ヴァルター・ギーゼキングが弾いたドビュッシーのベルガマスク組曲<WARENER>を聴く。
ギーゼキングはドイツ人の両親の子としてフランスのリヨンで生まれ、その後、ドイツで育ち、音楽も学んでいる。
ベルガマスク組曲を聴いてまず思ったのは、ギーゼキングの根底に当時の潮流である新即物主義があるということだ。
第1曲の前奏曲の終盤もそうだし、第2曲のリズミカルなメヌエットなど特にそう。
対象との距離を的確に保ち、過度の感情吐露を避け、速いテンポで音楽を進めて行く。
テクニックの面でも精度の高さが求められる。
ただ、それだけでは、それこそ機械的で冷淡な演奏に終わってしまうところだが、ギーゼキングの場合はそれに加えて、軽妙な指づかいによる節回しと澄んで美しい弱音という武器がある。
終曲のメヌエットの軽い味わいは、ギーゼキングならではのものだろう。
そして、このベルガマスク組曲でもっとも有名な、というより、ドビュッシーの作品の中でも一二を争うほどにもっとも有名な月の光のなんと美しいこと。
非常にクリアだけれど、ほんのりとした暖かみもある。
特に、最後の弱音の美しさには、はあっとため息が出た。
とても素晴らしい演奏だ。
2024年03月11日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック