春分の日だからというわけではないが、シューマンの交響曲第1番「春」と第2番<Challenge Classics>を聴いた。
演奏は、4月から京都市交響楽団の首席客演指揮者となるオランダ出身のヤン・ヴィレム・デ・フリーント(フリエンド)の指揮するノルウェーのオーケストラ、スタヴァンゲル交響楽団。
北欧音楽好きはひとまず置くとして、ある程度のオーケストラ好きでないとスタヴァンゲル交響楽団のことを知らないのではないか?
僕がこのオーケストラの存在を知ったのは、ちょうど30年ほど前のヨーロッパ滞在中に、同じ院の研究科だった大塚陽子さん(現立命館大学政策科学部教授)を訪ねてイギリスのウォーリック大学に遊びに行ったときだ。
大学のアーツセンターのオーケストラコンサートの年間プログラムの中に、Stavanger Symphony Orchestraも名前を連ねていた。
確か指揮は当時の首席指揮者のアレクサンドル・ドミトリエフで、お得意のチャイコフスキーかショスタコーヴィチがメインだったような記憶がある。
ただ、そのときはStavangerを日本語でどう読んで、どう表記するのがよいのかわからなかった。
スタヴァンゲル交響楽団は1990年からフランス・ブリュッヘンを古楽の音楽監督に迎え、その後も同じポストにフィリップ・ヘレヴェッヘやファビオ・ビオンディを招くなど、比較的早いうちからモダン楽器の演奏にいわゆるピリオド・スタイルを取り入れてきたオーケストラでもある。
同じくピリオド畑出身のフリーントとのこのアルバムでも、そうしたこれまでの蓄積が大きく生きているように感じた。
例えば、シカゴ交響楽団のような圧倒的な音の力はないけれど、その分、隅々まで丹念に音楽を磨き込んでいく細やかさではスタヴァンゲル交響楽団に軍配を上げたくなる。
まず、第1番の「春」から。
流れのよさ、歯切れのよさはもちろんだが、弦楽器ではあえて角を立てることなく穏やかな響きを生み出す。
結果、狂瀾よりも春の穏やかさを存分に感じて、愉悦感というのか、最後までリラックスして音楽を聴くことができた。
続く第2番は一転、この曲の持つ前へ前へ進もうとする前のめり感にわくわくする。
こちらには「春」というニックネームはないけれど、強い風が吹き荒れている今日の京の春のような趣。
強弱緩急のメリハリもきいているが、音がいぎたなくならないのは、フリーントの音楽性とともに人柄のあらわれのように思わずにはいられない。
第1、第2、終楽章と運動性、躍動性が前に出る分、第3楽章の抒情性、夢見るような情感がひときわ印象に残った。
スタヴァンゲル交響楽団もフリーントの解釈によく応えて、充実したアンサンブルを創り上げていた。
ちなみに、2025年の1月28日に開催予定の京都市交響楽団第696回定期演奏会では、フリーントがシューマンの交響曲第2番を指揮する予定だ。
来年のことを言えば鬼が笑うというが、なんとか聴きたいものだなあ!
2024年03月20日
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