ジャン・マルティノンがシカゴ交響楽団を指揮した一連の録音の中から、ラヴェルのラ・ヴァルスとボレロ<RCA>を聴く。
悪名高い音楽評論家クラウディア・キャシディによるネガティヴ・キャンペーンや、楽団とのトラブルもあって任期途中に音楽監督を退任せざるを得なかったシカゴ交響楽団時代は、マルティノンにとって最低最悪だったと言われている。
前任者である偉大なフリッツ・ライナーとの比較もあったのだろうが、残された録音を聴くかぎり、実際の演奏の面ではマルティノンとシカゴ交響楽団のコンビネーションは最低でも最悪でもなかったように感じられる。
マルティノンは幅広いレパートリーの持ち主であり、シカゴ交響楽団との録音でもその一端をうかがうことができる。
できるけれど、今日聴いたのは得意中の得意と呼ぶべきラヴェルの、それも両看板とでも呼ぶべきラ・ヴァルスとボレロである。
相手がシカゴ交響楽団に限らず、マルティノンは線のはっきりとした音楽を創り出す。
ラ・ヴァルスとボレロでもそれは変わらない。
ラ・ヴァルスは、ウインナ・ワルツへのオマージュであり、パロディであり、挽歌でもあるのだが、ぐいぐいとテンポを上げていく終盤の追い込みがやはり忘れ難い。
一方、ボレロは一貫して速いテンポ。
しかしながら、素っ気なさとは無縁で、おなじみの旋律が何度も繰り返されて楽器が増えていき、遂にクライマックスを迎えるあたりには興奮した。
ソロ、アンサンブルの両面でシカゴ交響楽団も実に達者である。
2024年03月16日
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