つくりがつくりだけに、ボレロまでくるといわゆる爆演、力任せのそれいけどんどん的な演奏もありっちゃありだが、基本的にラヴェルの作品、ことに管弦楽曲の場合、旋律と楽器の重なり合いなど精緻に組み立てられた美的均整が肝心要なわけで、どうしても精度の高い演奏を求めたくなる。
その点、1970年代のピエール・ブーレーズこそ、そんなラヴェルにまさしく打ってつけの指揮者だった。
完璧とまでいってよいほどの徹底した楽譜の解釈と、それを実際の音として再現してみせるオーケストラ・コントロール。
ニューヨーク・フィルを指揮して録音した海原の小舟、高雅にして感傷的なワルツ、組曲『クープランの墓』<SONY>もまた、そうしたブーレーズとラヴェルの付きのよさを示す最高の実例の一つだろう。
きらきらと輝く海原の小舟、タイトル通り高雅にして感傷的で、最強音でも濁らない高雅にして感傷的なワルツ、そして個々の楽器としても、アンサンブルとしても精妙で、緩急自在なクープランの墓。
音楽ってこんなに美しいのか、美しく演奏できるのかと感嘆するほかなかった。
LP1枚分で40分ほどの収録時間だが、全く惜しくない。
サブスクだからでなくて、もしこれがLPだろうとCDだろうときっとそう感じるはずだ。
だいたい、1時間だろうが2時間だろうが、つまらないものを聴かされるならそれは苦痛以外の何物でもない。
そしてそれは、音楽ばかりでなく、演劇や映画、文章にも通じることだと僕は思う。
2024年01月04日
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