ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ウィーン・フィルが演奏したメンデルスゾーンの序曲『フィンガルの洞窟』とシューマンの劇音楽『マンフレッド』序曲<WARENER>を聴く。
フィンガルの洞窟は、音の風景画家といったメンデルスゾーンのイメージを象徴する作品だが、フルトヴェングラーが指揮すると風景そのものというよりも、風景を見ている人間の中に残った風景であるとか、風景に対する感情の変化とかを耳にし、目にしているように思えてくる。
長調に転じた感情の放射や、中間部での哀切さをおびた優美さ、終盤のぐんぐんと音を前に進める追い込みが強く印象に残った。
音質は今一つ。
一方、シューマンでは、作品の持つ悲劇性もあって、鬱々と沈潜する感情がより色濃く表現される。
とともに、フルトヴェングラーはこの『マンフレッド』序曲の中に、ベートーヴェンの序曲『コリオラン』や劇音楽『エグモント』序曲を見ているのではないか。
ベートーヴェンの一連の短調の作品の如く、何か曰く言い難いものが、運命として迫ってくるかのように音楽が響く。
だからこそ、一瞬の抒情的な旋律がひときわ甘美に聴こえもする。
そして、徐々に音楽が消えていくラストが忘れ難い。
こちらもモノラル録音だが、フィンガルの洞窟よりはクリアに音が聴こえた。
2024年03月10日
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