ジャン・マルティノン指揮シカゴ交響楽団が演奏したメンデルスゾーンの『夏の夜の夢』の音楽のハイライト<RCA>を聴く。
ここでは、個別に作曲された序曲と劇音楽の中からスケルツォ、夜想曲、結婚行進曲の4曲が演奏されている。
序曲は冒頭からとばすとばす。
最初の和音の美しさなどなんのその、ロマンティックな雰囲気など知ったこっちゃない、それこそロバの頭を被せられるニック・ボトムら職工たちのどたばたじたばたあちゃらか劇のような速いテンポで音楽は進む。
マルティノン、シェイクスピアに興味がないのかね…。
ところが、冒頭の部分が再びあらわれる直前、テンポがぐっと遅くなり、まるで葬送の音楽のように暗然とする。
そこにはっと驚いた。
本当に驚いた。
スケルツォは、標準体重よりずっと重たい体格の人が細やかにステップを刻んでいるというのか、重心が低いにも関わらず小回りのきく演奏。
夜想曲は、名手テイル・クレヴェンジャーだろうか(1966年の入団でこれは1967年の録音)、ホルンのソロをはじめとした管楽器と弦楽器が美しい掛け合いを聴かせる。
そして、おなじみ結婚行進曲ではトランペットら金管群や打楽器群が大活躍し、壮麗華美にしめる。
当時のRCAの録音傾向もあって音がドンシャリ気味なのは仕方あるまい。
しかし、この演奏でやはり一番忘れ難いのは、序曲のあの奈落の底を目にするような、『マクベス』の「人生は歩き回る影法師、哀れな役者だ」という言葉を音楽にしたかのようなあの部分だ。
2024年03月18日
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