1723年にドイツのケーテンで生まれた作曲家カール・フリードリヒ・アーベルは、のちにイギリスに渡ってヨハン・クリスティアン・バッハとともにバッハ=アーベル・コンサートを主催し、幼い頃のモーツァルトにも影響を与えた。
そのアーベルにとって後期の作品にあたる交響曲を集めたアルバム<ACCENT>を聴く。
演奏はマルティン・ヨップが指揮するピリオド楽器オーケストラ、マイン・バロックオーケストラ。
収録されているのは、いずれも3楽章形式、ハ長調、変ロ長調、ニ長調、変ホ長調、ニ長調の5曲で3曲目のニ長調のみ協奏交響曲で、全て世界初録音になるそうだ。
古典派の規矩に則りつつ、一曲ごとの仕掛けも施されており、明快かつ軽やかな音楽に仕上がっている。
どちらかというと管楽器は補助にまわることが多く、弦楽器主体となるのには、アーベルが弦楽器のバリトンの開発者であることや、ヴィオラ・ダ・ガンバの名手として知られたこととも関係しているかもしれない。
もっとも印象に残ったのは、5曲目のニ長調。
モーツァルトを思い起こさせる旋律が魅力的だし、第2楽章ではフルート(フラウト・トラヴェルソ)も聴かせ場がある。
同じニ長調の協奏交響曲は、ヴァイオリンとオーボエ、チェロのソロの掛け合いが愉しい。
若干チェロの独奏にたどたどしく聴こえる箇所があるのは、作曲当時の楽器を再現したピリオド楽器だとエンドピンがないので、両足に挟んで演奏しなければならないためだろう。
楽器の掛け合いでいえば、変ロ長調の第2楽章のオーボエとホルンのそれもチャーミングだ。
ヨップ指揮のマイン・バロックオーケストラは精度の高い演奏で、アーベルの音楽を的確に再現していた。
それにしても、こうやって古典派の作曲家の作品を聴くと、ハイドンやモーツァルトと彼らを分けるのは何かということについて考えざるをえない。
もちろんハイドンやモーツァルトの後期の交響曲となれば、楽曲の洗練度や構成力(4楽章形式への移行)、旋律の魅力といった点でやはりその差は歴然としている。
だが、初期から中期の作品に比べればそれほど遜色があるものではないと強く思う。
そういえば、少し前までアーベルの交響曲集作品7の6曲目はモーツァルトの交響曲第3番と誤って認識されていたのだった。
2024年01月20日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック