ベネズエラ出身の指揮者、グスターボ・ドゥダメルがウィーン・フィルを指揮して録音したムソルグスキーの組曲『展覧会の絵』(ラヴェル編曲)と交響詩『はげ山の一夜』(リムスキー=コルサコフ編曲)<DG>を聴く。
ドゥダメルといえば、シモン・ボリバル・ユース・オーケストラとのリズミカルでエネルギッシュな演奏をどうしても思い起こすが、それとともにオーケストラをスタイリッシュにコントロールしようとする指揮者であることも忘れてはなるまい。
『展覧会の絵』ではそうしたドゥダメルの二つの側面がよく表れている。
加えてここでは、表面的なざらつき、粗さを残すことで、通常のラヴェル編曲版を用いながらも耳慣れない音の響きを感じさせるなど、独特な音色を生み出してもいる。
ただそれには、キエフの大門のラストなど、一部の楽器をクローズアップする録音の影響も考えておいたほうがよいかもしれないが。
セッション録音が行われた本拠地、ウィーン・ムジークフェラインザールよりももう少し残響の少ない、ドライで分離のよいホールでの実演ならば、ドゥダメルの意図が一層伝わるような気がする。
『はげ山の一夜』は、強弱緩急をしっかりつけてぐいぐい音楽を進めていくノリのよい演奏。
一方、アンコールピース的にカップリングされたチャイコフスキーのバレエ音楽『白鳥の湖』のワルツは、ドゥダメルのそのような解釈と音楽の本質との齟齬が目立っていたように感じる。
2024年03月03日
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