☆ルドルフvol.7『隕石の栞』
脚本・演出:筒井加寿子
(2020年2月23日14時開演の回/THEATRE E9 KYOTO)
子供の頃から星を見るのが好きだ。
冬の風呂上がり、夜空の星を飽かずに眺めていて、何度風邪をひきかけたことだろうか。
それから年を経るごとに、宇宙とは? とか 生命とは? といったことを徐々に考えるようになっていった。
そんな人間にとって、ルドルフのvol.7『隕石の栞』はど真ん中もど真ん中。
自分の興味関心とどんぴしゃの内容だった。
ひょんなことから共同生活を送る先生こと柴本(二口大学)と要(森脇康貴)のもとに、行方不明の父親を捜索する栞(渡辺綾子)という女性が突然現れる。
実は、柴本にも要にも複雑な事情があって…。
といった展開の『隕石の栞』だけれど、感情表現のギアは大きく入るものの、はじまってしばらくは、ところどころおおと思わせられたり、くすっとさせられたりしつつも、物語そのものは激しく動かない。
だが、そうした布石が俄然意味を持ってくるのが中盤以降だ。
中でも、筒井さんの持つ思考嗜好、誉め言葉としてのきちがいっぷりも全開となった幻想的なシーンには、そうそうこれこれと大いに頷いたし、大いに心も動かされた。
そして、それを、はじめは目につかなかった星々がどんどん光り輝き出して、遂には夜空一面に拡がっている様に例えても過言ではないだろう。
加えて、こうした表現の構成が、ルドルフのvol.0『結婚申込み』(2008年11月、チェーホフ作・筒井さん演出)ですでに試行されていたことを改めて思い起こし、この間の筒井さんの変化と成果を強く感じたりもした。
2010年5月4日の京都芸術センターの明倫ワークショップで、ルドルフがvol.2の『授業』(イヨネスコ作・水沼健演出)の公開稽古を行った際、所要で参加できなかった永野宗典の代役をその場で志願したのが、当時イッパイアンテナに所属していた渡辺綾子だった。
それが引き金となって、翌年6月のルドルフvol.3『ルドルフのまっしろけでゴー』で渡辺さんは、筒井加寿子自身が投影された娘役を演じることとなる。
今回の『隕石の栞』でも、渡辺さんは筒井さん自身の一端が仮託された役回り・栞を演じている。
その意味で、これは筒井さん自身の物語である。
しかしながら、それとともに、栞はまた、演劇的にも紆余曲折を続けてきた渡辺さんの姿とも重なる。
つまり、これは渡辺さん自身の物語でもある。
いや、それだけではない、今回、筒井さんが二口大学、森本研典、飛鳥井かゞり、黒川猛、森脇康貴という演者陣を集めたのも、彼彼女らが「ずっと一緒にやりたかった俳優さん」(公演プログラムより)だったのは当然として、この面々がなんらかの痛切、切実な体験や大きな転機を重ねてきたからでもあったのではないかと僕には思えてならない。
そう、これは彼彼女ら自身の物語でもある。
そして、そうだからこそ、この『隕石の栞』は私、私たち自身の物語にもなったのではないか。
いずれにしても、崇拝と支配の狭間からでは生み出されることのない共同作業、作品世界を愉しんだ。
ああ、面白かった!!!
2020年02月23日
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