ピーター・ゼルキンが1965年3月に録音したヨハン・セバスティアン・バッハのゴルトベルク変奏曲<RCA>を聴いた。
彼にとって、本格的なソロ・デビュー盤にあたるようにCDの紹介では書かれている。
ピーター・ゼルキンは生涯音楽と向かい合った人であることは言うまでもないが、それとともに偉大な父ルドルフ・ゼルキンとも向き合わざるをえなかった人だろう。
反抗する若き日のピーターに対して、ルドルフは小澤征爾にその後見人的な役割を頼んだというエピソードもよく知られている。
そして、このゴルトベルク変奏曲ではもう一人向き合わなければならない存在がいた。
同じくこのゴルトベルク変奏曲で鮮烈な印象を与えた、というよりゴルトベルク変奏曲の演奏に大きな楔を打ち込んだグレン・グールドだ。
ピーターの演奏を聴いていると、そのことがよくわかる。
第14変奏の速いテンポ設定など、明らかにグレン・グールドの影響を感じる部分もあれば、あえて違う歌を歌おうという意志もそこここに聴き受けられる。
繊細さと、強い表現欲求とを感じる演奏だ。
それから約30年後の1994年の6月に再びピーター・ゼルキンはゴルトベルク変奏曲を同じRCAレーベルに録音している。
いずれ必ず耳にしたい。
2024年03月27日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック