ここのところ、歴史的な録音ばかりながらでなく聴いていたので、昨年リリースされたマキシム・エメリャニチェフ指揮スコットランド室内管弦楽団が演奏したメンデルスゾーンの交響曲第3番「スコットランド」と第5番「宗教改革」<LINN>を聴くことにする。
マキシム・エメリャニチェフはもともとチェンバロやフォルテピアノといったピリオド楽器の鍵盤楽器奏者として活動していたが、ピリオド楽器アンサンブルの指揮でも知られるようになり、現在ではモダン楽器のオーケストラの指揮者としても活躍中である。
東京交響楽団や新日本フィルへの客演もあり、今年の9月には新型コロナのせいで流れた読売日本交響楽団との共演も予定されているはずだ。
当然、メンデルスゾーンでもピリオド・スタイルがとられているのだけれど、エメリャニチェフの場合は強弱緩急のコントラストを極端に強調することなく、まとまりがよくて流れのよい音楽を創り出す。
結果、メンデルスゾーンの音楽の持つ感傷性や抒情性、躍動感が巧く再現されていた。
ただ、もしかしたらガット弦を使用しているのか、LINNのクリアな録音の音質もあって、少し弦楽器が塩辛く聴こえる箇所もなくはなかった。
いつもより少しヴォリュームを上げると、幾分気にならなくなったが。
エメリャニチェフの特性とメンデルスゾーンの特性がもっともよく合ったように聴こえたのは、スコットランドの第3楽章だ。
歌曲『歌の翼に』に通じる、淡い希望を伴った甘美さが、的確にコントロールされた、なおかつ素朴で澄んだ音色にも不足しない管楽器と弦楽器のやり取りの中からよく表れていた。
2024年03月13日
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