2019年10月20日

宗岡茉侑のハムレットマシーン

☆宗岡茉侑のハムレットマシーン


 作:ハイナー・ミュラー
 演じる人:宗岡茉侑
(2019年10月20日/alternative space yuge)


 2009年の8月というから、もう10年も前になるのか。
 高田ひとしがハイナー・ミュラーの『ハムレットマシーン』を構成・演出した劇団tabura=rasa第二回公演『儀式』を観たのは。
 あのときは、高田君たちの強い表現・表出欲求は感じつつも、それに対する精度の不足がどうにも目について、非常に厳しい感想を抱いてしまった。
 ただ、だからこそ未だに心に刺さった棘というのか、忘れられない公演の一つともなっていて、今日、宗岡茉侑が演じる『ハムレットマシーン』を目にしてすぐ思い出したのも、そのときのことだった。

 alternative space yugeは、下鴨高木町というから元のアトリエ劇研や人間座スタジオの近く、北大路通に面したコンクリート打ちっ放しのうなぎの寝床式のスペースだが、宗岡さんはそこにミラーライトや額縁を釣ったり、絨毯を敷いたり、キャンドルを用意したりと、西洋風の室内に仕立てていた。
 展示にも使われるアートスペースらしく北大路通に面する側はガラス戸で開放されているし、入退場も自由ということだったのだけれど、僕が会場に訪れたときには(終演1時間ほど前)、とても密度が濃いというか、切迫しているというか、何かクローズドされている印象を受けた。
 で、最後の最後に訪れたこともあって、これまでどのような上演が行われていたのか、把握できていないとろこもあるものの、『ハムレットマシーン』の断章(というか、この作品自体が断章で構成されている)を宗岡さんが適宜発するとともに、宗岡さんが手を加えたテキストを観客に手渡し、彼女と演じることを促すというスタイルとなっていた。
 宗岡さんは、僕がこれまで観てきた彼女の演技の中で最も…。
 などとそれらしいことを書き連ねているのだが、正直、僕自身の中では今もって曰く言い難い感情にとらわれ続けている。
 と言うのも、僕が入ってすぐに演じることを促されたあるお客さんが激しい感情的な反応を示した(その理由はある程度承知している)上に、次に指名された市川タロ君がそれを拒んだあとに、僕がテキストを演じることになったからだ。
 そのプロセスがある分、それじゃあここはやるのが筋だろうという想いもそうだし、宗岡さんとの距離をどうとるかという感情もそうだし(当然そこでは、演劇という枠組みばかりでなく、プライベートな部分での宗岡さんのあれこれが蘇ったりもする)、テキストをどう読んでみせようかよいう自己顕示欲・自意識との対峙もそうだし(中村伸郎風にやろうとしたがすぐに諦めて、彼女に近づけようとして、でもやはり自分の中でそれは違うなと思ったり)、それらすべてをどう今後の創作活動に活かそうかという物書きとしての観察もあったり、それはどうにも浅ましいことだなと省みたり…。
 結局、意識無意識両面で、今回の出来事が僕自身の作品に反映されることだけは間違いないことだが。
 いずれにしても、10年前の『儀式』同様、今回の宗岡さんによる『ハムレットマシーン』もまた僕にとってとうてい忘れることのできない公演になるだろう。
posted by figarok492na at 19:46| Comment(0) | 観劇記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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