グレン・グールドが弾いたヨハン・セバスティアン・バッハのフランス組曲全曲(6曲)とフランス風序曲<SONY>を聴いた。
ちなみに、オリジナルは第1番から第4番までと、第5番、第6番、フランス風序曲の2枚のLPレコードでリリースされている。
一昨年の12月にamazon music unlimitedに加入して以来、グレン・グールドの録音をよく聴くようになったが、正直、作品によってはグールドのスタイルと音楽との齟齬を感じることも少なくなかった。
ところが、水を得た魚ではないけれど、バッハとグールドの相性は抜群。
全曲、1時間20分があっという間に過ぎてしまった。
よく考え抜かれ、ついでによく編集し尽くされた演奏であるにもかかわらず、自由さと即興性を失わない。
グールド以上に表面的な技術的精度の高さを誇る演奏は少なくないだろう。
けれど、対位法をはじめバッハの音楽の構造を丹念に解き明かしながら、なおかつグールドほどにリズミカルでノリと流れのよい音楽を生み出し得ている演奏はそうそうない。
また、グールドは演奏に没入するが、それでいて作品との適度な距離を保っている。
例えば、第4番の終盤、エールからジーグにかけて音楽は高揚する。
しかし、その高揚はドラマティックな感情吐露とは異なり、音楽そのものに反応した感興によるものである。
そして、軽やかで柔軟でありながら、確固とした音楽的核、芯を持ち続ける。
本来ならば両立し難い要素をバランスよく兼ね備える、それこそグールドが愛し強調した対位法のような演奏だ。
それにしても、グールドの弾くバッハには時間を忘れてしまう。
しかも、もう一度初めから聴き直したくなる。
2024年03月07日
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