昨年、ながらでなくamazon music unlimitedで聴いたアルバムの中に、ドイツ出身のテノール歌手ヨナス・カウフマンが歌ったプッチーニのオペラ・アリア集<SONY>があった。
暗い情熱とでも呼びたくなるような翳りがあって深みのある重心の低い歌声と役柄にあわせて的確に歌い分ける細やかな歌唱があいまって、非常に充実したアルバムだった。
ただ残念だったのは、珍しいオペラのアリアが多く集められているのに対し、プッチーニならまずはこれ! というおなじみのアリアがほとんど録音されていなかったことだ。
今回聴いた、リチャード・タッカーのアリア集<SONY>ではそんな出し惜しみは一切ない。
『ジャンニ・スキッキ』や『西部の女』からのアリアも含まれているとはいえ、メインはやはり『トスカ』や『トゥーランドット』、『ラ・ボエーム』のおなじみアリアであって、その点非常に満足がいく。
タッカーは1940年代から60年代にかけて一世を風靡したアメリカ出身のテノール歌手。
ちょっと鼻にかかって伸びと張りのある美声の持ち主である。
ただ、問題なのはどの曲も感情過多というのか、歌いぶりが一辺倒なこと。
そして、そのことと深く関係しているが、歌のそこここに自己の歌唱へのナルシズムが漂っていること。
少し前までだったら、思わず「臭い」と断じてしまいそうだけど。
最近、amazon music unlimitedで昔の歌い手の歌を結構聴く機会ができて、これも一つの歴史的証言、過去の大スターの藝のあり様を愉しめるようになってきた。
なので目くじらを立てる気にはならない。
伴奏はファウスト・クレーヴァ指揮コロンビア交響楽団で、1960年の録音だ。
2024年02月08日
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