モーツァルトの交響曲第36番「リンツ」を大好きになったきっかけは、カルロス・クライバーがウィーン・フィルを指揮したコンサートの録画を観聴きしたことだった。
クライバーの指揮姿の美しさはひとまず置くとして、緩急自在というのか、押すべきところは押し、退くべきところは退きつつ、長調の中に潜む翳りをあぶり出すその手腕の見事に感嘆したし、ウィーン・フィルの柔らかな音色がそれにまたぴったりとあっていた。
それから、この曲を好んで聴くようになった。
もちろん、クライバーとは異なるタイプの演奏も積極的に聴いた。
今夜聴いたオットー・クレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団<WARNER>は、まさしくクライバーとは対極にあるような演奏である。
クレンペラーといえば、晩年になればなるほどテンポが遅くなっていったことで知られているけれど、1956年の録音ということもあって、序奏こそ重々しいし全体的に低弦は強調されてはいるものの、主部からあとは実に速い。
緩徐楽章も含めてなべて速いテンポ設定だ。
と、言って、いわゆるピリオド奏法のように細かい部分を丹念に掘り下げるものではなくて、ぶっちゃけちょっと素っ気ないほど。
ただ、ところどころ凄みというか鋭い一閃というか、はっとさせられるような箇所がある。
全部聴き終えると、またはじめから聴きたくなる。
そんな演奏だった。
2024年01月22日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック