ウクライナ出身のピアニスト、アンナ・フェドロヴァが弾いたショパン・アルバム『Shaping Chopin シェイピング・ショパン』<CHANNEL>を聴いた。
日本語に訳すと、造形されたショパン、形成されたショパンということになるだろうか。
ワルツ第1番「華麗なる大円舞曲」にはじまり、夜想曲第7番と第8番、3つのワルツOp.34(ワルツ第2番〜第4番)、ワルツ第5番、3つのマズルカOp.50、3つのワルツOp.64(ワルツ第6番〜第8番)ときて、幻想即興曲でしめるプログラムだが、フェドロヴァは民俗舞曲的なリズムを強く意識した演奏を行っている。
いや、もしかしたら意識的意図的ではなく、ウクライナに生まれたフェドロヴァ生来の感覚からくるものかもしれないが、いずれにしても彼女の演奏からはショパンの音楽の本質の中心に舞曲のリズムがあることがよくわかる。
それは、舞曲の名前がつけられたワルツやマズルカにとどまらず、夜想曲や即興曲においてもそうである。
もちろん、リズムの強調だけでは、音楽が骨ばったものになりかねない。
フェドロヴァの演奏のもう一つの魅力は、過度にならないウェットさと抒情性だろう。
夜想曲第8番やワルツ第7番、幻想即興曲といった曲調そのものが憂いを持ったものばかりでなく、華麗なる大円舞曲や第6番の小犬のワルツの軽快な作品にも翳りや憂いがそっと忍び込む。
そのふとした変化にはっとした。
ほどよい残響のある録音も、フェドロヴァの音楽性にぴったりだった。
2024年03月02日
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