イーヴォ・ポゴレリチが弾いたモーツァルトのアルバム<DG>を聴いたあとでは、ノリントンとチューリッヒ室内管弦楽団が演奏がどうにも淡泊というか、淡薄なものに聴こえて仕方ない。
もちろん、ポゴレリチの演奏が重たくてずしんと圧迫してくるようなものでないことは言うまでもないだろう。
1曲目、ゆっくりと、そして翳りを持って弾き始められた幻想曲ニ短調K.397が長調に変化する部分にまず心を掴まれた。
続く、ピアノ・ソナタ第5番は基本的に快活に流れていくが、ここぞというところで躊躇うかのように音楽が遅くなる。
それが非常に効果的だ。
最後のトルコ行進曲でおなじみピアノ・ソナタ第11番では、第1楽章の変奏曲が圧巻だ。
一つ一つの変奏ごとに音楽の表情がころころと変わっていく。
それも無理なく。
とても密度が濃い。
逆に、終楽章のトルコ行進曲はある意味ノーマルに聴こえる演奏。
速いテンポで音楽は進んでいく。
ただし、トルコ行進曲を意識した部分では、そのリズムが強調される。
そして、全曲が終わり、すべてが過ぎ去ってしまったものさみしい気持ちが残る。
実に美しい演奏だった。
2024年01月08日
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