2004年12月31日

チェーホフの視点

 チェーホフの妻宛の書簡集を読んでいる。
 1900年1月2日付の書簡にこのような言葉を見つけた。
「(前略)僕はメイエルホリドに手紙を書き、その手紙のなかで、神経質な人間を表現するのにどぎつくやってはいけないと説得しておきました。人間の大半は神経質です、多くの連中が苦しみ、少数の人間は激しい痛みを感じている、しかしだからと言ってあなたは、もがいたり駆け廻ったり自分の頭を抱えたりしている人を一体どこで − 街路でも、家のなかででも − ごらんになりますか? 苦悩を表現するには、それが実際の人生で表現されるように、つまり手や足によってではなく、トーンや眼つきによって、表現しなければならない。手振りによってではなく、物腰によって表現しなければならないのです(後略)」
 あまりにも当たり前の言葉だと、僕も思う。
 だが、その当たり前の言葉が、今しっかりと受け入れられているかどうか?
 僕は、周囲の役者陣について考えてみたり、時に自分自身が為す「(大根の)演技」について反省してしまった。

 『ジークフリート』は、一応最後まで聴いたが、途中下車の時間があまりにも長くなったので、割愛する。
 ただ、ラスト近く、ジークフリート牧歌で引用されている旋律が出て来た時は、「よっしゃ出て来た」と嬉しくなってしまったことだけは記しておきたい。
(ジークフリート牧歌は、ワーグナーが妻のコジマの誕生日のために作曲した作品。ジークフリートは、ワーグナーの長男の名前で、この牧歌が作曲される前年に誕生した。ちなみに、ジークフリート・ワーグナーは作曲家及び指揮者となった)
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2004年12月20日

求む三人姉妹!

 この前の『どっちにしたって』の続きになるけれど、京都の演劇界で、『三人姉妹』を演じてみようという人間はいないものか?
 新劇調に構える必要はないし、かといって過激な演出を求めている訳でもない。
 三浦基さん演出の『三人姉妹』を観て、私もやりたくなった、程度でいいのだけれど。
 例えば、三人姉妹には、豊島由香さん、安井きよ子さん、内海祐子さん(山本麻貴さんや、筒井加寿子さんでもいい)。
 弟(兄)の嫁には、岡本司さん<大熊ねこさん>(田之室かおりさんでもいい)。
 チェブトゥイキンには、もちろん僕、ではなく、二口大学さん。
 あと、男性陣には、中田達幸さんや岡村宏懇さん、岡嶋秀昭さんや板橋薔薇之介さん(内田和成君や竹原孝昭君が入ってもいい)。
 もちろん、これは一例にすぎないけど、京都の役者陣で『三人姉妹』を観てみたいものだ。

 誰か、企画してみようという奇特な方はいませんか?
 
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2004年12月15日

どっちにしたって

 今年、2004年は、チェーホフが亡くなってから、ちょうど100年目にあたる年だった。

 僕がチェーホフに親しみだしたのは、今から10年程前、院生時代に、ちくま文庫から出ていたチェーホフ全集をこつこつと買い始めたことがきっかけだった。
 第9巻と第10巻(ともに戯曲集)、そして第12巻(『サハリン島』他)こそ欠けているが、全て品切れ状態となった今では、僕にとって大切な宝物である。
(実は、友人に全冊貸していたのだが、どうしても必要な用件があって送り返してもらった)

 といって、チェーホフがものした小説を、全て優れた作品だなどと評価するつもりは毛頭ない。
 それどころか、その大半は、玉石混交の「石」だと言ったほうが、実は適切なのかもしれない。
 だが、そうした創作の積み重ねが、後年の傑作(『かもめ』、『ワーニャ叔父さん』、『三人姉妹』、『桜の園』)を生み出すばねとなったことも、また否定できないはずだから、それこそ「もって他山の石とすべし」とも僕は思う。

 チェーホフの作品では、『タバコの害毒について』(柄本明が素晴らしい舞台を観せてくれた)を下敷きにした『演劇の害毒について』という一人芝居を上演したことがある。
 知人に何かやってくれと頼まれて、いやいや引き受けた舞台だが、お客さん方からはそこそこ笑いが取れたものの、知人の性癖をネタに使ったために、後で大目玉を喰らってしまったっけ。

 僕など、どうしようもない大根役者だが、許されることなら生涯に一度だけ、どうしても演じさせてもらいたい役がある。
 それは、『三人姉妹』の、チェブトゥイキンである。
 はっきり言って、かっこいい登場人物ではない。
 それどころか、全編間の抜けたシニカルな言動ばかり繰り返す「かなしい」人物である。
 けれど、僕は、そんな彼にひかれてしまう。
「我々はいないんだ。この世の中、何にもありゃあせんのだ。ただ存在しているような気がするだけさ。どっちにしたっておんなじことさ」
 という、終幕の彼の台詞を、舞台の上で口にしてみたいものだ。

 チェーホフが亡くなって100年。
 彼の作品、特にその戯曲は今も忘れ去られず、いや、それどころか、さらに輝きを増しつつあるように、僕には思われる。
 そして、悲愴と皮相の間で、冷徹な視線を保ち続けた彼の姿勢から、現在の僕たちがくみ取らなければならないものは、まだまだ少なくないようにも感じられる。
 果たして、それがチェーホフ本人にとって幸福なことだったのか、それともそうでなかったのか。
 そう問われて、
「どっちにしたっておんなじことさ」
 と、チェーホフはチェブトゥイキンさながら呟くのかもしれないが。
 
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2004年11月21日

役者を夢みて・3(自己整理)

*僕の偏愛する今は亡き日本の男優たち3

 市村  俊幸       (ブ−ちゃん/『生きる』)

 小栗  一也       (おじいさん/独特の声)

 金内  吉男       (声がよかった)

 岸田   森       (ドラキュラ/角川映画)

 草野  大悟       (若すぎた死)

 小林  昭二       (市川昆の横溝シリーズ/特撮もの)

 佐分利  信       (何言ってるんだかわからなかった晩年)

 中条  静夫       (雷親父)

 福田  豊土       (林檎を齧ると…/『伊達政宗』の小梁川泥バン斎)

 三津田  健       (文学座)

 村松  克己       (『十二人の優しい日本人』/晩年の顔色の悪さ)

 山田  康雄       (テアトル・エコー/ルパン三世)

 横森   久       (時代劇の悪役/『悪い奴ほどよく眠る』)
 
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2004年10月28日

役者を夢みて・2(自己整理)

*僕の偏愛する今は亡き日本の男優たち2

 安部  徹        (悪役、ギャングの親分)

 有島 一郎        (喜劇人/『暴れん坊将軍』)

 大坂 志郎        (『東京物語』/『大岡越前』)

 加藤  嘉        (『砂の器』)

 河野 秋武        (民藝/『わが青春に悔いなし』)

 木田三千雄        (屋台の親父)

 山茶花 究        (あきれたぼういず/黒澤作品)

 沢村いき雄        (『用心棒』/『天国と地獄』)

 下元  勉        (善意の人/気弱な老人)

 瀬川 新蔵        (前進座/『伝七捕物帳』)

 永井 智雄        (独特のエロキューション)

 浜村  純        (映画説明者じゃない)

 日守 新一        (松竹/『生きる』)

 三井 弘二        (松竹/黒澤作品)

 渡辺 文雄        (大島渚作品/東大出身)



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2004年10月10日

役者を夢みて(自己整理)

*僕の偏愛する今は亡き日本の男優たち

 天本  英世       (死神博士/スペインを愛した男)
 伊藤 雄之助       (『生きる』の作家/嶋田久作の父親風)
 内田  朝雄       (日本のドン/宮沢賢治の研究者)
 小澤 栄太郎       (最晩年の天衣無縫ぶりも忘れられない)
 金子  信雄       (『仁義なき戦い』の山守組長/料理番組でのやりたい放題)
 神田   隆       (傲岸不遜な政治家/東大出身)
 小池  朝雄       (刑事コロンボ/優れた舞台人)
 小松  方正       (大島渚作品)
 嵯峨  善兵       (悪役=時代劇の商人、悪徳政治家)
 信   欣三       (『帝銀事件・死刑囚』の平沢死刑囚役)
 高木   均       (怪し気な中国人/『トトロ』の声優としても知られる)
 伊達  三郎       (大映作品/時代劇の悪役)
 田中  明夫       (ポアロ=ピーター・ユスティノフの吹き替え)
 戸浦  六宏       (大島渚作品/必殺シリーズの悪役)
 殿山  泰司       (三文役者/類い稀なるエッセイスト)
 中村  伸郎       (終生舞台人/黒澤・小津作品でも有名)
 成田 三樹夫       (言わずと知れた)
 花澤  徳衛       (頑固親父)
 藤原  釜足       (黒澤作品で「ぶちこわし」といえばこの人)

posted by figarok492na at 02:50| Comment(3) | TrackBack(0) | 役者を夢みて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする