小澤征爾が指揮した演奏を続けて聴く。
今回は水戸室内管弦楽団とのベートーヴェンの交響曲第1番とピアノ協奏曲第1番<DECCA>。
交響曲は2017年1月の、マルタ・アルゲリッチをソロに迎えたピアノ協奏曲は同じ年の5月の、ともに水戸芸術館コンサートホールATMにおける定期演奏会でのライヴ録音だ。
まず交響曲第1番は、昨夜聴いた運命の延長線上にあることがよくわかる演奏。
何しろ80代に入ってからの指揮だもの、昔ほどには力いっぱいというわけにはいかないけれど、若干ピリオド奏法への目配りもあるのか、比較的速めのテンポで弦楽器も小刻みに動く。
ただ、そうした音楽づくりである分、かえってオーケストラの編成の少なさやコントロールの衰えが聴こえたりもした。
一方、ピアノ協奏曲第1番はさらにピリオド奏法への目配りが効いて、冒頭から力強くスピーディー。
もちろん、それにはアルゲリッチとの共演ということが大きく作用しているのだろうが。
といっても、単なるテンポどうこうの問題ではなく、そうした速めのテンポをやすやすと弾き切る技量を維持したアルゲリッチの持つエネルギーやパワーからの影響ということだ。
事実、アルゲリッチのソロには感心感嘆した。
両端楽章、特に終楽章の一気呵成な演奏には、同じくアルゲリッチの十八番であるショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番を思い出したほどだ。
しかも、テクニカルな衰えを感じさせることなく一気呵成であるにもかかわらず。目まぐるしい表現の変化にも不足していない。
そうした変化の豊かさという意味でも、第2楽章が強く印象に残った。
これは、ぜひ実演に接しておきたかったと強く思う。
なお、アルゲリッチと小澤征爾のこの曲は、1983年のバイエルン放送交響楽団のコンサートのライヴ録画も残っている。
できれば一度触れておきたい。
2024年02月10日
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