今年2024年はブルックナーの生誕200年目の記念すべき年。
そのアニバーサリーイヤー中に彼の交響曲全11曲の全ての稿を録音しようという、CAPRICCIOによる絶後ではないかもしれないが空前の企画のうち、先ごろリリースされたばかりの交響曲第1番(第1稿/レーダー版)を聴いた。
演奏は、マルクス・ポシュナー指揮リンツ・ブルックナー管弦楽団。
ブルックナーにとって第1番は、第00番と呼ばれることもある習作のヘ短調といわゆる第0番の間に作曲された交響曲で、初稿として扱われるリンツ稿と改訂の加わったウィーン稿が知られるが、今回録音されたのは、リンツ稿にも含まれる改訂作業の要素を極力除去しようと試みられたトーマス・レーダーによる校訂版。
と、ここまで書いてもうややこしい…。
が、聴いてみると、これは実に面白い!
ワーグナーや初期ロマン派からの影響はもちろん色濃いし、オーケストレーションの未熟さもあってやたらとぎくしゃくしたり、唐突に聴こえたりする部分も多々ある。
ところが、そうした均整のとれなさがかえって非常に斬新な音楽に聴こえてもくるのだ。
ポシュナーの見通しがよくて前へ前へ進む音楽づくりがまたそれによく合っている。
第1楽章終盤の追い込みや、第3楽章の強弱緩急の大胆なコントラスト。
一方で、第2楽章の瑞々しい抒情性も捨て難い。
リンツ・ブルックナー管弦楽団もそうしたポシュナーの音楽づくりによく応えていた。
ブルックナーイヤーだからこそのアルバムで、これは聴いておいてよかった。
2024年01月12日
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