独奏チェロをドン・キホーテに、ヴィオラをサンチョ・パンサに配し、リヒャルト・シュトラウスはおなじみセルバンテスの『ドン・キホーテ』を大管弦楽のための交響的絵巻に仕立て直した。
そこには、この作曲家らしい皮肉やあてこすりが仕掛けられているが、それより何よりオーケストラを聴く妙味に満ち溢れている。
かつて親交のあったセルにとって、リヒャルト・シュトラウスはまさしく十八番と呼ぶに相応しい作曲家の一人だ。
この『ドン・キホーテ』でも、セルは抜群のオーケストラ・コントロールで精度の高い音楽を聴かせる。
セルは室内楽的なアンサンブルをオーケストラに求めたというけれど、まさしくクリーヴランド管弦楽団は室内楽的なまとまりのよさを見せて過不足がない。
先日聴いたロッシーニの序曲集の少々粗さの残る演奏が嘘のようだ。
1960年というからもう60年以上前の録音になるというのに、全く古さを感じさせない。
また、ピエール・フルニエの気品があって出しゃばらないチェロ独奏も素晴らしい。
(ちなみに、ヴィオラ独奏はエイブラハム・スカーニック。クリーヴランド管弦楽団の首席奏者だ)
聴き応え十分なアルバムである。
2024年01月15日
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