ルドルフ・ゼルキンという音楽家にとって、ベートーヴェンはその中心となるレパートリーだった。
そのルドルフ・ゼルキンが最晩年に録音したピアノ・ソナタ第21番「ワルトシュタイン」と第23番「熱情」<DG>を聴いた。
前者は1986年、後者は1989年というからルドルフ・ゼルキンにとって最晩年の録音である。
実は、この二つの録音は諸般の事情でお蔵入りになっていたもので、昨年になってようやくリリースされた。
販売を許可した娘のジュディス・ゼルキンが断りを入れているように、最終段階まで編集された「完璧」なアルバムではない。
録音時期に曲調もあってワルトシュタインはまだしも、熱情のほうは、正直聴いていて辛い部分もある。
例えば、解釈もあるのだろうが、終楽章の遅さはどうしてももたつき気味に聴こえてしまう。
だが、それでもそれこそ熱情の迸りを強く感じもする。
特に終楽章のコーダ。
一気にテンポが速まる、全力全身で音楽を鳴り響かせる。
また、ワルトシュタインでは硬質で透明な強音や過度に陥らない抒情性がよく発揮されてもいた。
ルドルフ・ゼルキンが人生をかけて何と向き合ってきたがわかる貴重なドキュメントだ。
2024年02月24日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック