2021年にリリースされたルノー・カピュソンによるヴァイオリン小品集『パリのヴァイオリン』<ERATO>を聴いた。
収録されているのは、ヘンデルのヴァイオリン・ソナタニ長調HWV.371から第3楽章、ヨハン・セバスティアン・バッハの管弦楽組曲第3番からアリア(カピュソン&ベロン編)、クライスラーのプニャーニの様式による前奏曲とアレグロ、シューマンの3つのロマンスから第2曲「Einfach, innig」、シューベルトのセレナードD.957-4、ショパンの夜想曲 第20番(ミルシテイン編)、ワーグナーのアルバムの綴り(ヴィルヘルミ編)、コルンゴルトのマリエッタの唄(歌劇『死の都』から)、プッチーニの私のお父さん(歌劇『ジャンニ・スキッキ』から)、ラフマニノフのここはすばらしい場所、チャイコフスキーの悲しい涙など知らずに過ごした日々(歌劇『イオランタ』から)、ラフマニノフのヴォカリーズ(プレス編)、ドヴォルザークの我が母の教え給いし歌(パウエル編)、マスネのタイスの瞑想曲(M-P.マルシック編)、ドビュッシーの亜麻色の髪の乙女(A.ハルトマン編)と月の光(A.レーレン編)、イザイの子供の夢、ブラームスのハンガリー舞曲第5番(ヨアヒム編)、エルガーの朝の歌、チャップリンのスマイル(P.クイント編)、モリコーネのチャイルドフッド・アンド・マンフッド(G.ベロン編)、グラッペリのロール(映画『バルスーズ』から)の22曲。
あと2年ほどで50を迎えるルノー・カピュソンは、今や中堅からベテランの域に入りつつあるフランス出身のヴァイオリニスト。
流麗なテクニックと清潔感のあるリリシズムの持ち主だが、ここでは作品・編曲にあわせて演奏スタイルや音色を巧みに変化させている。
例えば、自らとピアノ伴奏のギヨーム・ベロンが編曲したバッハのアリアでは昨今のバロック演奏の流儀が意識されているし、プッチーニの私のお父さんではオペラティックな歌いぶり、ハンガリー舞曲では民俗音楽的な節回しが実に見事だ。
また、亜麻色の髪の乙女では中国風な響きが聴こえてくるし、シューベルトのセレナードでは濃密な夜の雰囲気がエルガーの朝の歌では陽光輝く朝の雰囲気がそれぞれ醸し出されている。
そうした中で、もっとも印象に残ったのは、タイスの瞑想曲。
気品があって、静謐で実に美しい。
ベロンも演奏スタイルや音色の変化にあわせてカピュソンをよく支えていた。
続けて全曲を聴いてもいいし、好きな曲だけ繰り返して聴いてもいい。
今現在に相応しいヴァイオリン小品集である。
2024年03月01日
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