2020年09月21日

第28次笑の内閣『東京ご臨終〜インパール2020+1〜』

☆第28次笑の内閣『東京ご臨終〜インパール2020+1〜』

 作・演出:高間響
(2020年9月21日13時開演の回/THEATRE E9 KYOTO)


 COVID19。
 いわゆる新型コロナウイルスの影響もあって半年以上ぶりの観劇となった、第28次笑の内閣『東京ご臨終〜インパール2020+1〜』では、それこそコロナ禍何するものぞと東京オリンピックに血道をあげる東京都知事らと、第二次世界大戦中にインパール作戦を狂行した牟田口廉也らを重ね合わせつつ、この日本という国で合理的な判断が上意下達や情実の組織力学、空虚な精神論によって無視され、排除されていく様が克明に描かれている。
 前回の配信公演『信長のリモート・武将通信録』での経験も活かした、ZOOM会議風の設定(前面にアクリル板を張った正方形のマス目上段3下段3、総計6つの中に椅子と机が置かれ、演者はその中で「ほぼ」演技を行う。今年51歳となった当方にとっては、ZOOMというより子供の頃に放映されていた『うそつきクイズ』や『クイズスクエア』、『逆転クイズスーパービンゴ』を思い起こす趣向である)が、そうした状況の歪さや滑稽さをまずもって象徴していた。
 とともに、そこは笑の内閣・高間君のこと、学生時代に歴史学を専門に学んだことからくる「歴史認識」(よくも悪くも柳沼昭徳さんと大きく違う)やトリビアルな知識の披瀝、それより何よりマイク片手の歌うパフォーマンスに細かいくすぐりとエンターテイメント性にも欠けていない。
 加えて、『そこまで言わんでモリエール』と同様、演劇的な仕掛けがいくつか施されていることも指摘しておかなければなるまい。
 佐藤幸徳他役の髭だるマンや牟田口廉也他役の熊谷みずほはじめ、ベテランの藤原大介、西分綾香、由良真介、和泉聡一郎の演者陣も、そうした作品の結構をよく押さえて硬軟ふり幅の広い役回りを丹念に演じ切った。
 また、日替わりゲストのユリオカ超特Q(面識はないものの、学部は違えどちょうど同じ頃立命館大学に学んでいた関係。学園祭でのプロレス同好会の勝負でインパクトあるべしゃりをしていたのが、彼であったことを今頃にして気がついた)も、さすがはプロの返しで会場を沸かせた。

 と、ここまでは公式見解。
 だし、この作品のお行儀よい感想でもある。
 ただ、正直言うと、僕はこの作品、特に終盤にいたたまれない想いをしたことも事実だ。
 なぜなら、この作品の大きな肝が、高間君と夫人との婚姻関係の破綻を直截に表すことにあるからである。
 もちろんそこは高間君のこと、機械仕掛けの「神」を登場させるなど、単なる真情吐露に終わらせぬ工夫もしてはいたけれど。
 やはりどうしても、曰く言い難い感情を抱いてしまうことは否めない。
 そして、2013年6月9日に京大西部講堂で開催された笑の内閣プロレス復活特別公演『高間家 平井家 結婚お披露目パーティー』に足を運んだ人間だからこそ、高間君のこの一年のあり様や心の内を慮る反面、夫人のゆき枝さんやその母親側から見たら果たしてこれはどうなのかといったことや、高間君と彼自身の母親との関係、さらには高間君とゆき枝さんを仮託された髭君や熊谷さんの内なるせめぎ合い(きちんとそうした回路が働くだろうと信頼できるから、二人には好感を抱く)にまで思いが到ってしまい、観ていて少々辛かった。

 その意味で、アフタートークでのこの部分に関するユリオカさんのやり取り、高間君への適切な突っ込みには大いに笑い、解放され開放される気分となった。
 本間龍のゲスト出演が取りやめになったことを残念に感じる向きもあるかもしれないが、僕はユリオカさんとのアフタートークで本当によかったと強く思う。
 流石は、同じ時期に立命館大学に通った人だけはある…。
 いけないいけない、こういう意識がインパール作戦を生み出す根底にあるんだと描かれていたじゃないか。
 忌むべし忌むべし。

 火曜日まで公演開催中。
 実は、映像、というか写真で当方もほんの少しだけ出演していますので、ご都合よろしい方は直接なり配信なりでぜひぜひご高覧のほどを!!!
posted by figarok492na at 17:25| Comment(0) | 観劇記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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