2020年01月26日

下鴨車窓『散乱マリン』

☆下鴨車窓『散乱マリン』

 脚本+演出:田辺剛
(2020年1月26日14時開演の回/京都芸術センター講堂)


 2016年8月の『旅行者』以来だから、約3年半ぶりに下鴨車窓の公演を観た。
 作品は、『散乱マリン』。
 ここは自転車の保管場所か。
 冒頭、ばらばらになってごちゃごちゃとなった自転車の部品を目の前に、女性(福井菜月)が自分の自転車の残骸を必死に探している。
 付き従う職員(北川啓太)は、実に申し訳なさそうだ。
 と、不穏な犬の鳴き声が響き、二人は一目散に逃げ始める。
 ところがやって来たのは、芸術家のアシスタントたち。
 せっかくのオブジェの材料がカラスどもらに奪われてしまうと言う…。

 2014年に書かれた『scattered(deeply)』を改題した作品で、自分にとって大切な自転車をなんとか元通りにしようとする女性には相手が野犬に見えてしまい、一方、芸術作品を生み出そうとする人々には相手がカラスに見えてしまう。
 もともと、東日本大震災による様々な分断を強く意識した設定なのだろうが、5年の歳月を経て、その震災が一つの引き金となった現在の諸状況がそこに大きく重なって、実にアクチュアリティに富んだ作品となっている。
 とともに、記憶(クロノス)への留意、マジックリアリズムと言ってしまうとかえって陳腐になってしまいそうな、リアリズムに基盤を持ちながら幻想性や寓話性を効果的に取り入れた展開、詩的言語の挿入等々、田辺さんの一連の作品に通底する諸要素がより強靭に、かつ柔軟性を失わない形で進化を遂げている点も忘れてはなるまい。
 加えて、上述したモティーフを表現するに際して、登場人物間の距離感、齟齬、志向嗜好の違いを巧みにクロスさせていたことにも大いに感心した。

 田辺さんの柔軟性、進化は、座組み・配役という面にもよく表れているのではないか。
 シリアスな側面からコメディエンヌ性とふり幅の広い役回りを的確にこなした福井さんをはじめ、ベテランの西村貴治、北川君、澤村喜一郎、岡田菜見、コメディリリーフの西マサト国王、坂井初音(この役は、かつてだったら飯坂美鶴妃が演じたかもしれない)という演者陣も、個々の特性を活かして田辺さんの意図に応える努力を重ねていた。
 そして、トリックスターのF・ジャパン。
 ずるいや。

 3月には広島公演、4月には津での公演が予定されているとのこと。
 ご都合よろしい方はぜひ。

 ああ、面白かった!!!
posted by figarok492na at 17:25| Comment(0) | 観劇記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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