2019年10月06日

少し怪しい祭り・亥

☆少し怪しい祭り・亥

(2019年10月6日15時開演の回/あとりえミノムシ)


 昨年に続いて、あとりえミノムシまで少し怪しい祭りを観に行って来た。
 ちなみに今年は亥年なので、タイトルにきちんと亥の文字が付いている。

 で、よいとなの演劇作品に、JIJOの人形劇、尾上一樹のマイムというラインナップは前回と同じなんだけど、連日お昼の回は、尾上さんが振付・構成に徹し、maz(黒木夏海、豊島勇士)の二人がマイムを演じる。
 黒木さんも豊島君もいいむろなおきさんにマイムを学んでいるから、尾上さんとは同門ということになる。

 まずは、開演前に前座としてD.D.コーヒーのオープニングアクトが行われる。
 ラヴェルのボレロにのせて、ダンスを挟みつつコーヒーをいれていくという内容で、ついついボレロに耳が行ってしまいそうになるが、そこは踏ん張ってアクトのほうに集中する。
 スネアドラムのリズムにあわせて動く足首が美しかった。

 さて、開演だ。
 よいとなの『あしたもあそぼ』は、メンバーの殿井歩(作・演出)と申芳夫のほか、久貝亜美、田辺泰信の出演。
 いずれも濱口竜介監督の映画『ハッピーアワー』の出演者であり、勝手知ったる仲といって間違いはない。
 冒頭、銃撃戦すら繰り広げられる三人組の破滅的な旅路におやっと思っていると、これは「つかみ」の部分。
 どうやら求職中の彼氏が毎晩真夜中まで観続けている映画のDVDに影響された、彼女の夢という趣向らしい。
 ということで、その後は舞台に現れない彼氏の誕生日を祝おうとする彼女やその仲間たちの淡々とした会話が続いていく。
 もちろん、そこは殿井さんのこと、途中脱臼脱線飛躍はあるし、たぶん子供のお客さん向けの工夫も仕掛けられているが。
 そして、劇中劇や使用されている歌からアメリカン・ニューシネマや、そこから派生したと思しき日本のテレビドラマ『俺たちの旅』や『俺たちの朝』をすぐに思い起こしたことは言うまでもない。
 言うまでもないけれど、ここで描かれているのはノスタルジーの世界なんかではちっともなくて、僕らが直面している今現在の諸々である。
 ラスト、舞台の上に転がる三人の姿が切実で胸に迫ってきて仕方なかった。

 続いては、JIJOの作・美術・操演による『ひだりうで』。
 「私」に対して、どうして自分が左腕を失ったかをおばあさんが語っていくという内容で、昔話や御伽噺に共通するような、原初的な悪意というか恐怖、リアルを越えたリアルさを感じた。
 人形劇と上述したが、作品の多くは、砂(?)と映写機を利用した映像を中心に描かれている。
 だからこそ、かえって終盤の人形の動きがとても印象に残る。
 「私がいつか見た生々しい夢の話」と公演パンフレットにはただ一行書かれているが、この『ひだりうで』もまたどこかで必ず今現在の僕らと強く結び付いているはずだ。

 最後は、mazの二人が演じた尾上さん振付・構成による短編マイム二編(音源が藪本浩一郎のアコーディオン演奏他)。
 百聞は一見に如かずだし、百文は一見に如かずで、これはもう直接目にして確認してもらいたいわけで、正直なんとももどかしいのだけれど、尾上さんのマイムが自らの生活に根ざしたというか、地に足のついたというか、日常性に裏打ちされて人柄がよく出たものだとすれば、mazの二人のマイムは、より形而上的というか非日常的というか、よい意味で無機的というか、マイムがそこにまずあるような感じがした。
 黒木さんと豊島さんは一糸乱れぬよく合った動き、一編目の『オルゴール・ノイズ』や二編目の『Junction Junky』の「夢に落ちる」等々、無声映画を観ているかのような美しさだった。
(一つには、ヴァレンチノかキートンかといった、豊島君の彫りの深い容貌から受ける印象も大きいのかもしれない)

 と、さらに怪しさが増し増した少し怪しい祭りを今年も存分に愉しみました。
 ああ、面白かった!!!
 そして、来年の開催も心待ちにしています!!!
posted by figarok492na at 18:49| Comment(0) | 観劇記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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