!!!
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2018年12月17日

第56回座錦湯

☆第56回座錦湯

 出演:月亭遊真さん、桂三幸さん、桂白鹿さん、月亭希遊さん
(2018年12月17日20時開演/錦湯)


 日中は少し気温が上がったものの、朝晩の冷え込みがめっきり厳しくなった京この頃。
 今夜も錦湯さんでは座錦湯が開催された。
 諸々あって、三週間ぶりに顔を出す今回は、月亭遊真さんの差配で、桂白鹿さん、月亭希遊さん、そしてスーパーゲスト(!)の桂三幸さんが出演した。

 まずは、遊真さん、白鹿さん、希遊さんのお三人のトークから。
 今夜が錦湯さん初出演となる希遊さんは、月亭遊方さんのお弟子さんということで、遊真さんにとっては弟弟子にあたる。
 入門一年目で修業中の身ということで、遊真さんはもちろんのこと、白鹿さんもそこに加わって弟子修業の話やら、月亭一門では行われていない事始めについてなど語り盛り上げる。

 で、頃合いのよいところで、希遊さんが高座へ。
 古典の『鉄砲勇助』をかける。
 上述の如く、一年目ということで初々しさを強く感じる丁寧な口演。
 ちょっと高めの張りのある声質や語り口は上方落語むきだと思うので、これからの研鑽がとても愉しみだ。

 続いては、白鹿さん。
 冒頭のトークの繋がりで、今年自分にも弟弟子ができたんだけれど…とマクラで語り笑いを誘う。
 本題は覚えたてという『転失気』。
 登場人物のキャラクター分けがしっかりしている上に、メリハリがよく効いた話し運びで耳にすっと入ってくる高座だった。

 三席目は遊真さんで、これまたおなじみの古典『真田小僧』を演じた。
 ただし、錦湯さんでは父親が子供にお金をとられたところに母親が帰って来るあたりでサゲる場合が多いが、遊真さんは真田小僧という題名のもととなる講釈の部分をきっちり演じ最後まで通した。
 錦湯さんで遊真さんを聴き始めて、もう三年以上になるか。
 子供の頃から大柄だったとマクラで遊真さんが語っていて、確かに初めての高座の際にもその柄の大きさは感じたのだけれど、この間の研鑽が物を言うというのか、落語家としての柄も一歩一歩大きくなっているように僕には思える。
 さらに長めのネタに接していく日が待ち遠しい。

 トリは、三幸さん。
 今夜もネオはめ物(スマホ・Bluetooth・ボウズのスピーカー)を駆使して、新作のハイブリッド落語を披露した。
 作詞に悩むミュージシャン、実は友人の画家から飼い猫を預かっていたのだが…。
 という猫が大活躍するお話で、猫相手にミュージシャン(三幸さん)が四苦八苦する仕草、中でも腕の動かしかたなど実にキュート。
 笑いながら、ちょとほっこりした。

 と、今夜も盛りだくさんの座錦湯でした。
 ああ、面白かった!!

 そして、皆さんも毎週月曜夜は錦湯さんにぜひ!!
(来週24日、再来週31日はお休みの予定ですので、お間違いなきように!!)
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2018年11月26日

第53回座錦湯

☆第53回座錦湯

 出演:桂三幸さん、桂治門さん、露の新幸さん
(2018年11月26日19時開演/錦湯)


 11月も最終週。
 いよいよ年末だ。
 寒さもどんどん増してきた京この頃だが、今夜も錦湯さんには常連さんやリピーターさんが集まった。
 今夜は、女性率が高かった。

 第53回目となる座錦湯は、現支配人のビリートップの皆さんがいずれもアウト!
 ということで、二代目支配人の桂三幸さんが差配を務め…。
 ることになっているのだけれど、前々からの用件があったため、桂治門さん、露の新幸さんのお二人がたっぷりトークで奮戦し、お客さんを盛り上げる。
 さらに三幸さんが加わってトークを繰り広げたのち、落語がスタート。

 じゃんけんの負けたもん順で、まずは新幸さんが高座へ。
 日頃から字が読める字が読めると偉そうにしていた男、実は全く字が読めず…。
 勧進帳よろしく読めない手紙をそれらしく読もうと無理を重ねる男の姿を描いた、古典の『手紙無筆』である。
 新幸さんはテンポのよいアグレッシブな口演で、実は字の読めない男の逆ギレぶりがおかしかった。

 続いては、治門さん。
 桂小春団治さんのお弟子さんで、錦湯さんには二回目の出演だ。
 古典の『茶の湯』をかけたが、こちらは柔らかい語り口。
 とんちんかんな茶の湯に勤しむご隠居さんと小僧さんが憎めない。
 くりくりっとした目をはじめ、表情の変化が印象に残った。

 トリは、三幸さんだ。
 ボウズのスピーカーから流れる『ルパン三世』のテーマにのって登場した。
 で、本題はおなじみ古典の『厩火事』。
 普通25分かかるで、と言われる噺を三幸さんはスピーディーに演じ切る。
 小林秀雄曰くモーツァルトのかなしさが疾走するのと同様、三幸さんの厩火事は疾走する!
 当然、三幸さん流儀の会話の切り返しも疾走する!

 で、治門さんの写真を使ったフリップ漫談と、それに対する三幸さんの解説と突っ込みがあったあと、さらに新幸さんのギター伴奏で三幸さんが歌を歌うというおまけ付き。
 12月22日の朝に天満天神繁昌亭で予定されている三幸さんや新幸さんたちの会の前準備である。
 三幸さんの歌声はもちろんのこと、かつてユニバーサル・レコードからCDをリリースしたことのあるミュージシャン出身の新幸さんのギターがまた見事だった。

 と、今夜も盛りだくさんの内容でした。
 ああ、面白かった!!

 そして、毎週月曜夜は皆さんも座錦湯へぜひ!!
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2018年11月19日

第52回座錦湯

☆第52回座錦湯

 出演:桂小留さん、桂恩狸さん、キイロイゾウサン
(2018年11月19日19時開演/錦湯)


 秋もささっと終わってしまい、そろそろ冬の訪れを感じさせる京この頃。
 錦湯さんには、老若男女、ご新規さんにリピーターさん、常連さんとバランスよく集まってまずは重畳重畳。

 52回目となる座錦湯は、桂小留さんの差配で、おなじみ桂恩狸さん、そして漫才コンビ・キイロイゾウサンのお二人がゲストとして出演した。

 定刻19時あたり、小留さんの早速の呼び込みで恩狸さん、キイロイゾウサンが登場しトークをスタートさせる。
 今年のM1グランプリの3回戦に出場したキイロイゾウサンだが、実はコンビの一人黒木雄介さんが関西大学の落研所属で小留さんの後輩、とある企画が出会いのきっかけだったといったあたりのエピソードを話しつつ、お二人の紹介を行っていった。
 一方、小留さんの同期となる恩狸さんに対しては、あえての「塩対応」。

 と、盛り上がったところで、キイロイゾウサンの漫才へ。
 キイロイゾウサンは、お客さんから向かって左側の川原礼風さん(ツッコミ)と右側の黒木雄介さん(ボケ)によるコンビで、お二人とも宮崎県の出身。
 フリーで活動中とのことで、オリジナルグッズであるTシャツを着ての本番である。
 一本目のネタは、黒木さんがおじいさんと遊んだ話。
 おじいさんへの無茶のバリエーションがまず面白い。
 で、黒木さんのエネルギーの発散加減や、それに対する川原さんの絡み方のバランスがよく、大いに笑った。

 続いては、恩狸さんが高座に上がった。
 まずは、前回出演したかったのだが、そうはならなかった顛末についてマクラで語る。
 そして本題は、自作の新作『愛犬ランラン』。
 会社の先輩からペットのランランを預かって欲しいと頼まれた後輩だったが…。
 牛刀で鶏を裂く、どころか手で鶏を引き裂いてこん棒で殴りつけたような、ぶっとんだ展開がツボにはまった。
 ラストのトークなどで恩狸さん本人も語っていたように、なかなかそのままでは出しにくいとはわかるけれど、あの無茶苦茶さはできればならして欲しくないなと思ったりもする。

 三番目は、再びキイロイゾウサン。
 今度は、黒木さんがバトルロワイアルみたいな追い込まれ系学園物の主人公になってみたいというネタ。
 そうそう、そういうのあるあるというキャラクターを演じる黒木さんへの、川原さんの軽妙ないなし方もおかしかった。
 キイロイゾウサン、これからがますます愉しみだ。

 トリは、小留さん。
 実は、前回のシークレットゲストは小留さんだったのだ!
 で、試したネタの結果をまずもってマクラで報告してから、本題の『阿弥陀池』に入る。
 新聞を読んでいないからと嘘の話二つに騙された男が、それじゃあ俺も人様を騙して楽しんでみようとするものの…。
 というおなじみの古典である。
 小留さんは基本は軽快なテンポ、それでいてここぞというところではしっかり間をとり、なおかつ細かいくすぐりもたっぷり加えつつ、笑いの多い愉しい高座に仕上げていた。

 さらに、今夜も大喜利を決行。
 小留さんに始まって、黒木さん、川原さん、恩狸さんが順番に用意されたお題を出しつつ、他の出演者(+大喜利連のお客さん)が解答を重ねるというスタイルがとられていた。
 ようやくお題を出す側に回った川原さんのハイテンションぶりが中でも印象に残る。

 と、今回も盛りだくさんな座錦湯でした。
 ああ、面白かった!!!

 そして、毎週月曜夜は皆さんも錦湯さんへぜひ!!!
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2018年11月12日

第51回座錦湯

☆第51回座錦湯

 出演:笑福亭智丸さん、桂白鹿さん、黒パプリカうるふさん、シークレットゲスト
(2018年11月12日19時開演/錦湯)


 11月も半ば近く、ようやく秋の気配も色濃く、というか冬の足音が近づく京の夜。
 錦湯には、常連さん、ご新規さんが集まった。
 51回目を迎える座錦湯は、お久しぶりの笑福亭智丸さんを差配に、桂白鹿さん、黒パプリカうるふさん、そしてシークレットゲストさん(諸般の事情で。サプライズとはまた別のお方)の出演。

 定刻19時になって、4人が登場し自己紹介を兼ねたトークで盛り上げる。

 で、頃合いのよいところで、黒パプリカうるふさんがネタに入る。
 ちなみに、黒パプリカうるふさんって誰?
 という方も多いと思うが、襲名されたばかりの旭堂南龍さんの弟さんで笑いに関する活動もされている由。
 フリップ(画用紙帳)を使ったネタを披露していたが、東京大阪での両うんこ映画祭で受賞したというだけあって、エロはすっ飛ばしてグロ・ナンセンスの筋運び。
 ツボにはまる人には大いにはまるという内容で攻めた。

 続いては、智丸さんが高座へ。
 おなじみ『寿限無』をかけるというので、あれれ?? と思っていたらそこは智丸さん、寿限無の名づけの場面をやけにはしょっていたのも当たり前、急に話が脱臼し始める。
 その脱臼の加減がおかしかった。

 三人目は白鹿さんだ。
 初めて錦湯さんの会に出演したときの惨状(?)がどうにも印象的だったとのことで、まずはそのエピソードからマクラを始める。
 次いで桂文福一門の面々の「らしい」珍妙エピソードで笑いをとり、さらに白鹿さんと奥さんの関係について語ってから、本題の『天狗裁き』に入る。
 覚えたてのネタとのことだったが、要所要所でメリハリをしっかりつけた流れのよい高座で、改めてよくできた落語だなと感じた。
 大きな会場での口演もぜひ聴いてみたい。

 再びうるふさんが登場し、またも画用紙帳を利用したネタを披露する。
 こちらはさらにグロ度が増したというか、ゲロ・嘔吐・吐瀉物を真正面から「描いた」ネタで攻めに攻め切った。

 続くシークレットゲストさんもフリップネタだ。
 ただし、こちらは画用紙帳ではなく通常のフリップで、うるふさんの手描きのイラスト攻勢に対しネタもきちんと印字されている。
 大劇場用のネタをこちらでひとまず試したいゆえのシークレットということだったのだけれど、今流行りの小道具が効果的に使用されていた。
 ラストの必死のぱっちがおかしくて、大いに笑ったなあ。

 トリは、再び智丸さん。
 今度は本寸法のネタで『借家借り』。
 何事にでも小言を言わないと気のすまない家主の幸兵衛は、空き家を借りに来た相手に対しても次から次へと小言を繰り出す。
 遂には妄想までを働かせ…。
 あれあれこれって、『小言幸兵衛』じゃ…。
 って、もとはといえば上方が先。
 智丸さんは、憎々し気の少ない、どちらかと言えばチャーミングな幸兵衛ぶりだった。

 最後は、久しぶりに大喜利を決行。
 白鹿さん仕切りの下(途中、智丸さんと交代)、うるふさんが用意したお題に出演者の面々、加えて大喜利ストの貯蓄アンドザシティさん(こちらもお久しぶり!)が答えていくというもの。
 自分のネタがネタだけに、うるふさんのお題は一筋縄ではいかないものだったが、各人各様の解答で乗り切っていた。

 智丸さんが「切断」がテーマの会でしたといみじくも口にしていたけれど、確かに一つ一つのネタの個性が際立った回でした。
 ああ、面白かった!!

 そして、毎週月曜の夜は皆さんも錦湯へ!!
 最近男性率がめっきり高いので、女性の方は特に!!
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2018年11月05日

第50回座錦湯【通算200回記念回】

☆第50回座錦湯

 出演:桂三実さん、林家染八さん
(2018年11月5日19時開演/錦湯)


 50回目の座錦湯。
 そして、2014年10月にスタートした錦湯さんでの会は、回を重ねて通算200回目を迎えた!!!
 そんな記念すべき今夜は、なんと演者さんにお客さん(常連さんやご新規さん)と男性ばかり。
 スタートとラストのトークで「まるで牛丼屋さんみたい」との言葉も飛び出たが、これもまた錦湯さんでの会らしいと、1回目から長く通っている人間としては思ったりもしたり。

 栄えある今回の差配は桂三実さんで、ゲストもお馴染み林家染八さん。
 定刻20時あたりからのトークも、勝手知ったるなんとやらで調子よく盛り上げる。

 で、よい頃合いで三実さんが高座へ。
 10月31日のハロウィン騒動などをマクラで語ったあと、本題の『真田小僧』に入る。
 さかしい子供の口車に父親まんまと乗せられて…。
 といった具合のおなじみの古典で、三実さんはメリハリのよく効いた快活な口演を聴かせてくれた。

 続いては、染八さん。
 マクラは、なんと誕生日に発覚即手術となった盲腸(虫垂炎)にまつわるあれこれ。
 転んでも、ではない発病してもただでは起きないのが落語家さんということだ。
 本題は、そろそろ季節ということで『ふぐ鍋』。
 ふぐは食べたし命は惜しし、ってこれは前も書いたっけ…。
 てっちり食べたい大の男二人の一騒動を描いた古典だけれど、ここぞというところでデフォルメされる染八さんの人物造形がおかしい。

 三席目は再び三実さん。
 通常の寄席や落語会では同系列の作品は「ネタがつく」といって避けるのだけれど、ここ錦湯さんでの会は無問題。
 ということで、あえて子供が登場する『僕たちヒローキッズ』をかける。
 塾通いに家での勉強と休まる暇のない小学生たちの「疲労困憊」ぶりを扱った、三実さんのお師匠さん桂文枝さんの新作である。
 母親に外で遊んで来なさいと命じられたじゅん君の途方に暮れた感じがまずいいな。
 そして、対するたぬま君の疲れっぷりも切ない。
 もちろん、笑どころも三実さんはしっかり押さえていた。

 トリは、染八さん。
 寺院の中に病院、なぜかといえば寺の坊主の息子が病院の院長で、しかも病院の名前は蓮の池クリニック。
(題名もまんま『蓮の池クリニック』。神戸のはすいけクリニックをもじったものだろう)
 設定自体がたいがいだが、さらにこの坊主というのがそれこそ罰当たりの無理無体無法無謀を繰り返す。
 その攻めの笑いの連続に、これって笑福亭福笑さんの新作かしらんと思って帰宅後調べたら第7回上方落語台本入選作とのこと。
 ちなみに、発表の会では福笑さんが演じていたようでさもあらんの一語である。

 最後はアナウンスされていた大喜利はやめにして、三実さんと染八さんのトークで〆た。

 と、新旧二席の落語で決めたアニバーサリー座錦湯でした。
 ああ、面白かった!!

 そして、皆さんも月曜夜は錦湯さんにぜひ!!
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2018年10月30日

ネオラクゴ・マーベリック 後編『ネオラクゴが当たり前になり、先入観にまみれてしまっても、それをはるかに凌駕する新しさ』

☆ネオラクゴ・マーベリック
 後編『ネオラクゴが当たり前になり、先入観にまみれてしまっても、それをはるかに凌駕する新しさ』

 出演:月亭太遊さん
(2018年10月29日20時開演/錦湯)


 京都国際舞台芸術祭KEXのオープンエントリー作品(正確に言うと、すでにKEXは終了しているので、その連動公演ということになるだろう)であるネオラクゴ・マーベリックの後編『ネオラクゴが当たり前になり、先入観にまみれてしまっても、それをはるかに凌駕する新しさ』を観た。

 端的に評すれば、徹頭徹尾、月亭太遊さんらしい企画であり会であった。

 いや、それでは不親切に過ぎるかもしれないので、やはり大まかな内容や思ったところについて記しておくことにする。
(あいにく見逃した10月1日の前編が序であり問いであれば、今回の後編は結であり解ということになるだろう)

 定刻20時頃に月亭太遊さんが登場し、もし常連さんだけだったら通常のネオラクゴを演じるところだったが、KEXのアナウンスを参考にしてお越しになったお客さんも少なくないので、予定通りネオラクゴ・マーベリックを行うことにする旨、簡単な説明がある。
(三代目月亭太遊が女流落語家という設定は、女性性や女性アーティストに焦点をあてた今年のKEXのテーマにそったものとの説明もある)

 さて、ここから作品がスタートする。
 まず、ゲラウェイまさおなるピン芸人(に扮した太遊さん)が登場して、ネオラクゴの現状なるものを説明する。
 曰く、初代月亭太遊に始まるネオラクゴは今や「落語」を凌駕して芸能芸術の一大ジャンルとなっている。
 今夜は、そのネオラクゴの生誕の地である錦湯で三代目月亭太遊が独演会を行う。
 と、途中ネオラクゴの成立の事実を交えながら、作品の結構を伝えた。

 で、初代月亭太遊の弟子で、女流落語家の三代目月亭太遊(元は月亭太子という設定。演じているのは、もちろん太遊さん。無精髭が生えた上に、橙色の着物に黒の羽織といういつものスタイル。話し方のみ女性女性している)が高座へ上がる。
 演じるのは、初代太遊の持ちネタ(の体)、『ドナドナ』、『場末のバステト(ただし熊本弁ではなく標準語っぽくなおされたバージョン)』、『幻影百貨店』、『たまげほう』…。
 女性らしい口調の強調をはじめ、嘘くさい標準語の『場末のバステト』、わざとらしい関西弁の『幻影百貨店』、そして感極まって泣き出す『たまげほう』と、あえてやってる感が濃厚に漂う内容だったが、それでも『幻影百貨店』の中盤、宇宙やブラフマーが飛び出すなどネオラクゴらしさが浮かび上がった部分では大きな笑いが起こっていた。
 ラストは、『たまげほう』で泣き出した三代目を初代月亭太遊が叱りつけて、客前に登場し謝るという形。
 つまるところ、「茶番」を通して、落語(界)とそれを取り巻く状況・人々について太遊さんがどう考え、どう対峙していきたいかということが示されていたのではないか。
 ちなみに、僕自身が一番ツボにはまったのは、(冒頭の説明で「自分がアーティストになった」という言葉を受けてもいるのだけれど)作品が終わったあと月亭太遊さんが、今夜の作品にこめた想いをはっきりと語っていた点だ。
 言葉をかむことの何が悪いのか、かむほうが自然なのではないかと問題提起をしたり、あえて笑いに走らない内容に努めたと暴露したり。
 あっ、そこまで明け透けに語るのか、と思わず笑ってしまった。
 そして、そうした言いたいことを隠さずに言ってしまうところもまた太遊さんらしいと改めて痛感したりもした。

 ただ、そうした太遊さんの趣向志向が的確に理解されるためには、意図的に「拙い」部分とあえて「精度の高い」部分の差をよりはっきりと付ける必要があるのではないかと感じたことも事実だ。
 それと、作品の内容や全体的な結構にせよ、アーティスト宣言にせよ、九州に移動して以降の太遊さんの苦戦が窺えるとともに、次のステップというか今後の方向性に対する太遊さんの懊悩葛藤が強く窺えたことも指摘しておかなければなるまい。
 太遊さん本人の意志は意志として、ネオラクゴがより浸透しやすい場所に拠点を構え直すことも今後の選択肢に加えておいたほうがよいのではないかと僕は考える。

 いずれにしても、今現在の月亭太遊さんがよく示された興味深い作品であり会だった。
 これからの太遊さんの活動を注視したい。
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2018年10月16日

第48回座錦湯

☆第48回座錦湯

 出演:月亭遊真さん、桂三幸さん、月亭秀都さん、桂文路郎さん
(2018年10月15日19時開演/錦湯)


 ようやく秋めいてきた京この頃。
 48回目となる座錦湯は、月亭遊真さんの差配で、ゲストに二週続けての桂三幸さん、月亭秀都さん、桂文路郎さんを迎えた。

 定刻19時を少し過ぎたあたりで4人が登場し、師弟関係などについてトークを繰り広げ盛り上げる。

 で、頃合いのよいところで秀都さんが高座へ。
 季節からは少し外れたけれどまだなんとか間に合うだろうからと、桂雀三郎さんにつけてもらった『青菜』を演じる。
 おなじみの古典だが、秀都さんは基本は丹念かつ快活に進めつつ、ここぞというところでは顔や身体を大きく変化させて話を大きく造っていった。

 続いては、文路郎さん。
 天満天神繁昌亭近くの天神筋を歩いていると、休みの店のシャッターに「誠に勝手ながら○○のため休みます」といった貼り紙がされていることがあって…。
 と、マクラで語ってから自作の新作『誠に勝手ながら』に入った。
 激しい夫婦喧嘩をして家を飛び出した夫、お腹が空いたので何か食べようと商店街を歩くものの、どの店も「誠に勝手ながら…」と休業だらけで…。
 等身大というか、自然な語り口が妙にツボにはまった。
(途中、錦湯さんならではのアクシデントがあってその対応に追われてしまったのは残念)

 三席目は、遊真さんの『粗忽長屋』だ。
 これまたおなじみの古典だが、桂雀太さんにつけてもらったという遊真さんの口演は、じっくりためる部分があったり、強弱が通常以上にはっきりしていたりと、どこかハンス・クナッツパーツブッシュがウィーン・フィルを指揮した『ポピュラー・コンサート』<タワーレコード/DECCA>を思わせるような密度の濃い内容。
 終盤、死の気配も強かった。

 トリは、三幸さん。
 マクラは短めで、その代わりネオはめ物を駆使したR-1グランプリ用のネタを披露して笑いをとる。
 本題は、以前錦湯さんでもかけた『二つの未来』のBバージョン(で、いいのかな?)。
 ある会社の余興に落語家さんを呼んだまではよかったが…。
 といった展開の内容で、途中何度かスリリングな箇所もあったが三幸さん流のハンドルさばきで見事に乗り切った。

 最後は、四人の今後の会の告知で〆た。
 錦湯さんの会もいいけど、大きな小屋での会や違った顔触れの会にももっと足を運んでいけたらなと思った次第。

 と、今夜はたっぷり落語四席の座錦湯でした。
 ああ、面白かった!!

 そして、毎週月曜夜は皆さんも錦湯さんにぜひ!!
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2018年10月09日

第47回座錦湯

☆第47回座錦湯

 出演:桂三実さん、桂三幸さん、桂あおばさん
(2018年10月8日19時開演/錦湯)


 花巻滞在や体調不良といろいろあって、ここ3回足が遠のいていた錦湯さんだが、今夜は三連休の最終日とあってか、常連さんにリピーターさん、ご新規さんと30人以上のお客さんが集まって盛況も盛況の大盛況。
 実は今夜で4周年を迎えた錦湯さんでの落語の会を記念するに相応しい大入りだった。
(と言って、4周年4周年と取りたてて騒がないのも奥ゆかしい)

 47回目となる座錦湯は、桂三実さんの差配で、ゲストに二代目支配人の桂三幸さん、そして桂あおばさんとおなじみの面々が揃った。

 定刻19時頃に、お三人が登場し開演のトークですかさず盛り上げる。

 で、頃合いのよいところで三実さんが高座へ。
 まずは入門直前の7年前の大失恋のエピソードを涙涙に語って(ほんとかな???? 木綿のハンカチーフで涙をぬぐう前に眉を唾で濡らしそう……)大いに笑いをとってから、本題の『商活・栄町商店街野球部』に入る。
 ここはさびれにさびれた栄町商店街。
 これではならじと提案されたのは、商店街メンバーで草野球チームをつくって成果を挙げて、大きくメディアに取り上げられること!
 果たして、その思惑はかなうのか否か…。
 ヒットを細かく重ねるがごとくくすぐりが盛り込まれた、お師匠である桂文枝さんによる新作で、三実さんはテンポよく、けれど要所要所をきっちり押さえた丹念な高座できっちり笑いを生んでいた。

 続いては、あおばさん。
 メインとなったのは、最近友人と決行した九州までのヒッチハイク。
 そこで出会った人たちのエピソードを次から次と語っていくのだけれど、そのおかしさに笑いながら、堂に入ったマクラの語りぶりには、あおばさんのこの4年間の研鑽を強く感じたりもした。
 継続は力なり、と改めて痛感した次第。
 あおばさん、しばらくしたら大きく化けるかも。

 トリは、三幸さんだ。
 まずは、大好きなF1についてなど肩肘のはらない三幸流儀のマクラを繰り広げる。
 自分が語りたいことを自分が語りたいように語る。
 そのことにぶれない三幸さんが嬉しい。
 で、本題は自作の『二つの未来』。
 母校の高校に2週間の教育実習にやって来た門真太郎は、かつて自らが所属した軽音部の顧問も引き受けることとなるが、今や部員数は僅か4人に激減し…。
 といった具合の展開の作品で、お得意のネオはめ物=ボウズのスピーカーがここぞというところで効果を挙げている。
 自慢の歌声をあまり聞けなかったのは残念だけれど、まあこれは次回以降(もしくは別の場所で)のお愉しみということで!

 最後は、予告通り「あいうえお作文祭り」。
 大喜利などでよくやられるあいうえお作文を、三実さん、三幸さん、あおばさんばかりか、お客さんまで巻き込んでやってみようという錦湯さんならではの趣向だ。
 名回答が出ればよし、出なくったってなんとか回答しようともだえ苦しむさまもまたおかしい。
 お客さんの積極的な参加もあって、愉しいひとときとなった。

 と、今夜も盛りだくさんな内容でした。
 ああ、面白かった!!!

 そして、毎週月曜夜は5年目に突入した座錦湯へ皆さんもぜひ!!!
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2018年09月10日

第44回座錦湯

☆第44回座錦湯

 出演:桂小留さん、月亭天使さん
(2018年9月10日19時開演/錦湯)


 急に気温が下がって秋の気配を感じる京この頃、日中のどんよりとした空から月や星の見えるお天気となった今夜も座錦湯さんには常連さん(懐かしい顔も)、リピーターさん、ご新規さんが集まってなかなかの盛況。
 44回目となる座錦湯は、ビリートップ五人衆の桂小留さんが差配を務め、ゲストには月亭天使さんを迎えた。

 定刻19時になって小留さんと天使さんが登場し、トークを開始する。
 話題は先日大阪は生國魂神社の境内で開催された彦八まつりについて。
 小留さんや天使さん関連のブースやら、綱引き等々の出し物に関する話題で盛り上げる。
 流石は藝人落語家さんたち、話題に事欠かない。

 で、頃合いのよいところで小留さんが高座へ。
 上述の生國魂神社をはじめ関西各地に激しい被害を与えた台風21号に関してマクラで語る。
 なんとあの日、小留さんは出番のためにNGKに足を運んでいたとのこと…。
 あなおそろしや……。
 本題のほうは、奈良が舞台の『鹿政談』。
 奈良には、過って鹿を殺しても死罪、石子詰めの刑という重い重い決まりがあった。
 ところが、正直者で知られる豆腐屋の六兵衛さんがひょんなことから赤犬と間違えて鹿を殺してしまう…。
 そんな六兵衛さんを助けてやりたいと思ったお奉行様は…。
 といった展開のおなじみの古典だ。
 小留さんの『鹿政談』を聴くのは確かこれが二回目だけれど、丹念な筋運び。
 説明の部分もくすぐりを交えながら巧く処理していった。
 中でも、お奉行様と鹿奉行のやり取りが、やはり印象に残った。

 トリは、天使さん。
 マクラでは、大阪で体験したとある仕事の話について語る。
 で、本題は『佐々木政談』。
 天使さんも説明していたが、本来寄席や落語会では同系統・似たようなスタイルの噺はネタがつくといって避けるものなんだけれど、ここは錦湯さん、月亭太遊さんが支配人の時代からタブーなんて破ってなんぼの会である。
 試しの場でもあることゆえと、天使さんは断った上で噺に入った。
 大坂の西町奉行に新たに赴任した佐々木信濃守がお伴の者とともに市中を見回っていると、子供たちがお白洲遊びに興じている。
 中でも、奉行=自分の役を演じた男の子の利発さが気になった佐々木信濃守は、お伴の者にあとをつけさせる。
 といった具合に進んでいくお話で、肝は後半の奉行役の男の子四郎吉と佐々木信濃守のやり取り。
 頓智のきいた言葉を繰り広げる四郎吉だが、天使さんが演じるとこまっちゃくれた感じがしないで、すっと噺を聴いていることができた。

 で、最後は再びトークで〆た。

 今夜は政談物をたっぷり二席。
 ああ、面白かった!!

 そして、毎週月曜夜は座錦湯に皆さんもぜひ!!
(ちなみに、16日〜27日にかけて岩手県花巻市を訪問の予定のため、次回次々回は座錦湯を観に行くことができません。その点、ご容赦のほど!!)
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2018年09月04日

第43回座錦湯

☆第43回座錦湯

 出演・桂三実さん、月亭秀都さん
(2018年9月3日19時開演/錦湯)


 台風21号がじわじわと接近中の京都だが、今夜も錦湯さんには常連さん、リピーターさん、ご新規さんがバランスよく集まった。
 43回目となる座錦湯は、先週に続いて桂三実さんの差配、ゲストには鳥取県は三朝温泉での42日間の三朝寄席を終えたばかりの月亭秀都さんが迎えられた。

 定刻19時になったところで、まずは三実さんが登場。
 スタイリッシュな私服で登場した三実さんは、足元を強調。
 と、靴下を履いていない。
 錦湯さんでは初めて、一青窈か元ちとせ、中島美嘉といったスタイルでのぞんでみましたと決めてくる。
 で、前口上を一くさり。

 すぐさま秀都さんが高座へ。
 最後のトークが控えているのである程度抑えつつも、もともとヌード小屋だった会場のことをはじめ、三朝温泉・三朝寄席でのエピソードをマクラで語る。
 ちなみにあとのトークで触れられていたが、お子さん連れのお客さんが多かったこともあり、三朝寄席でかけるネタは『動物園』や『寿限無』、『時うどん』、『桃太郎』が上位を占めていたとのこと。
 そうした不満(?)を払拭する意味合いもあってだろう、今夜の一席目は三朝寄席では演じることのなかった『宿屋町』(「東の旅から」を秀都さんは演じた。
 おなじみお伊勢参りの二人連れ喜六清八が大津の宿を訪れて、宿屋の客引きにあった末、とある宿屋へ入っていく…。
 といった流れの話で、確かにお子さん相手には渋さも渋しの内容となっている。
 秀都さんは、上方流儀の太くて渋い声を活かしつつ、喜六や清八と宿屋の人々とのやり取りを快活に描いていった。

 二席目は、三実さん。
 土日に開催された彦八まつりでのエピソード(のど自慢に出演したが、残念受賞ならず…。ちなみに、寅さん風の格好をしながら加山雄三の歌を歌うというのが三実さんのネタだった!)で笑いをとったのち、本題の『宿題』に入る。
 塾で出た算数の宿題を教えて欲しいと息子にせがまれた父親だったが、その内容というのは池の周りに鶴と亀が集まるといった彼にとって意味不明、難解なもので(いわゆる「つるかめ算」というやつ)…。
 三実さんのお師匠桂文枝さんの三枝時代の新作落語である。
 臨機応変の細かいくすぐりは交えつつも、基本は丁寧丹念、三実さんの文枝さんへの敬愛の念を強く感じることのできる口演になっていた。

 トリは、再び登場の秀都さん。
 今度はよくかけているネタということで、『皿屋敷』を演じる。
 播州姫路の皿屋敷なるお化け屋敷を舞台にしたおなじみ古典であり、錦湯さんでもだいぶん前に秀都さんは演じたことがあるが、軽快な語り口や細かい表現の変化等々、三朝寄席ももちろん含むこの間の秀都さんの研鑽がよく窺えた。
 トリに相応しい高座だった。

 最後は、秀都さんの三朝トーク。
 鳥取県の中で三朝温泉がある中部地域の特色や、三朝温泉の特徴(美肌、美白といった外面的な効果ではなく、健康な体質づくりといった身体内部に効果のある温泉とのこと。観光中心より、癒し、保養の場所として訪れて欲しいとのことだ)などもそうだけど、やはり面白かったのは、歴代三朝寄席出演者のシークレットなエピソード。
 『新婚さんいらっしゃい』の文枝さんよろしく、引き出し役の三実さんがころげる一場面もあったのだけれど、内容が内容だけにここでは割愛します。
 ほかに、三実さんの洲本のいいとこ発信大使と秀都さんの三朝寄席との条件のあまりの違いに三実さんがびしびし突っ込みを入れていったところもおかしかった。

 と、今夜も盛りだくさんの座錦湯でした。
 ああ、面白かった!!

 そして、毎週月曜夜は皆さんも座錦湯にぜひ!!
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2018年08月27日

第42回座錦湯

☆第42回座錦湯

 出演:桂三実さん、桂三幸さん
(2018年8月27日19時開演/錦湯)


 まだまだ暑い京この頃だが、錦湯さんは冷房完備で無問題。
 常連さんやリピーターさん、ご新規さん(ふらっと立ち寄った男性三人組など)でけっこうな入りだった。

 42回目となる今夜の座錦湯は、ビリートップ五人衆のうち桂三実さんの差配で、二代目支配人である桂三幸さんをゲストに迎えた。
 が、前の仕事の都合で三幸さんは開演には間に合わず。

 そこで、三実さんが定刻19時とともに高座に上がった。
 まずは、暑さの中での仕事にまつわるエピソードをマクラで語ったのち、本題の『商売根問』に入る。
 あほな男が考え出した商売というのが、どれもこれも珍妙滑稽極まるもので…。
 といったおなじみの古典。
 三実さんは丹念にテンポよく演じ切った。

 続く二席目は、『ミュージック野菜ステーション』(?)。
 あの人気歌番組『ミュージックステーション』に野菜を織り込んでみたらという趣向の短めの新作で、次から次へと繰り出されるくすぐりに、三実さんのファニーさ、おかしみがよく表れていた。

 まだ三幸さんはやって来ない。
 ということで、三実さんは三席目に突入した。
 と、その前に、『彦八まつり』の宣伝を。
 当代文枝一門の売店は今年も豚キムチを扱うことになっているが、なんとその責任者の大役にあたっているのが三実さん。
 いろいろ苦労もあってと話すうち、ちょうどいないから言うけれど、三幸さんはなんやかやと用事があって、なかなか店のほうを手伝ってくれない…。
 などと話し終わったところでグッドタイミング、三幸さんがやって来た。
 ひと笑い起きたのち、三実さんが演じたのはこれまたおなじみ古典の『動物園』。
 基礎の部分はしっかり丁寧に。
 そして、そこに加えられたくすぐりもまたおかしかった。

 トリは、「待ってました!」三幸さん。
 久しぶりの錦湯さんになるが、そこは勝手知ったるホームグラウンド、慌てず騒がず泰然自若と三幸流儀のマクラで笑いをとる。
 本題は、新作『二つの未来』のBバージョン。
 ここまでの移動中に改作しあげたバージョンとのことだ。
 とある会社の社員が余興に呼んだのは、落語家だったが…。
 落語家あるあるもふんだんに盛り込んで、大いに笑いを生み出した。

 最後は、三実さんアレンジのゲームに挑戦!
 まずは、『三幸ガオガオ』から。
 物を順番にとっていくと、突然番犬がガオガオと唸ってびっくりするという、黒ひげ危機一髪のバリエーションのようなゲームをもとにしたもので、番犬役に三幸さんが扮する。
 見台に置かれたラムネに見立てた紙切れを一人一人がとっていくうち、目をつむった三幸さんが好き勝手に吠えるという趣向で、三実さんや女性のお客さんとともに当方も参加したが、なかなかスリリングでけっこう愉しめた。
 続いては、5秒で説明。
 三実さんが出す質問に、三幸さんが5秒程度でぱぱっと答えるもので、答える人の意識無意識の思考嗜好志向が即表れてしまうものである。
 ある問題を当方も振られたのだが、いやあ本音が出てしまった…。
 ラストは、ただいま精進中の三実さんの笛にあわせて三幸さんが『ふるさと』を歌うという歌謡ショー(?)
 三実さんの笛に対して三幸さんがあれこれと突っ込みを入れるあたりにも笑ってしまった。

 と、今夜も盛りだくさんな座錦湯でした。
 ああ、面白かった!!

 そして、毎週月曜夜は皆さんも座錦湯にぜひ!!
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2018年08月20日

第41回座錦湯

☆第41回座錦湯

 出演:笑福亭智丸さん、露の新幸さん、桂恩狸さん
(2018年8月20日19時開演/錦湯)


 先週風邪のためお休みして二週間ぶりとなる座錦湯は、第41回目。
 ビリートップ五人衆の一人笑福亭智丸さんを差配に、露の新幸さんとの「二人会」という形式で行われるはずだったが、ここに飛び入り、ではなく本来今回出演を希望していた桂恩狸さんが加わった。

 今回も19時開演。
 定刻とともに、恩狸さんが登場し、新幸さんが少し遅れていますので、今夜は自分が祇園花月の前説を錦湯さん風にやってみますと高らかに宣言し、前説を始める。
 開始早々、恩狸さんのパワーが全開だ。

 で、新幸さんの到着にあわせて、智丸さんを含めた三人のトークへ。
 ここで、上述した飛び入り騒動の顛末が恩狸さんの口から語られる。
 自ら語るが如く、実に大きな声で続けてパワー全開だ。

 と、頃合いを見計らったところで、まずは智丸さんが高座へ。
 先日の豪雨の際、ちょうど新横浜を訪れようと新幹線に乗って難儀したエピソードをマクラで語ってから、旅繋がりの本題「東の旅」から『七度狐』に入った。
 お伊勢参りの二人連れ、喜六と清八はひょんなことからひどい目にあったら七度も化けて相手に復讐するという七度狐に石をぶつけてしまう…。
 といったおなじみの展開。
 麦畑でまず騙されて、さらには庵寺でもまた騙される喜六と清八の姿を智丸さんは丁寧に描いていく。
 加えて、「深いか深いか」といったやり取りや金貸し婆などのチャーミングさは、「ちまちま」という智丸さんの愛称にぴったりだとも思った。

 二席目は、新幸さん。
 自分はスピンオフが嫌いとまずもって一言。
 どうやらスピンオフというのは『スターウォーズ』シリーズが契機らしいが、当たりに当たった一本目の前日譚をつくればそりゃお客さんも集まる、ずるいとさらに説を進める。
 ところで、本題として演じたのは「東の旅」の『煮売屋』、つまりは『七度狐』の前日譚ならぬ前段のお話である。
 新幸さんはメリハリがよく効いてテンポのよい高座。
 喜六と清八に対する煮売屋の親父の造形も印象に残った。

 そして、中トリは恩狸さん。
 ささっとマクラを切り上げて演じたのは、『船弁慶』。
 喜六の誘いにようやく乗って清八が重い腰を上げたところに戻って来たのは、すずめのお松、雷お松の異名を持つ怖ろしい妻お松だった…。
 といったおなじみ上方の古典。
 恩狸さんは当たるもの皆なぎ倒す勢い、息継ぐ暇を惜しむかの如くに語り続ける。
 まさに疾風怒濤の趣だ。
 とともに、金を出し惜しむ清八や口から生まれたかの如きやかまし屋のお松といった強烈なパーソナリティを持った登場人物と恩狸さんの柄がよくあっていたようにも思う。

 中入りを挟んで四席目は再び新幸さん。
 またも、スピンオフは嫌いと口にしたあと、『船弁慶』の前日譚とでも思っていただければと断って、『厩火事』を演じた。
 くすぐりどころもそうだけれど、妻が夫を想うところだとか、夫が妻を気遣うところとか、そういった人の心の細やかな部分がべたつかない形で浮かび上がっていたのではないか。
 茶碗を洗おうと突然言い出した嫁に動揺する、亭主の姿が中でも忘れがたい。

 トリは智丸さんで、22日(水曜日)の夜に動楽亭の「としごの会」でコントとして演じる予定の『謝り方指南』の前日譚にあたる新作(題名は「Like a Rolling Kyao!」)。
 かつて一世を風靡したピン芸人・二階堂メンゴだったが、今は鳴かず飛ばず。
 飲み屋で一人侘しい酒を飲んでいると、かつての人気ギャグ「メンゴ」をやれと馬鹿にされる始末。
 ここでも、チャーミングさとフラ、滑稽さが前面に押し出されていたが、一方で、途中からのぐにゃんと捻りが加わるような展開にも智丸さんらしさを覚えた。
 もちろん、藝や藝人に対する智丸さんの想いの一端も示されていた。

 と、落語がたっぷり五席。
 ああ、面白かった!!

 そして、毎週月曜夜は皆さんも座錦湯にぜひ!!
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2018年08月07日

第39回座錦湯

☆第39回座錦湯

 出演:桂文五郎さん、柳家かゑるさん
(2018年8月6日19時開演/錦湯)


 猛暑が続く京この頃だが、錦湯さんは冷房もばっちり効いて無問題。
 今夜は、常連さんやリピーターさんもだけど、落語好きと思しきご新規さんが集まっての盛況となった。
 39回目となる座錦湯は、支配人ビリートップ五人衆の一人桂文五郎さんの差配で、ゲストに東京(江戸)の落語家柳家かゑるさんを迎えた。
 かゑるさんといえば、錦湯さんでの会の長い常連さんならよくご存じ。
 会の創始者である月亭太遊さんのネオラクゴ『たまげほう』とネット動画で出会い、自らのネタにする許可を得たことがきっかけとなって、ここ錦湯さんの会にも出演することとなった落語家さんだ。

 定刻19時にお二人が登場。
 斜め向かいの工事の音がギーギーガーガーとけっこううるさいが、そこは根っからの芸人、それもきちんとネタにして笑いを生む。
 当然の如く、錦湯さんでの会などについて話をして盛り上げた。

 で、頃合いのよいところで、文五郎さんが高座へ。
 この間、ずっと京都が好きだと言ってきたがそれは大嘘。
 実は京都は嫌い。
 なぜなら自分は奈良の出身だから…。
 と、マクラで語ったのちに演じたのは、古典の『延陽伯』。
 嫁はどうかと男に甚兵衛はんが紹介したのは、見目麗しい女性。
 ただし、この女性、京都のお公家さんに奉公していたとかで言葉が相当わかりにくい…。
 といった具合の、京都風をちらと皮肉ったおなじみの古典である。
 文五郎さんは、基本はしっかり。
 丹念に演じつつ、ところどころ錦湯さん対応のくすぐり、メタ的志向をはめ込んでいた。

 続いては、かゑるさん。
 メガネをかけたままの高座で、『都々逸親子』をかける。
 息子から小学校で都々逸が流行っていると知らされた父親は、自分もかつては都々逸で鳴らしたんだと親子で都々逸の作り合いを始めるが…。
 もともとは今は亡き三代目の三遊亭圓右さん(つるっとした頭の落語家さん)の新作なんだけど、そこは今風にたっぷりアレンジされている。
 それでも、やはり都々逸が題材だけに、どこか昔懐かしい人情を感じたりもした。
 かゑるさんは高身長で体育会系的がっしりとした体格だけに、せせこましさを感じない口演だった。

 三席目は、再び文五郎さん。
 古典の文五郎さんだけど、今夜は自作の新作、それも来がけの電車の中で作ったほやほやの新作『ネオガンダム』をネタおろしした。
 おなじみ『ガンダム』のあるシーンを下敷きにしつつ、ここ錦湯さんだからこその展開の新作で、抱腹絶倒。
 大いに笑った。
 これ、再演はまずないだろうから、聴けてよかった!

 トリは、かゑるさん。
 紺屋で働く染物職人久蔵が恋焦がれたのは、花魁中の花魁三浦屋の高尾太夫。
 親方の言葉を信じて三年間働き詰めに働いた久蔵は、ようやく高尾太夫に会いに行く…。
 まさしくトリに相応しい、江戸の古典落語を代表する『紺屋高尾』だ。
 細かいくすぐりは入れつつも、かゑるさんは本寸法、しっかりじっくりと演じ上げた。
 特に、久蔵が自らの正体と真情を高尾太夫に明かすあたりの気の入り方が強く印象に残った。
(そういえば、かゑるさん演じる『たまげほう』の肝も、こうした真情の吐露にあるのだった)

 と、東西二人の落語家が古典新作をたっぷり演じた座錦湯でした。
 ああ、面白かった!!

 そして、終演後は本当に久方ぶりの打ち上げ(交流会)も開催されました。
 そうそう、これが錦湯さんでの会の恒例だったんだと懐かしさを覚えた次第。
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2018年07月30日

第38回座錦湯

☆第38回座錦湯

 出演:月亭遊真さん、桂りょうばさん、桂文路郎さん
(2018年7月30日19時開演/錦湯)


 台風一過。
 厳しい暑さは続いているものの、先週の猛暑よりはなんとかしのげるようになった京この頃。
 38回目となる座錦湯は、支配人のビリートップ五人衆の一人月亭遊真さんの差配で、2015年入門の落語家三人によるプチ同期会が開催された。
 ただし、今回は遊真さんに桂りょうばさんまでは同じだけれど、桂文路郎さんが前回の桂小きんさんに代わって出演していた。
 ちなみに、今夜はプチ同期会がお目当てのご新規さんやリピーターさんとお客さんも新鮮な顔触れが多く集まって重畳重畳。

 定刻19時に三人が登場し、トークをスタート。
 それぞれの入門や修業、年季明けといった話題で盛り上げる。

 で、頃合いのよいところで遊真さんが高座へ。
 季節が季節だけに、師匠月亭遊方さんがかつて体験した「背筋も凍るような」エピソードをマクラで語ってから本題の『犬の目』に入る。
 上方の古典落語ではもうおなじみの噺。
 遊真さんの口演もすでに接したことはあるが、筋運び、掛け合いの流れ等、この間の積み重ね・研鑽がよく表れていた。

 続いては、文路郎さん。
 マクラは、弟弟子たちのちょっと困ったエピソード。
 本題のほうは、師匠桂文枝さんの新作『お忘れ物承り所』だ。
 文枝一門が最初につけてもらうネタということで、ここ錦湯さんでも何度も取り上げられてきたが、文路郎さんはあえて田中真紀子の言葉を引用すれば「凡人、軍人、変人」のうちの「凡人」の趣である。
 芸人流儀の派手さではなく、昔の邦画の登場人物の如き淡々とした語り口が印象に残る。
 普通さに徹した文路郎さんの自作の新作を聴いてみたい。

 三席目は、すでに錦湯さんでもおなじみの一人となったりょうばさんだ。
 りょうばさんは、遊真さんのマクラを受けて、若き日にガソリンスタンドでバイトしていた頃体験した「背筋も凍るような」エピソードを口にする。
 そして、本題は『秘伝書』。
 怪しげなテキ屋から2000円で買った秘伝書だったが…。
 といった具合の、これまたおなじみの古典である。
 強弱のふり幅の大きいメリハリがくっきりとした口演で、りょうばさんは笑いを誘っていた。

 トリは、遊真さんの二席目。
 自分自身をはじめ、落語家仲間の酒にまつわる失敗譚を披瀝したのち、新ネタとなる『親子酒』をかけた。
 親が酒好きなら子も酒好き…。
 上方流儀だから、もちろんうどん屋のくだりも入っている。
 『犬の目』もそうだけれど、遊真さんの高座は陽性だなと改めて思う。
 声の張りがよく動きもダイナミックで、柄も大きい。
 錦湯さんだけではなく、大きめの小屋でも接してみたいなと感じた。
 むろん、細かい部分はきっちり細かく演じていることは言うまでもないけれど。

 最後は三人が再登場し、軽めのトークで〆た。

 と、今夜は落語がたっぷり演じられた座錦湯でした。
 ああ、面白かった!!
 そして、毎週月曜夜は皆さんも錦湯さんへぜひ!!
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2018年07月24日

第37回座錦湯

☆第37回座錦湯

 出演:桂小留さん、桂三実さん
(2018年7月23日19時半開演/錦湯)


 記録的な猛暑が続く今日この頃。
 おまけに祇園祭の後祭も重なったが、今夜も錦湯さんには常連さん、リピーターさん、ご新規さんが集まった。
 銭湯の休日を知らずにやって来たお客さんがそのまま落語を愉しんで帰るという一幕は、錦湯さんならではのことだろう。

 先々週が別のライヴ、先週が祇園祭の前祭の関係でお休みだったため、三週間ぶりとなる座錦湯だが、37回目となる今回は桂小留さんと桂三実さんのお二人が支配人を務める、ツートップ体制で送った。

 ちなみに今夜の開始は諸般の事情から19時半。
 まずは、小留さんと三実さんの軽快なトークで盛り上がる。

 で、頃合いのよいところで、三実さんが高座へ。
 師匠の桂文枝さん(が三枝さん時代)の新作『ピッカピカの一年生』を演じた。
 中学を卒業してからすぐに町工場で働き始めた父親も、今は社長に。
 そんな社長が息子と同じ高校の夜間部への進学を目指し…。
 といった展開のお話で、リアルな設定の中のここぞというところにあれこれとくすぐりが仕掛けられている。
 三実さんは丁寧な口演で、しっかりと笑いをとっていった。
 それにしても、文枝さんの新作には「教育」「学ぶこと」が主題になった作品が多いなと改めて感じた。

 続いては、トリとなる小留さん。
 最近好んで演じているという『酔っぱらい』(『上燗屋』の部分が終わり、『首提灯』のうち道具屋をなぶって仕込み杖を酔っぱらいが買うまで)をかける。
 男が上燗屋で酒に酔って上機嫌、上燗屋の主人をなぶった次は道具屋をなぶり出し…。
 という、おなじみの古典である。
 あえて『酔っぱらい』でサゲたことからもわかるように、小留さんの酔っぱらいぶりが肝となる高座だった。
 しかし、こんな酔っぱらいが隣にいたら、ほんとに迷惑だなあ…。

 最後は、大喜利を決行。
 ただし、今回は小留さん、三実さんが共にshowroom配信を行いながらという特別篇。
 showroomに集まった皆さんからお題に対する答えを求めるスタイルで、小留さんと三実さんが勝負を繰り広げた。
 結果は、錦湯さんのお客さんの拍手で小留さん(チーム)が勝利した。
 いやあ、こういうパターンもあるんやなと感心しきりである。

 と、今夜も盛りだくさんな座錦湯でした。
 ああ、面白かった!!
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2018年07月15日

百物語の館〜落語と怪談〜

☆百物語の館〜落語と怪談〜

 ゲスト:笑福亭笑利さん
(2018年7月15日15時開演の回/誓願寺2階講堂)


 38度を超す猛暑と祇園祭の宵々山の混雑の中、日本怪談研究と朗読公演の一座「百物語の館」を聴きに誓願寺まで足を運んだが、いやあやっぱり足を運んでよかったな。
 今回は「落語と怪談」のテーマの下、落語を下敷きにした怪談が朗読されるとともに、落語家の笑福亭笑利さんがゲスト出演し落語を一席披露していた。

 まずは、猫山絢子さんの読みで、『漆塗りの女』(『諸国百物語』より/堤蛇彦先生台本)。
 死んで遺言通り身体を漆塗りされた前妻が後妻に復讐していくという、いわゆる「後妻打ち(うわなりうち)」をテーマにした作品。
 猫山さんは感情を強く込めた読みで、前妻の言葉が印象に残る。
 余談だけれど、猫山さんの雰囲気やエロキューションにふと若き日の千石規子を思い出した。

 続いては、柚木琴音さんの読みで、『つんつんとんとん』(岡山での聞き取りを元にした作品/仙崎耕助さん台本)。
 女にとりつく男の話で、老婆が口にする岡山弁にインパクトがある。
 やり様によっては恐ろしさに満ちた作品になり、逆に内田百闢Iなおそろおかしい作品にもなるような展開だけれど、柚木さんは声で語るというか、淡々とした読みで聴かせた。
 つんつんとんとんつんとんとん、という部分が美しい。

 前半最後は、亀山笑子さんの読みで『牡丹灯籠』(『伽婢子』より/堤蛇彦先生台本)。
 おなじみ『牡丹灯籠』のお話。
 ただし、三遊亭圓朝作よりだいぶん前、江戸初期の頃に書かれたもので、京都の五条・万寿寺辺りが舞台となっている。
 亀山さんは堂に入って安定した読み。
 節度ある艶っぽさだ。

 短めの休憩を挟んで、後半は元締の堤先生、怪談研究者の井上ねくてぃさん、笑福亭笑利さんによるトークからスタートする。
 『牡丹灯籠』など、主に三遊亭圓朝の作品について語られていたが、圓朝のフィールドワークにも触れられていた点が興味深かった。

 そして、お待ちかねの笑利さんの高座である。
 照明を絞った会場の雰囲気にあわせ、笑利さんは低めの声で口演を始める。
 自己紹介を兼ねた吉本がらみのエピソードや小咄を怪談風に演じてしっかり笑いをとったのちの本題は、十八番の『鯉つかみ』。
 琵琶湖のほとりに宿をとった旅の男二人。
 そのうちの片方が美しい女に誘われたと喜び勇んで夜な夜な琵琶湖へと出かけたが、実はそれは…。
 というまさしく百物語の館にぴったりな設定の新作だ。
 錦湯さんでの初演時以来、すでに何度も接してきた噺だけれど、演じるごとに筋運びが練れてきているし、人形も「グレードアップ」してきている。
 しかも、笑利さんは場の雰囲気を巧くつかむことも忘れてはいない。
 大いに笑ってしまった。
 それとともに、笑利さんの落語そのものや師匠の笑福亭鶴笑さんに対する敬意の念、人との繋がりや場を共有することへの強い想いもよく窺えた。
 いずれにしても、着実に成果を上げている笑利さんの姿をこうやって目にすることができるのは本当に嬉しいかぎりである。

 続いて、黒川茜さんの読みで『破約の果てに』(古典落語『三年目』より/堤蛇彦先生台本)。
 病のために死にゆく妻に夫は、もし自分が再び妻をめとったら幽霊になって化けて出てきて欲しいと約束する。
 ところが、後妻を迎えても前妻は化けることはなく…。
 というおなじみのお話。
 語尾の切り方等も含め、黒川さんは抑制が効いた読みを披瀝していた。
 サゲも効果的。

 五話目は、三輪涼さんの読みで『紋三郎稲荷』(古典落語『紋三郎稲荷』より/戸田和代さん台本)。
 ふとしたことからお狐様と間違えられた侍は、これ幸いと周囲の間違いにのっかるが…。
 三輪さんは、地の部分の丁寧な読みと会話の滑稽さのバランスが上手くとれていた。
 特に、侍が自分のしてしまったことにはっと気づいてしまうあたりの、話の一瞬の変化が記憶に残る。

 トリは、高杉詩音さんの読みで『もう半分』(古典落語『もう半分』より/仙崎耕助さん台本)。
 一合の酒を半分ずつ、「もう半分、もう半分」と注文する常連の老人がある夜五十両もの大金を店に忘れていく。
 すぐさま取りに戻る老人。
 だが、店の主人は女房の言葉に従って、そんな金はなかったと白を切る…。
 これも古典落語の中ではおなじみの怪談、というより人間の業ががっと前面に押し出されたような陰惨な話だ。
 高杉さんは張りのある声で話を運びながら、老人、主人、女房もよく演じ分けていた。
 サゲの台詞も、本来の落語をよく踏まえたグロテスクな笑いとなっていたのではないか。

 と、盛りだくさんで存分に愉しみました。
 ああ、面白かった!!!
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2018年06月26日

笑福亭笑利落語会「水滴々」

☆笑福亭笑利落語会「水滴々」

(2018年6月26日19時半開演/恵文社一乗寺cottage)


 最近自作の歴史落語などで精力的な活動を繰り広げている笑福亭笑利さんが約1年ぶりに恵文社cottageで落語会を開催するというので、迷わず足を運んだ。

 昨日の大阪での会と同様、今回の題名は「水滴々」。
 高座に上がった笑利さんは、一滴の水も大河や海の水も、同じ水…、なあんて、といった具合にその由来を説明して笑いをとる。
 それから、お客さんとの関係や少しずつ進めている四国八十八か所のお遍路について、様々なエピソードなどを交えて笑わせながら語っていく。
 笑利さんの会は、本題の落語とともに、このトークの部分もまた愉しみなのだ。
 で、前半は昔話を落語に仕立て直した新作の『六助稲荷(いなり)』と、古典中の古典の『寿限無』の二席。
 『六助稲荷(いなり)』は丹後峰山の昔話を下敷きにした作品で、徳を積もうと狐の巣を掃除してやった六助だが、狐にとってはそれが大迷惑、しこたま仕返しされるという筋運びだ。
 実は、2015年5月10日に出町柳のかぜのねで開催された落語会でこの『六助稲荷(いなり)』には接しているのだけれど、この3年間の笑利さんの研鑽と核になる変わらない部分が同時にわかって、その意味でも非常に面白かった。
 一方、『寿限無』は今更言うまでもない噺。
 笑利さんは大きく手を加えることはしないものの、掛け合いの強弱やテンポの変化できちんと笑いを生んでいた。

 ちょっとした休憩を挟んだ後半は、歴史学者の磯田道史先生との出会いを語るトークから。
 そして、本題も磯田先生の『無私の日本人』の中の一篇を原作とした『穀田屋十三郎』。
 困窮にあえぐ陸奥国吉岡宿の住人穀田屋十三郎は、茶師菅原屋篤平治の知恵を借りて、仙台藩に金を貸し、その利息でなんとか吉岡宿の財政の立て直しを目論むのだが…。
 と、ここまで書けばお察しの方も少なくないかもしれないが、阿部サダヲ主演で映画化された『殿、利息でござる!』の元になったお話だ。
 そこは落語だから、くすぐりもふんだんに盛り込まれているものの、やはりこの作品の肝は十三郎たちがどうやって千両(五千貫)もの大金を用立てるかというところにある。
 そして、その他の新作やこれまでのトークと通じる、笑利さんの心根というか真情もよく表れていたと思う。
 磯田先生とのコンビネーションがどういった歴史落語を生み出していくのか、今後がますます愉しみで仕方ない。
 それにしても、やっぱり継続は力なりだなあ!

 以上、足を運んで大正解の会でした。
 ああ、面白かった!!
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2018年06月25日

第35回座錦湯

☆第35回座錦湯

 出演:桂文五郎さん、桂ぽんぽ娘さん
(2018年6月25日20時開演/錦湯)


 日中は夏真っ盛りとでも呼びたくなるような激しい暑さの京都だったが、夜になってようやく少しはしのげるようになったか。
 それに、今夜の錦湯さんは冷房稼働なので暑さに関しては無問題。
 常連さんやリピーターさんもだけれど、今夜はご新規さんが集まって大盛況。
 特に、女性のお客さんが多かった。

 大阪北部を震源とする強い地震の影響でお休みとなった座錦湯は、今回が第35回目。
 差配は桂文五郎さんが務め、ゲストには桂ぽんぽ娘が迎えられた。

 定刻20時過ぎ、文五郎さんの軽い挨拶ののち、ぽんぽ娘さんも登場して二人のトークで盛り上がる。
 ぽんぽ娘さんと文五郎さんと錦湯といえば、どうしても因縁深い取り合わせになるが、トークではそこら辺もしっかり説明され、笑いを生んでいた。
(ぽんぽ娘さんと文五郎さん、ではなく、当時支配人だった月亭太遊さんとぽんぽ娘さんの間でバトルが繰り広げられるという回が以前あったのだ。太遊さんの立場を慮りつつも、ぽんぽ娘さんが口にしたある指摘が、ああ、それはせやねんなあと思ったり…)

 で、頃合いのよいところで、文五郎さんが高座へ。
 ぽんぽ娘さんのピンク落語に対抗して、文五郎さんはエロ全開で臨む所存と冒頭のトークで宣言していたが、その前に先日の地震についてのエピソードをマクラで語る。
 と、そこから早速エロネタへ。
 性は生なり。
 本題は、文五郎さんの十八番『阿弥陀池』。
 だけれど、そこは今日の企画に合わせて、バレ噺風にアレンジしたバージョンを聴かせた。
 文五郎さんで聴くと、バレ噺がなんだか「おかかなしく」(by色川武大)で聴こえてくるのはなぜだろう。
 藝は人なり。

 続いて、ぽんぽ娘さんが高座へ。
 性の近況報告・身辺報告を行いつつ、きちんと(男性)客に釘を刺したマクラののち、ピンク落語の新作を二つ演じた。
 いずれも、AV男優の一徹さん(よしもと祇園花月で7月21日19時開演の「桂ぽんぽ娘の京都ピンク花月〜第四夜〜」で共演予定。ほかに、作家の花房観音さんなども出演/前売り2000円/R18)を知ってから作った作品だそうで、一つ目はインポテンツの男性、二つ目は童貞の男性が主題となった作品だ。
 もうそれだけで相当シュートなネタということがわかるんだけど、じゃあこれが単なる下ネタ全開のお下劣お下種な内容かというとさに非ず。
 笑いをまぶしながら男性の身勝手な言動や思い込みが痛烈に描かれていて、大いに愉しみながらもいろいろと考えさせられる。
 ぶれないぽんぽ娘さんの本領発揮だった。

 トリは、文五郎さん。
 女性の視点によるぽんぽ娘さんに対して、文五郎さんは若き日のほろ苦い想い出を吐露(?)した上で、本題の『故郷に錦』に入った。
 気鬱の病、ぶらぶら病にかかった男に尋ねたところ、実は恋の病、しかも恋した相手が実の母親で…。
 という、まさしく突拍子もない、というか一筋縄ではいかない古典だ。
 文五郎さんは上方流儀ではなく、よりはっきりと二人の関係を見せる形で演じて、この噺の妖しげな部分も際立たせていた。

 と、今夜も盛りだくさんの座錦湯でした。
 こうして、差配の落語家さんごとにバラエティに富んだ企画が催されるのは嬉しいかぎりです。
 ああ、面白かった!!
 そして、毎週月曜20時は錦湯さんへ皆さんもぜひ!!
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2018年06月12日

第34回座錦湯

☆第34回座錦湯

 出演:桂三実さん、桂三語さん、桂文路郎さん
(2018年6月11日20時開演/座錦湯)


 夕方頃まで降り続いた雨も夜にはやんで、今夜も錦湯さんには常連さん、リピーターさんとなかなかのお客さんが集まった。

 34回目となる座錦湯は先週に続いて、ビリートップ5人衆の一人桂三実さんが差配を務め、ゲストに初登場となる桂三語さん、桂文路郎さんの二人を迎えた。
 って、三人共に当代の桂文枝さんのお弟子さんではないか。
 ということで、今回はプチ一門会の趣となった。

 定刻20時頃、まずは三実さんの口上に始まり、三語さん、文路郎さんが登場。
 自己紹介も兼ねた冒頭のトークで会場を盛り上げる。
 加えて、このトークで三人の個性や師匠文枝さんとの関係性もなんとなく判断がついていく。

 で、頃合いのよいところで、文路郎さんが高座へ。
 今日京都に来て目にしたことなどを皮切りに、ペットとの想い出などをマクラで語って本題の『猫すねちゃった』に入る。
 師匠文枝さん(三枝時代)の新作で、おとぎ話の桃太郎の世界を下敷きに、見事桃太郎の御伴に選ばれた犬とそうはならなかった猫の掛け合いが物語の中心となっている。
 文路郎さんは34歳というが(冒頭のトークで判明)、初々しい語り口。
 人柄がよく表れた口演だった。

 続いては、三実さんが登場。
 「満を持して」と宣言した上で演じたのは、おなじみの『時うどん』。
 前回の座錦湯に来られた方ならもうおわかりだろう。
 『帰り道に卵かけごはんが食べたくなる落語』は、この『時うどん』のための大いなるマクラ、伏線だったのだ!!(って、大袈裟な…)
 三実さん曰く、教わって下ろしてすぐなので型に副って演じているそうだけれど、昨日のアルテミス・カルテットの演奏じゃないが、強弱の取り方、間合い、アクセントの置き方等々の違いに、三実さんの特性、フラがよく出ていておかしい。
 これで独自のくすぐりなんて加わったら。
 想像するだに愉しみだなあ。

 トリは、三語さん。
 冒頭のトークではサッカー好きと話したけれど、それに加えて相撲も好き。
 というマクラにおやと思っていたら、そこはトリだけに軽い噺でお茶は濁さず『花筏』を選ぶ。
 親方の頼みで、大関花筏の身代わりとして高砂での巡業に参加した提灯職人の徳さんだったが、どうしたことか地元の強豪素人力士千鳥が浜と勝負をしなければならなくなって…。
 張りがあって渋めの声、これぞ上方落語の落語家といった口舌で、三語さんはたっぷりと語り切った。

 最後は、「オレの修行中はこうだった!」トークを決行。
 一門の三人が揃ったんだもの、ここは修行中のエピソードを語り合おうということで、三実さんが用意したお題に従って、トークを繰り広げた。
 「文枝師匠の気持ちをアップさせるには?」、「(他の二人は)ここがずるい」といったお題への答えに、三語さん、三実さん、文路郎さんの人柄はもちろんのこと、文枝師匠その人の人柄も浮かび上がっていたのではないだろうか。
 もちろん、文枝師匠への三人の想いが伝わってきたことは言うまでもない。

 と、今回も盛りだくさんでした。
 ああ、面白かった!!
 そして、毎週月曜20時は皆さんも座錦湯へぜひ!!
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2018年06月04日

第33回座錦湯

☆第33回座錦湯

 出演:桂三実さん、桂三幸さん、桂ちきんさん
(2018年6月4日20時開演/錦湯)


 まだ6月に入ったばかりというのに、夏同然のむわむわとした暑さに包まれる京この頃だが、今夜も錦湯さんには常連さん、リピーターさん、ご新規さんと幅広いお客さんが多く集まった。
 33回目となる座錦湯は、支配人ビリートップ5人衆のうち桂三実さんの差配で、二代目支配人桂三幸さんに、おなじみ桂ちきんさんがゲストとして迎えられた。

 定刻20時頃、三実さんが前口上を行ったのち、三幸さん、ちきんさんが登場。
 後半の「お茶子でボケようグランプリ」に関する説明なども含めたトークで盛り上がる。

 頃合いのよいところで、じゃんけんに勝ったものの希望順で三実さんが高座へ。
 錦湯さんでの三実さんといえば、まずは一出演一挑戦。
 ということで、今夜は現在修業中の笛を使ったネタを披露したが、いつもの如く着想の妙というか、思わず笑ってしまう。
 で、本題は新作の『帰り道に卵かけごはんが食べたくなる落語』。
 『時そば』など、食べ物が出るいい落語を聴いたあとはついついその食べ物を食べたくなってしまうもの。
 そこで三実さんが選んだのは、なんと卵かけごはん。
 卵かけごはんにちなんだくすぐりやうんちくと細やかな目配りも嬉しいが、途中で話がひゅっと横に逸れるような変化ぶりもおかしい。
 三実さんの新作は要注目だ。

 続いては、ちきんさん。
 今年で10年目、いろいろ古典のネタも持っているけれど、このあと三幸さんの出番なので遠慮してと、「あえて」断ってから新作の『初恋のブダペスト』に入る。
 『初恋のブダペスト』。
 まるで1970年代末から1980年代にかけて撮影された大人の恋愛を主題にした邦画みたいなタイトルだが、実は筋とは全く関係なし。
 自分が芸能プロデュースを引き受けたらどんな感じになるだろう、といった落語家の幕内をテーマにした作品で、三実さんのネタや冒頭のトークその他がふんだんに盛り込まれていく。
 最後は、わあわあ言うておりますというおなじみのフレーズで高座を下りた。

 トリは、三幸さんが古典の『狸賽』を演じた。
 恩を受けた子狸が、男のためにサイコロに化けて博打勝負に挑むというおなじみの噺である。
 三幸さんは、快活なテンポで進めていったが、あれ、いつも耳にする『狸賽』と比べると、なんだか話がスマートというか洗練されているな、またそれが三幸さんの雰囲気にあっているなと思っていたら、あとで桂九雀さんからのものだと本人から説明があった。
 なるほど、そういうことか。
 それにしても、同じ古典といえど演じ方は十人十色千差万別なのだなあと改めて思う。

 そして、後半はお待ちかね三実さん提案の「お茶子でボケようグランプリ」。
 落語会では、座布団を裏返したり、見台(膝隠し)を用意したり、めくりを捲ったりとお茶子さんが大いに活躍する。
 そんなお茶子さんに三実さん、ちきんさん、三幸さんが扮して、いろんなボケをかましてみせようという趣向だ。
 新作落語同様変化球勝負、あの手この手の三実さん、錦湯さんにある小物を使ってやたけた必死のぱっちで目まぐるしいちきんさん、グリーンにきっちり寄せて行く三幸さんと三者三様のボケっぷりで、愉しいひとときだった。

 と、今夜も盛りだくさんの座錦湯でした。
 ああ、面白かった!!
 そして、毎週月曜20時は皆さん錦湯さんにぜひ!!
(来週も三実さんが差配の予定とのことです。お愉しみに!!)
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2018年05月29日

第32回座錦湯

☆第32回座錦湯

 出演:笑福亭智丸さん、オダウエダ
(2018年5月28日20時開演/座錦湯)


 なんだか夏みたいな暑さが続く京この頃だが、今夜の錦湯さんには常連さん、リピーターさん、ご新規さんと幅広いお客さんが集まってまずは重畳重畳。
 第32回目の座錦湯は、ビリートップに支配人が移行して初めて笑福亭智丸さんが差配を務め、現在東京で活動を行っているオダウエダのお二人をゲストに迎えた。
 その名もずばり「笑福亭智丸×オダウエダ三人会」。
 ちなみに、オダウエダは小田結希さん(背が高め。小保方さんをちょっとしゅっとさせたような感じで、清楚でおっとり、天然も少し混じってますてな具合)と植田紫帆さん(雰囲気は桂ぽんぽ娘さん、そこに未知やすえさんのしゃきしゃきっとした感じが加わったよう)の女性二人組で、智丸さんと植田さんは大阪芸大の落研で田舎家君吉(くんきち)と田舎家南果(ぱいん)と田舎家の名前を分け合った先輩後輩関係にある。

 定刻20時頃に三人が登場し、まずは自己紹介を兼ねたトークで盛り上げる。
 で、頃合いのよいところで、智丸さんが高座へ。
 落語三席、コント三本ということもあり、前座代わりにおなじみ『十徳』から演じる。
 男が十徳を騙し借りするまでを演じるなど丹念な口演で、小気味よい笑いを生んだ。

 と、以降智丸さん、オダウエダのお二人で出番は続くのだけれど、ネタの関係もあり智丸さんの二席について書いていく。
 二席目は、桂米輝さんのネタにアレンジを加えた『カフェ役者』。
 とある劇団に所属する役者だったが、どうも前日に口にした飲み物に自分の演技を引きずられるようで…。
 といった展開のネタで、その引きずられぶりの積み重ねがどうにもおかしい。
 智丸さんのキュートな感じも話にぴったりだった。

 三席目は智丸さんの新作ネタおろし『ごろごろ(ゴロゴロ)』だ。
 ニートの中のニート、日がな一日ごろごろごろごろしてばかり。
 ところがそんな男を必要とする人物が現れて…。
 という風に筋はごろごろと転がっていく。
 智丸さんらしい良い意味での「荒唐無稽」な跳躍展開が肝の作品で、今夜は錦湯の狭い高座を見事に活用していた。
 広い高座ならば、なお栄える作品と聴いた見た笑った!!

 一方、オダウエダのコントは、冒頭のトークでバッファロー吾郎さんの名前が出たことからも明らかな通り(智丸さんからは、リットン調査団さんからの流れとの言葉もあり)、一捻りも二捻りもある内容となっている。
 あえて詳しくは記さないが、小田さんのすっとぼけた感じを植田さんが〆るというか、独特の間合いの掛け合いで、智丸さんの新作落語にも通じるシュールさとアナーキーさを兼ね備えていて、ついつい笑ってしまった。
 そうそう、小道具がまたこっていたんだ。

 そして、今夜は大喜利も決行。
 植田さんの仕切りで、智丸さん、小田さん、同じ大阪芸大落研仲間の講談の旭堂南遊さんに、久方ぶりに集まった大喜利猛者の貯蓄アンドザシティさん、あふろだんぺ〜さん、ゴハさん、さらにはシェンロンや廣瀬信輔君も客席から解答に加わるなど賑やかに進む。
 さらには、智丸さん考案の顔大喜利(用意したお題に副って、オールスター感謝祭のCM前の顔芸を行うというもの)に、智丸さん、オダウエダのお二人、南遊さんが挑戦するという長めのおまけも!

 と、いつもとは毛色が大きく違った座錦湯でした。
 アナーキーな座錦湯もまたよきかな!!
 ああ、面白かった!!

 毎週月曜20時は、何が起こるかわからない座錦湯へ皆さんもぜひ!!
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2018年05月22日

第31回座錦湯

☆第31回座錦湯

 出演:桂文五郎さん、月亭天使さん、林家染八さん
(2018年5月21日20時開演/錦湯)


 日中はひとまず置くとして、暑過ぎず寒過ぎず、ようやくほどよい加減の京この頃。
 今夜の錦湯さんには、常連さんやリピーターさん、ご新規さんとバランスよい顔触れのお客さんが集まった。
 31回目となる座錦湯は、支配人であるビリートップ五人衆のうち桂文五郎さんが差配を務め、お久しぶりとなる月亭天使さんにおなじみ林家染八さんがゲストに迎えられた。

 定刻20時になって三人が颯爽と登場し、冒頭のトークを始める。
 が、この時季の腐ったウーロン茶は危険です、と文五郎さんが呼びかける。
 なんと文五郎さん、酔った勢いで明らかに危ない紙パックのウーロン茶を飲んで、非常に大変な目にあったとのこと。
 で、すかさず染八さんがネタがつくと指摘。
 詳しくは、後述の感想をご参照くださいませ。

 と、頃よくあたたまったところで、ジャンケンに勝ったもんの希望順で文五郎さんが高座へ。
 マクラでは、文五郎さんの「ドメスティック」な近況報告についつい笑ってしまう。
 本題は、『新版牛ほめ』。
 文五郎さんの努力のあとがしっかり刻印されており、思わずぐっと心に迫ってきた。
 落語は奥が深いや。

 続いては、天使さんが登場。
 噺の笑いの構図を説明したり、錦湯の「舞台」を広く利用する旨断ってから、ネタおろしとなる本題の『浮かれの屑より』に入る。
 居候中の男、ちょっとは働きなさいと、長屋の空き家に置かれた紙屑のより分けを任されたものの、間の悪い(良い?)ことに隣は稽古屋。
 思わず、屑よりがお留守になって…。
 『紙屑屋』の別名でも知られる上方ではおなじみの古典の一つで、先代文枝さんが特に得意にしていた。
 テンポよく掛け合いを重ねたのちが、この噺の肝。
 天使さんは録音された音源を駆使しつつ、狭めの高座から床に下りて居候の浮かれぶり、踊りぶりを熱演した。
 演劇経験者ということもあって、入れ子構造のこのネタはそれこそ天使さんの十八番になるのではないか。

 トリは、染八さんだ。
 こちらも、新ネタの『ちしゃ医者』。
 あえて詳細は語らぬが、上方落語界のキューバのカストロ議長ならぬバキューのスカトロ議長とでも呼ぶべきまさしく尾籠なネタだ。
 けれど、そこをどう演じ切るかが問われるわけで、結果ハイブロウなネタともいえる。
 染八さんは丁寧快活にやり取りを重ねたのち、ここぞというところでフォルテッシモを決める「落語は爆発だ!」といったタイプの口演で、中でも終盤の爆発ぶり、叫びっぷりが大きな笑いを生んでいた。

 最後は、三人のトークで〆た。
(終演後、天使さんより、期間中に天使さんと桂米紫さんの落語界も開催される龍谷ミュージアムの「お釈迦さんワールド」展の招待券をいただいた。多謝!!)

 と、今夜も盛りだくさんな座錦湯でした。
 ああ、面白かった!!
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2018年05月15日

第30回座錦湯

☆第30回座錦湯

 出演:桂三実さん、月亭八斗さん、笑福亭笑利さん、桂りょうばさん
(2018年5月14日20時開演/錦湯)


 寒暖の差がようやく落ち着いて5月らしさを感じる京この頃。
 今回の座錦湯は、「洲本のいいとこ発信大使スペシャル」と題して支配人の桂三実さん(二代目)をはじめ、おなじみ月亭八斗さん(初代)、お久しぶりの笑福亭笑利さん(三代目)の兵庫県洲本市(淡路島)のいいとこ発信大使三人が顔を揃え、さらには桂りょうばさんも加わるという30回目に相応しい豪華版。
 そんな30回目にこれまた相応しく、客席にも常連さん、リピーターさん、ご新規さんと幅広いお客さんが大勢集まった。

 定刻20時過ぎ、洲本のいいとこ発信大使の法被を身に纏った三実さんが軽く口上を述べたあと、ゲストの3人が登場。
 洲本のいいとこ大使とはなんぞやといった話題でトークを盛り上げる。

 で、頃合いのよいところで、三実さんが高座へ。
 錦湯さんでは毎回何か工夫をこらしたネタを披露する三実さん、今回は『ドラえもん』のジャイアンのリサイタル(あまりの下手さに皆が悶絶するというおなじみ)を落語に置き換えたらどうなるか、と小咄を実演。
 見事な変化球で笑いのストライクをとった。
 本題は、古典の『松山鏡』をかける。
 三実さんの『松山鏡』は二度目だけれど、今夜は途中一箇所ある現代語を挟んでみますと断りが入ったバージョンだ。
 この間の三実さんの研鑽経験とともに、落語への取り組み方、姿勢もよくわかる口演となっていた。
 と、こう書くと小難しくとらえる向きもあるかもしれないが、そこは一筋縄ではいかない(?)三実さん、ここぞというところで笑いをとっていた。
 四人の出演者共通の「洲本や洲本のいいとこ発信大使に関係するネタを盛り込む」という課題も、予告した現代語もそれぞれすとんと決まり、空振り三振!

 続いては、りょうばさんが登場。
 実は、今週末の独演会に新ネタを披露する予定で、きちんと上がりはしたのだけれど、ぜひ客前で一度試しておきたい。
 ということで、この錦湯さんを思い出したとまずもって語る。
 で、人生とは偶然(たまたま生まれて)と必然(必ず死ぬ)の間という死生観を口にしてから、本題の『片棒』に入った。
 しぶちんケチでのし上がった伊勢屋さん、人生も晩年を迎え、三人の息子を前にして、自分が亡くなったときはどういう葬式を出すのかと一人一人尋ね始めたが…。
 相手が三人の娘でシリアスな内容なれば、まさしくシェイクスピアの『リア王』の煉獄における悲劇ということになるが、そこは落語の世界。
 三者三様、無茶苦茶を言い募る。
 りょうばさんは筋そのものはもちろんのこと、くすぐりもオーソドックスな線に則りつつ、間の取り方や、掛け合いの強弱など、マクラで語った言葉を想起させるような色づけも試していたのではないか。
 共通の課題もしっかりクリアした。
 ご都合よろしい方は、5月19日(土曜)に動楽亭で開催予定の『第3回 動楽亭のりょうば』(18時半開演、予約1500円、当日2000円)にぜひ!!
(ある意味「ゲネプロ」代わりに錦湯さんでの会を落語家さんに利用してもらうというのは、投げ銭制で毎回愉しませていただいてる客としては、大いに首肯のいくところだ。それと、新支配人のビリートップの皆さんにも、月亭太遊さんから始まったこれまでの形式に無理にとらわれず、自分の勉強会代わりにするとか、落語以外の出し物に挑むとか、素人の友人でもいいし、芸人さん以外のゲストを呼ぶとか、「好き勝手」にやっていただければと切に願ったりもする)

 三人目となる笑利さんは、「母の日の翌日というのに、父が死ぬ話が二つも…」とジャブをかました上で、洲本のいいとこ発信大使のエピソードを。
 といっても、短期間の大使に留まった笑利さんの体験がまあ、ああ、それはまあと思える内容で、ついつい笑ってしまう。
 で、「古典か新作どちらがいいですか」とお客さんに振って、「新作で」という返事があったのに、あえて古典をやるというルーティンから本題の『道具屋』へ。
 『道具屋』といえば、先週月亭遊真さんが演じたばかりだが、同じ噺でも演じ手が変われば受ける印象も大きく変わるということで、笑利さんは速いテンポではなから攻めの高座。
 が、途中共通の課題を盛り込んだあたりで、アクシデント発生(最後のトークで、どうやらゲシュタルトの崩壊を起こした旨、説明していた)。
 けれど、肉を切らして骨を切り、骨を切らして髄を切りと、まるで萬屋錦之助演じる柳生宗矩もかくやと思わせる省略の切り返しで抱腹絶倒、大きな笑いを掴んでいた。
 もちろんそこには芸人としての対処の素早さもあるだろうけれど、同時に笑利さんのお客さんとともに場をつくる力も小さくないのではないかと思ったりもした。

 トリは、八斗さん。
 まずは、錦湯さんで披露して好評を博した「マッハ時うどん」の続編、「マッハたちぎれ線香」に挑む。
 えっ、あの涙なくしては聴き終えられない『たちぎれ』をマッハでやるの…。
 という不安もなんのその、超スピードの神業でマッハたちぎれ線香を演じ終えた。
 そして、本題も『まんじゅうこわい』ならぬ『ドラゴンボールこわい』!
 どんぴしゃの世代であるものの、実は『ドラゴンボール』って詳しくないな、とは丸山交通公園ワンマンショーの感想で記したところだが、あのあとwikiっておいて正解だった。
 ドラゴンボールの世界に置き換えられた『まんじゅうこわい』の相関関係がよくわかる。
 お得意のフリーザ(中尾隆聖!)をはじめ、物真似も挟まれたりして、ファンにはこたえられない改作に仕上がっていた。
 もちろん、共通の課題も織り込みずみ。

 最後は、りょうばさんの仕切りで、三実さん、八斗さん、笑利さんが洲本のいいとこ発信大使の思い出話を繰り広げていた。
 三実さん、笑利さんのエピソードに笑いつつ、現代版蟹工船とでも呼びたくなるような八斗さんのある日のいいとこ発信大使ぶりには胸を揺さぶられた(?)。
 そうそう、りょうばさんは仕切りになれているなあと改めて思ったんだった。

 と、今夜も盛りだくさんな座錦湯でした。
 ああ、面白かった!!!
 毎週月曜夜は、座錦湯へ皆さんもぜひ!!
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2018年05月08日

第29回座錦湯

☆第29回座錦湯

 出演:月亭遊真さん、桂白鹿さん、露の新幸さん
(2018年5月7日20時開演/錦湯)


 世はゴールデンウイーク明け。
 おまけに雨降りと、正直芳しからぬ状況だったが、今夜も錦湯さんには常連さんにリピーターさん、ご新規さんとお客さんが集まり、なかなかの入り。

 29回目となる今回は月亭遊真さんが差配を務め、桂白鹿さん、露の新幸さんの二人がゲストに招かれた。

 定刻20時頃に三人が登場し、まずは錦湯さんでの会への出演など自己紹介を兼ねたトークから。
 さらに話題は、上方落語協会の会長選挙について。
 何せ白鹿さんはアンチ現会長派の急先鋒として昨今何かと話題の桂文鹿さんのお弟子さんだから、そこら辺の話題などについてもきっちり踏み込みつつ、若手噺家の立場に則ったおしゃべりを繰り広げて盛り上げた。

 で、じゃんけんで勝ったもんの順番ということで、本来は入門が一番早い白鹿さんから高座へ。
 白鹿さんはすでに錦湯さんに一度登場しているのだけれど、あいにくその回はこちらが足を運べていなかった(その際のエピソードに関しては、冒頭のトークで白鹿さんがしっかり語ってくれた)ので、生の高座に接するのは今夜が初めて。
 師匠文鹿さんとのエピソードをマクラで語って笑わせてから、本題の『色事根問』を演じる。
 もてる男の条件について、それこそこれっぽっちももてなさそうな男があれこれ訊いていくというおなじみの古典だが、テルマエ・ロマエ風の偉丈夫な白鹿さんは上方の落語家さんとしてはオーソドックスな語り口でまずは丹念に掛け合いを重ねていく。
 そして、大事な部分では音量をぐっと強め、テンポをきっと速める。
 その強弱の塩梅も効いて、くすぐりをはじめここぞというところで笑いを生んでいた。

 続いて、登場したのは新幸さん。
 こちらも、マクラでは師匠の露の新治さんについて触れる。
 とあることからお師匠さんの人となりについては知っていることもあって、実におかしい。
 さらに、自分がどのような具合にネタの稽古をつけてもらっているか、そしてこれから演じるのは非日常の世界を経験してきた者が登場人物である旨を説明した上で、本題に入る。
 どこぞでたっぷり愉しんできた男が二人、胴間声張り上げて馬鹿なやり取りを繰り返している。
 と、お腹が空いてきた、だったらうどんを喰おうやないか…。
 これはもうおなじみ『時うどん』。
 ただし、新幸さんがつけてもらった『時うどん』はそんじょそこらの『時うどん』とはわかが違う。
 この人を見よ!
 ならぬ、この高座を見よ!
 とばかりに、とばすとばす、叫ぶ叫ぶ。
 その有り様はうどん屋の親父ならずとも、キ××イと思うだろうクレージーさで、お客さんがわきにわいた。
 途中、高座外のアクシデントもあったが、そこは緊張と緩和、巧くやり過ごした。

 トリは、遊真さん。
 遊真さんもまた師匠の月亭遊方さんのエピソードをマクラで語ったのち、本題に。
 あほな男が道具屋を始めるという古典中の古典『道具屋』で、要所急所を押さえた快活な語り口は、うどんはうどんでも香辛料も具もたっぷりのメインディッシュのうどんのあとだと、お茶漬けさらさらといった感じであっさりとした滑稽さが引き立った。

 と、今夜も充実した座錦湯でした。
 ああ、面白かった!!

 そして、毎週月曜20時は錦湯さんに皆さんもぜひ!!
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2018年05月01日

第28回座錦湯

☆第28回座錦湯

 出演:桂小留さん、林家染八さん、月亭秀都さん
(2018年4月30日20時開演/錦湯)


 昭和の日の振り替え休日。
 世はゴールデンウイーク真っ盛り。
 そんな中、錦湯さんには常連さんやリピーターさんが集まって、今夜もなかなかの入りだった。

 ビリートップの面々が持ち回りで支配人を務める座錦湯も、今回でもう5回目。
 今週はお昼に今出川近辺のスターエッグスで「たまごのらくご」を終えたばかりの桂小留さんの差配で、同じく「たまごのらくご」に出演した月亭秀都さん、そして林家染八さんが顔を揃えた。
 実はこの三人、上方落語協会の野球部・モッチャリーズの花形(?)メンバーなのだった。
 冒頭のトークもそのモッチャリーズ、ではなく先ごろ笑福亭仁智さんの当選で終わった上方落語協会の会長選挙の話題から。
 桂吉弥さんもABCのラジオでちらちら内情を語っていたが、ここは錦湯、さらに踏み込んで…、もちろん隠(画)すべきところはきちんとそうしつつ、大きな笑いを生んでいた。

 で、頃合いのよいところでじゃんけんの勝ったものの希望順にそって秀都さんが高座へ。
 高校時代野球部に入ってはいたが…、とモッチャリーズ関連のエピソードなどをおかしくマクラで語ったのち、本題の『千早振る』に入る。
 百人一首の「ちはやふる神代もきかず竜田川からくれなゐに水くくるとは」という在原業平の歌の意味を尋ねられた町内で物知りと評判の男、知らないなどとは言い出せず、とうとう口から出まかせを…。
 といった具合のおなじみの古典で、二人の男のやり取りをしわぶき声というか渋みの入った声でテンポよく語っていく。
 肝はもちろん、男が平然と出まかせを言い立てるところ。
 その出まかせの自然な語り口が秀都さんの柄にぴったりだった。

 続いては、小留さんが登場する。
 今日の「たまごのらくご」でネタ下ししたスターエッグス(武者小路町)周辺を題材にした新作を、早速こちらでもかけてみようという趣向。
 ただし、この新作、同じく近辺の衣棚通を舞台にした『はてなの茶碗』の後日譚(担ぎの油屋が「十万八千両」の代物と盛って来る、漏れる水壺がどうなるか?)。
 なので、小留さんは『はてなの茶碗』を丸ごと演じた上で、そのまま新作に入るという形をとった。
 東京の『茶金』に比べ、『はてなの茶碗』にはより人の情がそこはかとなく表われている感じがして、小留さんの高座でもそのことを改めて強く感じる。
(先日の『ちりとてちん』でもそうだったが、この『はてなの茶碗』でも追い詰められた油屋が必死のぱっちで真情を語るあたりに小留さんの特性を観る想いがした)
 さて、後日譚のほうは、舞台が京都を離れ長崎へ。
 十万八千両の取り引きをするには、何しろ世界が相手でないと…。
 と、ここからの詳しいあらすじは今後の口演もあるかもしれないのであえて触れないけれど、長崎出身で京都在住の人間にとっては、一粒で二度嬉しい内容だった。
 そして、座錦湯同様、スターエッグスでの「たまごのらくご」も皆さんぜひ!!

 トリは、染八さん。
 マクラでは、最近の様々な話題を語ってみせる。
 さらに、今夜の座錦湯出演の本来の目的にふくみをもたせて大きな笑いをとってから、本題に。
 幇間太鼓持ちの茂八が若旦那の求めに応じて鍼を打たせたまではよかったが…、というおなじみの古典『太鼓腹』で、一度錦湯さんでもかけたことがあるネタだ。
 お金欲しさ丸出しの茂八が、若旦那の無茶な要求に困惑する様、鍼を打たれて大騒ぎする様、その積み重ね、強弱の変化が面白く、会場がわいた。

 最後は、三人でモッチャリーズというチームの実像に迫る(んな、大袈裟な!)トークを繰り広げて休日の夜を〆た。

 と、今夜も盛りだくさんな座錦湯でした。
 ああ、面白かった!!
 そして、毎週月曜は皆さんも座錦湯へぜひ!!
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2018年04月24日

第27回座錦湯

☆第27回座錦湯

 出演:桂三実さん、桂三幸さん、桂恩狸さん
(2018年4月23日20時開演/座錦湯)


 4月も下旬。
 というのに、まるで夏のような暑さの京この頃だが、今夜の錦湯さんには常連さん、リピーターさんが集まってなかなかの入り。
 ビリートップ5人衆が支配人となって4回目となる今回は、桂三実さんが差配を務めた。
 ゲストは、二代目支配人の桂三幸さんに、「ふたりでできるもん」のほか三実さんあるところにはこの人ありの桂恩狸さんのお二人。

 定刻20時頃に三実さんが登場し、軽く前口上を行ってから、三幸さん、恩狸さんが登場し早速トークを始める。
 テーマは、今夜天満天神繁昌亭で開催されていた若手噺家グランプリの予選について。
 実は、今夜の結果次第で三幸さんが決勝戦に進出できるか否かが判明するのである。
 ということで、ボードに出演順に記された出演者の名前を確認しつつ、競馬のオッズよろしく1位、2位、3位を三人が占いつつ盛り上げた。

 で、ほどよくお客さんがあたたまったところで、三実さんが高座へ。
 残念ながら二年連続で時間不足(!)のため決勝進出を逃した三実さんは、よくある「あるある」ネタと思わせつつ、実は捻りの効いた歌ネタを披露してから本題の『擬音』に入る。
 まさしく若手噺家グランプリのリベンジだ!
 会社の同僚二人が話をしているうちに、話題は擬音のほうへ。
 というのも、片方の男の口にする擬音というのがどうにも妙で…。
 といった展開の新作だけれど、先の歌ネタ同様、三実さんの目のつけどころ耳のつけどころが実におかしい。
 落語というスタイル、演芸というスタイルをしっかり押さえながら、そこに自分自身の特性得意技を仕掛けたネタであり、存分に愉しんだ。

 続いては、これまた若手噺家グランプリの決勝進出ならなかった恩狸さん。
 お師匠さんの桂文福さんのエピソードなどを高らかにマクラで語らったのちは、『子ほめ』を演じる。
 って、こちらもグランプリのリベンジである!
 ぶつりぶつりと話を切らずに、息をつぐ間も惜しんだ懸河の勢い。
 それでもせせこましくならないのは、牛刀を持って鶏を裂く的な大どかな語り口であるからだろう。
 登場人物の感情の起伏の激しさも興味深くおかしかった。

 トリは、三幸さん。
 トートバッグを手にして現れた三幸さんに、何やらよい意味の不穏さを感じるが、まずはいつもの如く肩ひじ張らないマクラで笑いを生む。
 そして、本題は新作のそれも出来立てほやほや。
 けれど、いや、だからかあえて詳しいことは書けないんだよね。
 ある男が父親の墓石の前で…。
 と、ここからは5月1日に予定されている三幸さんの落語会にぜひとも足を運んでもらいたい。
 ハイブリッド落語の真骨頂。
 最新技術(?)を駆使した体感型(?)のスリリングでおかしい作品世界が生み出されていた!
 いやあ、笑った。

 今回は久しぶりに大喜利も決行。
 三幸さん仕切りの下、三実さん、恩狸さん、さらには合田団地君や丸山交通公園君に常連のきょうとうさんがお題に挑む挑む。
 皆々、コンスタントに解答を重ねる中、客席からも不規則発言、ならぬ不規則解答が飛び出したほどだった。
 三実さんがちらと呟く「毒」がまたおかしい。

 最後は若手噺家グランプリの結果発表。
 惜しくも三幸さんの決勝進出はならず。
 ああ……。

 と、残念な結果とはなったものの、盛りだくさんの会ではありました。
 ああ、面白かった!!
 そして、毎週月曜20時は皆さん錦湯さんへぜひ!!
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2018年04月16日

第26回座錦湯

☆第26回座錦湯

 出演:月亭遊真さん、桂りょうばさん、桂小きんさん
(2018年4月16日20時開演/錦湯)


 4月も半ばを過ぎたが、まだ肌寒さの残る京この頃だが、今夜も錦湯さんには常連さん、リピーターさんが集まった。
 ビリートップの面々が持ち回りで差配を務めることになった新年度の二回目となる今回は、月亭遊真さんが支配人。
 2015年入門のプチ同期会ということで、桂りょうばさん、桂小きんさんの二人をゲストに迎えた。

 定刻20時頃に三人が登場。
 落語ファンならすでにご存じのことだろうが、りょうばさんは先代の枝雀さんの息子さん、小きんさんは先代の文枝さんのお孫さん、そして自分は…、と遊真さんが落としてみせるなど、自己紹介を兼ねたトークで盛り上げる。
 まず話題の中心となったのは初登場となる小きんさんで、きん枝師匠に入門するまでの「数奇」な道のりがおかしい。
 むろん、それを巧みに引き出した遊真さんのちょっとSっけのある突っ込みや、世事に長けたりょうばさんの誘い水も忘れてはなるまいが。
(ちなみに、りょうばさん、遊真さん、小きんさんが年齢順。ところが、小きんさんにはすでに二人のお子さんがいるそう)

 で、頃合いのよいところで、ジャンケンの勝負に勝った人の希望順にそって小きんさんが高座へ。
 マクラで語るべきエピソードをトークで話してしまったと口にしたりしたのち、本題の『牛ほめ』へ。
 アホな男が教えを受けて、普請を誉めに出かけたが…。
 というおなじみの古典。
 小きんさんは元気一発、陽性な、ただしゆっくりとした語りぶりで口演を始める。
 その語りぶり、強弱メリハリの付け方にどうしてもお祖父さんにあたる先代の(小文枝の)文枝さんを思い起こすが、アホな男に普請の誉め方を教える際の淡々とした語りの部分にも、小きんさんの伸びしろがあるのではないかとふと思ったりもした。
 20年後、いや30年後の小きんさんの高座が愉しみだ。

 続いて、ジャンケンでいっとう最初に勝ち抜けた遊真さんが登場する。
 よくよく考えてみれば錦湯さんへの登場は久しぶりとなる遊真さんだが、マクラでは近況報告などをしっかりと。
 無学での会の鶴瓶さんとのエピソードなど、積極的な語りで好感を抱く。
 本題は、これまたおなじみの古典『看板のピン』。
 要所急所は押さえつつも、わざとらしさを感じさせない流れのよいやり取りにこの間の遊真さんの研鑽鍛錬を識る想いがして嬉しかった。

 トリは、今回で三度目の錦湯さんへの出演となるりょうばさん。
 小きんさんの高座を耳にして、やはりところどころ先代の文枝さんに似ているところがあった、けれど本人はそうは思っていないだろう、自分も枝雀さんに似ていると言われるが、実際はそう思ってない、と言うのも…といった具合の滑り出し。
 続けて、冒頭の小きんさんのトークを受ける形で、入門についてや自らの嗜好(シュールな話が好きとのこと)を笑いを交えて語るなど、トリに相応しくたっぷりとしたマクラが愉しい。
 さらに実際にあった病院でのシュールな出来事を語ってから、本題の『義眼』へ。
 医者に義眼をこしらえてもらった男は、喜び勇んで松島新地のなじみの女のもとへと駆け付ける。
 と、悪酔いに悪酔った男が隣の部屋に通されて…。
 確かにシュールな展開の噺で、想像力を非常に掻き立てられる。
 一つ間違うと尾籠な話で終わってしまいかねないが、りょうばさんは線を踏み外すことなく見事に語り切った。

 で、最後は、三人のトークで〆た。
 トークもそうだし、個々の落語もそうだし、いい塩梅いい雰囲気の会になっていて、錦湯さんでも継続的にプチ同期会を開催してもらえたらなあと強く思った次第。
 落語ファンの方はもちろん、そうでない方もお薦めです。

 と、今夜も盛りだくさんな座錦湯でした。
 ああ、面白かった!!

 ちなみに、次回は桂三実さんが支配人の予定。
 二人でなくともきっちりできる三実さんの差配が愉しみだ。
 皆さんも、毎週月曜は錦湯さんへぜひ!!
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2018年04月10日

第25回座錦湯

☆第25回座錦湯

 出演:桂文五郎さん、月亭八織さん
(2018年4月9日20時開演/錦湯)


 ここ二日ほど気温が下がって肌寒い感じが続いているが、4月ももう十日近く。
 新年度2回目、そしてビリートップのメンバーに支配人が変わって2回目となる第25回座錦湯は、桂文五郎さんが差配を務めた。
 ゲストは、月亭八織さん。
 よくよく考えてみたら、お二人とも久しぶりの錦湯さんへの登場ということで(文五郎さんはなんと一年ぶりだ)、最近の会の様子を確かめるべく、冒頭のトークは膝詰め談判、ならぬ座談形式をとる。
 こういうところにも、新生座錦湯、新しいスタイルへの模索が始まっていて実に嬉しい。

 で、太遊さんが九州に行かれて以降の錦湯さんでの会について振り返ってみたり、お二人の近況などを窺ったりして盛り上がったのち、文五郎さんが高座へ。
 3月31日の大阪での月亭太遊さんでの会でも演じた『兵庫船』を取り上げる。
 ただし、そこは今後の座錦湯でいろいろと試していきたいと語る文五郎さんのこと、31日の会を踏まえつつ、錦湯さんでの会ということも意識して、そこここに新たなくすぐりを仕掛けたり、批判的な視点を交えたりして半ばまで演じた。

 続いては、八織さん。
 月曜日は地元滋賀のFM局でのレギュラーが入っているため本来ならば錦湯さんに来れないところだけれど、たまたま番組の編成の都合で出演がかなったと改めて挨拶をする。
 さらに近況報告ということで、大師匠の月亭可朝さんについて触れてから、座錦湯の前支配人である月亭方気さん夫妻の結婚式の話題へ。
 式や引き出物のあらましを笑いをまぶして語ったのち、本題の『引き出物』に入る。
 鹿児島枕崎で行われた結婚式の引き出物、さて中身はと家に帰って確かめてみると、そこはお国柄、薩摩揚げな焼酎と共に鰹節も入っていて…。
 といった展開の、鰹節をはじめとした擬人化された引き出物たちの会話が肝となる桂文枝さんによる新作だ。
 八織さんの口演に接するのは本当に久しぶりになるが、軽妙な筋運びを心掛けるなど、この間の研鑽が窺える高座となっていた。

 トリは、再び文五郎さんが登場し、ネタ下しとなる『商売根問』をかける。
 今日も今日とてしゃむない男、いったいどうやって暮らしているのかと問われたところ、その答えというのが、味醂のかすのこぼれ梅と南京豆の殻を使ってすずめを取るというものだからどうにもこうにも…。
 すずめで懲りず、うぐいす取り、はてはガタロ(河童)取りを始めるというしゃむない男のあほうぶりが肝となる噺で、文五郎さんはその肝をしっかり押さえつつ、メリハリを効かせてテンポよく演じ切っていた。
 錦湯さんのお客さんの嗜好志向を汲みつつ、座錦湯をネタ下しなど積極的に試しの場、研鑽の場にしていくという文五郎さんの今後の差配と口演を愉しみにしていきたい。

 と、今夜も盛りだくさんの内容でした。
 五人五様、ますますバラエティに富むだろう座錦湯さんに皆さんもぜひ!!
 ああ、面白かった!!
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2018年04月03日

第24回座錦湯

☆第24回座錦湯

 出演:桂小留さん、月亭太遊さん
(2018年4月2日20時開演/錦湯)


 4月となって暑さすら感じる京この頃。
 新年度から座錦湯は、石川県住みます芸人となった三代目支配人月亭方気さんご夫妻に代わって、ビリートップの面々(以下あいうえお順、桂三実さん、桂小留さん、桂文五郎さん、笑福亭智丸さん、月亭遊真さんの5人)が週替わりの持ち回りで支配人を務めるという集団体制へとシステムが変わった。
 で、今週の差配は桂小留(と書いて「ちろる」と読む)さん。
 STAR EGGSでの「たまごのらくご」など、ここのところ京都との縁が強くなっている落語家さんだ。
 そして、錦湯さんでの一連の会の創始者であり初代支配人である月亭太遊さんがゲストとして登場し、栄えある新生座錦湯のスタートを彩った。
 お客さんも、ご新規さんにリピーターさん、常連さんと大入り満員となって重畳重畳。

 定刻20時を過ぎた頃、差配の小留さんの呼び込みで太遊さんが登場し、二人のトークがスタートする。
 座錦湯の新たな支配人の制度や小留さん自身の自己紹介を兼ねたあたりから始まって、小留さんの祇園花月での前説の再現、「脱演芸」・アーティストへの道を歩み始めた太遊さんの近況など、40分以上のトークを繰り広げて大きな笑いを生む。
 そうそう、小留さんは地下アイドル好きだそうで、諸々条件が整えば(チェキの実施等々)もしかしたら彼女たちが錦湯さんにやってくるかもしれないと!

 で、頃合いのよいところで太遊さんの一本じめ(!)を合図に小留さんが高座へ。
 改めて自己紹介を兼ねたマクラののち、ところ変われば言葉も変わると本題の『勘定板』に入る。
 福井県のとある漁村では、紐の付いた板の上で便所をすませそれをそのまま海に流す。
 そんな漁村の二人が大阪まで旅に出て旅館に泊まったまではよかったが…。
 といった展開の古典落語で、いわゆる落語界の「スカトロ」ネタで序列をつければまさしくカストロ議長、じゃないスカトロ議長に選ばれるにたる内容のえげつない噺である。
 錦湯さんでは確か桂恩狸さんがかけたことがあって、あちらは牛刀でもって鶏を裂くというか、大掴みにすとんすとんと噺を進めていく感じだったが、小留さんは丹念、そしてここぞというところで粘りを効かせた高座を披露していた。
 差配一席目に『勘定板』をぶつけてくるなど、小留さん、なかなかの臭(くさ)者ではない、曲者ではないか!

 トリは、太遊さん。
 帽子を被ったままの私服で高座に上がったのは、それこそ「脱演芸」の一歩ということだろう。
 ネタは、昨年の11月、別府で挑んだ一日一ネタおろしの総決算と呼ぶべき「ネオラクゴ・フロムヘル」で演じた『8メモリーズ・オブ・ヘル』の連作8掌編落語の中から、1本目の「はじまりのまち」と8本目の「ドウクッチョンの村」の2本。
 大分弁を駆使した、即興味も強い作品で、会場は大いにわいていた。
 実は、太遊さんのご厚意で「ネオラクゴ・フロムヘル」の動画を拝見したことがあって、今夜改めてはじめと終わりの2本に接し、この『8メモリーズ・オブ・ヘル』とは、もしかしたら太遊さんが意図し意識した以上に、ある種の私落語というか、自分自身を相当さらけ出したものではないかと強く感じた。
 と、ともに太遊さんがこれから進んで行こうとする道筋、方向についていろいろと考えさせられた。
 今後の太遊さんの活動を注視していかなければ。

 最後は、再び小留さんと太遊さんのトーク。
 お二人のトークを受けた、この会によく来られるお子さんの「テレビに出ろ!」という掛け声などでさらに盛り上がって華やかに会を〆た。

 と、今夜も盛りだくさんの座錦湯でした。
 4月以降も、皆さん毎週月曜20時は錦湯さんにぜひ!!
 そして、ああ、面白かった!!
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2018年03月27日

第23回座錦湯

☆第23回座錦湯

 出演:桂三幸さん、桂あおばさん、林家染八さん
(2018年3月26日20時開演/錦湯)


 ようやく春めいてきた京この頃。
 今夜の錦湯さんは、常連さんやリピーターさんが集まった。
 17−18年度最後の座錦湯だったが、4月1日から石川住みます芸人となる月亭方気さんは一足先にその石川のほうで仕事があるということで、支配人としては前回がお別れ。
 23回目となる今回は、前々支配人の桂三幸さんとおなじみの桂あおばさん、林家染八さんが出演し、年度末を飾った。

 定刻20時を少し過ぎた頃、三幸さん、あおばさん、染八さんが登場。
 上方落語界の「近況」をじっくり語って盛り上げた。
 上方落語界を詳しく識りたい方は座錦湯へ!
 というのは、まあ冗談。
 途中、あおばさんがちょこちょこ挟んでくるギャグがまたおかしかった。

 で、頃合いのよいところで、染八さんが高座へ。
 最近はお年寄りのお客さんの前で落語をする機会が多いと、老人ホームなどで直面したエピソードをマクラで披露する。
 本題は、若手噺家グランプリで演じる予定の笑福亭福笑さん作による『もう一つの日本』。
 以前錦湯さんでも演じた作品で、福笑さんらしい毒に満ちた内容となっている。
 染八さんは毒=くすぐりを必要以上に強調することなく、流れよく演じ切っていた。
 それにしても、アメリカのビジネスマンを迎える日本のサラリーマンの名前が三島と森田というのもすごいな、やっぱり!

 続いては、あおばさんが登場する。
 昨日出演した落語会はちょっと変わった趣向で、休憩の際にいただいたアンケート(質問)をもとに後半トークを行ったのだけれど…。
 と、アンケートの内容を語って笑いをとる。
 一方、本題はこれまた若手噺家グランプリで演じる予定の『秘伝書』だ。
 あおばさんの『秘伝書』はずいぶん前に一度耳にしたことがあるが、グランプリを考えたテンポ設定。
 そしてくすぐりのほうも…。
 あとは、若手噺家グランプリの予選をお愉しみのほど!

 トリは三幸さんで、こちらは桂文枝師匠の新作『涙をこらえてカラオケを』を演じる。
 文枝さんの上方落語協会会長退任の意向を受けてのチョイス…。
 ではなく、いつものネオはめ物とは違う大きめのスピーカーが手元にあったので、これを使わぬ法はないという選択だ。
 病床でもマイクを手にするカラオケ好きの老人、今日も今日とて息子の嫁にデュエットをせがんだが…。
 といった展開の作品で、急転直下後半の葬儀シーンで特にスピーカー、そして三幸さんの歌声が活躍する。
 登場人物のとぼけた感じも三幸さんならではだった。

 最後は、三人のトークで〆た。
 あと、せっかくだからと三幸さんが自慢の喉を披露していた。
 これも錦湯さんならではの一幕。

 と、今夜も盛りだくさんな座錦湯でした。
 ああ、面白かった!!
 そして、4月以降も毎週月曜夜は錦湯さんにぜひ!!
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2018年03月25日

たまごのらくご 第1回

☆たまごのらくご 第1回

 出演:桂小留さん、笑福亭智丸さん
(2018年3月25日15時開演/STAR EGGS)


 御所西活性化プロジェクトと銘打たれた落語会「たまごのらくご」に足を運んだ。
 地下鉄の今出川駅・同志社大学から歩いて5分ほど、室町通を西に入ってすぐの武者小路町にある4階建てのビルの2階のイベントスペースが会場で、上の階は録音スタジオ、1階はカフェのSTAR EGGS。
 STAR EGGSはその名の通り、未来のスターを目指す俳優さんやアイドルの卵たちがアルバイトとして入っていて、ビル全体で芸能や芸術活動を支える形となっている。

 2月に話が持ち上がり、早速打ち合わせ、そして3月末にはスタートとなったという「たまごとらくご」だけれど、その差配を任されたのはここのところ京都進出の風が吹いている桂小留さん。
 上方落語界、というより関西ではおなじみのこえぴょんこと桂小枝さんのお弟子さんである。
 1回目の今日は、同じ落語ユニット「ビリートップ」のメンバー・笑福亭智丸さんと二人で二席ずつ古典落語を聴かせてくれた。

 開演時間の15時を少し過ぎたところで、差配の小留さんが高座へ。
 上述したようなSTAR EGGSやこの会のあらましについてを詳しくマクラで説明してから本題の『ちりとてちん』に入る。
 せっかくお酒や料理をご馳走しているにもかかわらず何やかにやと文句をつける男に一泡吹かせてやろうと、男たちが用意したのは豆腐の腐ったもので…。
 というおなじみの古典落語。
 小留さんは流れよく丹念に筋を運んでいったが、特に印象に残ったのは、嫌味な男竹やんが「長崎名産 元祖 ちりとてちん」の正体を目にしてそれでもそれを食べねばならぬと必死の形相となったところ。
 真に迫った男の姿が身につまされた。

 続いては、智丸さんが登場する。
 初めてのお客さんもいらっしゃるということで、自己紹介を兼ねたマクラから。
 で、現代詩の詩人として本名の疋田龍之介で活動していると断ったあとにかけたのは、『西行鼓ヶ滝』である。
 もとは北面の武士佐藤義清なれど、今は出家して歌人としても名の知れた西行法師は、摂津国の鼓ヶ滝(川西あたり)を訪れ、一首詠む。
 いやこれはよい出来の歌ができたと自賛する西行法師だったが…。
 といった、ある種藝道物とでも呼ぶべき作品だ。
 むろんそこは落語、くすぐりを交えて笑わせながらも、詩人疋田龍之介としての、そして落語家笑福亭智丸としての想いが強く窺えた一席だった。
 たとえ才能があったとしても、それに慢心して研鑽を怠れば先はない。
 どんな言い訳をしたところで、観る人が観れば聴く人が聴けば怠惰堕落はすぐわかる。
 分野は違えど、表現活動を続ける者にとっては身に沁みる噺である。

 10分ほどの休憩を挟んだ後半は、智丸さんから。
 同じ傾向ばかり続けているのもどうかと思ってしばらく演じるのを控えていたが、今日はあえて演じてみますと取り上げたのは、古典の『桃太郎』。
 昔話の桃太郎を語って子供がすやすや眠ってくれるのは、それこそ今は昔の話。
 最近の子供は…。
 と、子供が『桃太郎』の由来を諄々と語って聴かせるというのがミソの落語だ。
 やっぱり智丸さんの子供っぷりはおかしいな。
 そうそう、智丸さんにははなこそ『桃太郎』っぽいものの、そこから脱線脱臼を繰り広げる自作新作の『金太郎』もある。
 こちらもぜひまた聴いてみたい。

 トリは、再び小留さん。
 マクラは改めて自己紹介。
 並びに、所属する吉本さんの関係で落語以外のジャンルにも積極的に打って出ていると、ネット配信の「SHOW ROOM」をやっていることや、あの秋元康が絡んだ「吉本坂46」の1次審査に合格したことなどを語って笑いを生んだ。
 そして本題は、京都ではなく奈良を舞台にした『鹿政談』。
 誤って鹿を殺してしまった正直者の豆腐屋六兵衛の運命は如何に!!??
 これももうおなじみの古典落語、政談物、いわゆるお奉行様が活躍するお白州物の一つで、小留さんは凛々しい奉行ぶり。
 とともに、鹿担当の役人を時代劇風の大悪に描かず、慣習と正義の板挟みになる小役人に描いたところにリアリティがあった。

 最後は、「SHOW ROOM」を同時配信しつつの、小留さんと智丸さんのトーク。
 今後も月1で『たまごのらくご』を開催していく予定ということや、会場(御所西)界隈を舞台にした新作落語もつくっていきたいという小留さんの宣言もあったりして大いに盛り上がって栄えある第1回を〆た。
 なお、終演後は、この会のためにSTAR EGGSさんが用意した小留(と書いて「ちろる」と読む)さんの写真のついたチロルチョコ+智丸さんの写真入り+カフェと関係の深い南羽真理(と書いて「みさと」と読む)の写真入りのチロルチョコと3個のチロルチョコも振る舞われた。

 たまたま隣に座った近所の方から、今では住宅街のようになっているけれど、この界隈は60年前、50年前は様々な商店街が並んで非常に賑わっていた、この会が町内以外の人にも知ってもらう機会になればといった話を伺うことができた。
 『たまごのらくご』が、まさしく御所西活性化の一助となればと願うばかりだ。
 地下鉄の烏丸駅や同志社大学からもすぐ近くということで、皆さんも一度ぜひ!!
 ああ、面白かった!!
posted by figarok492na at 19:05| Comment(0) | 落語・ネオ落語記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月20日

第22回座錦湯

☆第22回座錦湯

 出演:月亭方気さん、月亭秀都さん、夕暮れ社 弱男ユニット
(2018年3月19日20時開演/錦湯)


 ようやく春めいてきたと思ったら、しばらく雨が続きそうな京この頃。
 が、あいにくのお天気にもかかわらず、今夜もなかなかな数のお客さんが錦湯に集まった。
 今夜は常連さん、リピーターさんよりもご新規さんが多いという新鮮な会。
 夕暮れ社 弱男ユニットの面々の初登場が大きく影響したようだ。

 定刻20時頃に支配人の月亭方気さん、おなじみの月亭秀都さん、そして夕暮れ社 弱男ユニットの代表村上慎太郎君が登場。
 まずは、4月1日から住みます芸人として石川県に移られる方気さんから、諸々の事情で今回が支配人としては最後の出演になること、また今後の錦湯さんでの会はビリートップの皆さん(アイウエオ順で桂三実さん、桂小留さん、桂文五郎さん、笑福亭智丸さん、月亭遊真さん)が回り持ちで差配を務めることが発表された。
 その後は、初めてのお客さんも多いということで、自己紹介などを兼ねたトークで盛り上げる。

 で、頃合いを見計らったところで、村上君の前説ののち、夕暮れ社 弱男ユニットの面々の作品(と称したほうがよいだろうな)が始まる。
 ちなみに、夕暮れ社 弱男ユニットは京都造形芸大出身の村上君をはじめ、稲森明日香さん、向井咲絵さん、南志穂さん、藤居知佳子さんの五人による演劇グループ。
 そのうち藤居さんは同志社女子大学から京都市立芸術大学大学院で声楽を本格的に学んでいて、今夜の『ドイツリートのための演劇創作〜シューマン「女の愛と生涯 TU」編』もそうした藤居さんの歌唱を要とする内容となっていた。
 って、なんだかアートアートした小難しい作品と危惧する向きもあるだろうけれど、そこは演劇公演のほかにコント公演など開催してきた夕暮れ社 弱男ユニットの面々だもの、ご安心のほど。
 稲森さんと向井さん扮する女中(下働き)の女性と南さん扮するお嬢様、さらには村上君演じるピアノ教師の四人が、よい意味での「小芝居」「軽演劇」を繰り広げながら、シューマンの歌曲『女の愛と生涯』の1曲目、2曲目を説明したのち、藤居さんにバトンを渡す。
 銭湯のお風呂を活かした筋書きに、稲森さんと向井さんがコメディエンヌぶりを発揮し、南さんもお嬢様のこまっしゃくれた感じをよく表していた。
 さらには、久々に村上君の演技を見ることができのも収穫だった。
 そして、忘れちゃいけないのが藤居さんの声量が豊かで情感のこもったメゾソプラノ(アルト)独唱。
 電子ピアノによる出口青空さんの伴奏も機智に富む。
 錦湯さんでの会に新たな可能性を夕暮れ社 弱男ユニットの面々は与えてくれた。
 ぜひV以降もここで披露してもらいたいものだ。

 続いて、高座の準備が終わったところで秀都さんが登場する。
 落語が初めてのお客さんも多いということに配慮しつつ、最近は後輩も増えてきてと落語家さんの世界を紹介を兼ねたマクラをひとくさり。
 本題のほうも、おなじみの『時うどん』を選ぶ。
 藤居さんの歌唱が本格的なクラシックなら、こちらも古典中の古典、歌うように語る流れのよい口演で、ここぞというところでは観客を巻き込みつつサゲまで演じ切った。

 トリは、方気さん。
 こちらも初めてのお客さんに対応して、マクラでおのが人となりを語っていく。
 そして本題は、たっぷりと『茶の湯』を演じた。
 小僧と二人の隠居暮らしを始めた老人、何か趣味を持とうと手を出したのが茶道だったが、小僧はもちろんのこと、老人のほうも詳しいことは一切知らず…。
 隠居老人と小僧がはちゃめちゃを繰り返す前半部分、店子たちがお茶に誘われて翻弄される中盤、そしてサゲにいたる終盤の三つの部分がある噺だけれど、方気さんはここぞというところで表情表現を強調しつつ、細部も丁寧に演じ重ねていった。
 石川県での活動が方気さんの藝にどう磨きをかけていくのか、非常に愉しみで仕方がない。

 最後は、方気さん、秀都さん、夕暮れ社 弱男ユニットの面々が登場してのトークで〆た。

 と、今夜も盛りだくさんの座錦湯だった。
 ああ、面白かった!!!

 そして、方気さんご夫妻は、半年間の支配人、本当にお疲れ様でした!!!!
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2018年03月13日

第21回座錦湯

☆第21回座錦湯

 出演:月亭方気さん、桂三幸さん、月亭八斗さん
(2018年3月12日20時開演/錦湯)


 3月も半ば近くとなって日中はだんだん気温が上昇するも、まだまだ夜は肌寒い京この頃だが、錦湯さんには常連さんに東京からお越しのご新規さんと、なかなかのお客さんが集まった。
 21回目となる座錦湯は、支配人の月亭方気さんに前支配人の桂三幸さん、おなじみの月亭八斗さんの出演。
 定刻20時頃、お三人が登場し、こちらもパスしてしまった前回の座錦湯のことなどあれこれと語って盛り上げる。

 で、頃合いのよいところで八斗さんが高座へ。
 まずは、だいぶん先の話になるがと断ってから、8月10日の夜に天満天神繁昌亭で自分が主催の会を開くと告知をし、その進捗状況を語って聴かせる。
 これは何やら興味深い会になりそうだ。
 続いて、今日は三つネタを用意してきたのでお客さんにお決めいただければと、アンケートを実施する。
 あえて題名は出さず、馬、財布、釣り(これは、冒頭のトークで『野ざらし』ばっかりやっているという突っ込みがあったことを受けてのもの)というキーワードだけを口にした結果、財布が圧倒的支持を得た。
 ということで、本題は『紙入れ』。
 亭主が留守だからとの女房の誘いに乗った亭主の弟分の男だったが、どうしたことか帰って来ないはずの亭主が帰って来た。
 這う這うの体で逃げ出したまではよかったものの、うっかりして紙入れを忘れてしまった。
 紙入れの中には女房からの付文が入っている、これは一体どうしたものか。
 といった具合のおなじみ古典で、八斗さんは流れよく丹念に噺を運んで行った。
 中でも、女房のここぞというところでの表情の変化が印象に残る。

 続いて、方気さんが登場する。
 4月1日から石川県の住みます芸人となる方気さんだけれど、支配人としての出演は残すところ今回を入れてあと3回。
 珍しいネタを演じるシリーズとしてかつてすべりにすべった『軒付け』をかけようかと思っていたが、どうにもいーっとといらつくことがあったりもして、急遽ネタを変更することにした。
 はじめにそのいーっといらつくことをマクラで語ってきかせる。
 最初の小怒りが続く大きな怒りの伏線となって、これはどうなるやばいぞやばいぞと思わせておいて、緊張と緩和、ああよかった!とほっとして大笑い。
 さて本題は、いーっといらついていてはいけませんよいうことで、『天災』。
 実の母親を蹴り倒すような喧嘩大好きなDV男。
 それではいかんと紹介されたのは心学の先生で…。
 といった具合のこれまたおなじみの古典だ。
 前半の先生による男への説諭というフリが、最後の男の頓珍漢な言葉の連続に巧く結びついていてやっぱりおかしい。
 しばらく方気さんの落語が聴けなくなるのは、さみしいかぎりだ。

 トリは、じゃんけんで一番先に負けた三幸さん。
 つまるところ、今夜はじゃんけんに勝ったものの順で高座に上がったのであった。
 いつもの如く軽快なマクラで笑わせたのちは、以前錦湯さんでも演じた新作落語を演じる。
 師匠から破門されて居酒屋で働く元落語家の男だったが、今も落語への想いは立ち切れていないようで…。
 男と居酒屋の店主のやり取りによる前半は、落語家あるあるの連発。
 笑わせつつ、これでええんかいという三幸さんの心の声も聞こえてくるような内容となっている。
 一転、後半は男の想いが叶おうか…、といった、さあ、ここからというところでアクシデントが発生。
 三幸さんはそれを笑いに変えて、高座を切り上げた。
 そうそう、高座へ上がる移動中の三幸さんからキットカットの小豆味をお客のおっさん三人組のうちの一人としていただいたんだ。
 美味しく食べました。
 ごちそうさま!!

 最後は、大喜利を決行。
 前半は方気さんが仕切り、後半は八斗さんが仕切りで、三幸さんやお客さんの地主君と共にお題に挑んだ。
 それぞれコンスタントに解答を重ねたが、後半仕切りの八斗さんの仕掛けぶり、細かいあれこれがツボにはまってついつい笑ってしまった。

 と、今夜も盛りだくさんの座錦湯でした。
 ああ、面白かった!!

 ちなみに来週は、月亭方気さんと月亭秀都さんに加え、夕暮れ社 弱男ユニットの面々が出演の予定です。
 皆さん、ぜひぜひ錦湯さんへ!!
posted by figarok492na at 00:37| Comment(0) | 落語・ネオ落語記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする