2024年01月20日

今日聴いた音楽からA(2024/1/20)

 指揮者としての活動を始めたころ、ロンドンのオーケストラと共演する機会が多かったし、コロンビア(現ソニー)レーベルの意向もあってだろう、ダニエル・バレンボイムはロンドン・フィルやイギリス室内管弦楽団とともにエルガーの管弦楽曲を網羅的に録音している。
 ただ、20世紀を迎えてシュターツカペレ・ベルリンと集中的に再録音を行ったことを考えれば、指揮者としてのバレンボイムにとって、やはりエルガーは重要な作曲家であったともいえる。
 そしてそれには、チェロ協奏曲を大切なレパートリーにしていたかつてのパートナー、ジャクリーヌ・デュ・プレとの繋がりもあるかもしれない。
 ちなみに、バレンボイムはフィラデルフィア管弦楽団を指揮してデュ・プレとエルガーのチェロ協奏曲のライヴ録音を行っている。
 そうしたバレンボイムのエルガー録音のうち、ロンドン・フィルとの威風堂々全曲、宮廷仮面劇『インドの王冠』抜粋、帝国行進曲を聴いた。
 有名な第1番からアルバムは始まるが、いやあ、速い。
 先日聴いたバーンスタインのウェーバーの舞踏への勧誘も速かったが、こちらはしょっぱなから速い。
 行進曲もへったくれもない飛ばしようだ。
 ただし、中間部での有名な旋律はゆっくりめで演奏する。
 その分、一層この旋律の美しさは際立つが、しかしやっぱり速過ぎだなあ。
 で、この速さは続く第2番から第5番でもそう。
 第4番と第5番で中間部をゆっくりと演奏するのも一緒だが。
 なんだか一枚のLPに諸々押し込むために巻いているんじゃと思えるほど。
 でも、そうは言いつつもこの第1番は繰り返し聴いてみたくもなる。
 それにしても、このテンポで乱れないロンドン・フィルはやっぱり達者なオケだと感心した。
 『インドの王冠』でも緩急のコントラストははっきりとしているが、こちらは威風堂々のようなある種脈絡のなさとは違い、音のドラマにそった速さであり遅さ。
 ときにあらわれるインドっぽさが、なんだかオリエンタリズム全開で今となってはどうにも気恥ずかしい。
 まあ、ジョージ5世とメアリー王妃のインド皇帝と皇后戴冠を祝するという意図そのものが今となってはなんとも受け入れにくいものでもあるのだけれど。
 というか、そもそもエルガー自身が帝国主義期のイギリスを象徴するような作曲家なのだ。
 『オリエンタリズム』の著者で今は亡きエドワード・サイードと深い親交のあったバレンボイムはそこらあたりをどう考えているのか。
 イスラエルでワーグナー演奏を積極的に行ったバレンボイムだけに、非常に興味がある。
posted by figarok492na at 23:20| Comment(0) | TrackBack(0) | CDレビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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