2019年10月05日

まめだのきかく リーディング公演『カラシニコフ不倫海峡』

☆まめだのきかく リーディング公演『カラシニコフ不倫海峡』

 出演:西村花織、藤原大介
 演出:山口浩章
 作:坂元裕二
(2019年10月5日14時開演の回/KAIKA)


 西村花織の演技に初めて接したのは、2011年2月の第一回京都学生演劇祭における月面クロワッサンの『どっちみち阪急河原町』(作道雄作・演出)だった。
 時の流れは速いもので、あれからもう8年もの歳月が経って、阪急の河原町駅など先日京都河原町駅に改名までしてしまった。
 その8年間、紆余曲折はありつつも京都小劇場で演者として長く活動を続けてきた西村さんが、この度「自分のために芝居しよう」とまめだのきかくなる企画を立ち上げた。
 で、いっとう最初の公演となる今回は、劇団しようよと共に西村さんが現在所属する劇団飛び道具の山口浩章、藤原大介両先輩の胸を借りて、『カラシニコフ不倫海峡』なる二人朗読劇のリーディング公演に挑んだのだけれど、まずもってこの本の選択で八割方芝居勝負に勝ったと評しても過言ではないだろう。

 地雷除去のボランティアのためにアフリカへと旅立った妻が、少年兵のカラシニコフ銃で撃たれて死んだ。
 はずが、実はその妻は生きている、しかも自分の夫と暮らしているとのメールが男のもとに届く。
 不審の念を抱きはするものの、どうしても相手の女とやり取りを重ねる男。
 そのうち男と女の間には、曰く言い難い感情の変化が訪れて…。

 全篇メールのやり取りで人の心の動きを描いていくといえば、マット・ボーモントの小説『e.』<小学館>や土田英生のリーディング劇『Re;』をすぐに思い出すが、ときにシュールさすら覚える滑稽なくすぐりをまぶしながら、社会性を十二分に持ち、なおかつ人の心の動きを丁寧に追い、人の心の謎を解き明かしていくこの『カラシニコフ不倫海峡』も面白さ、愉しさにおいて負けてはいない。
 かつてのトレンディドラマから時間を置いて、近年の『カルテット』や『anone』等、意欲的な作劇を続けている坂元裕二だけはある。
 また、登場人物の掛け合いの緩急強弱に目配り耳配りを行いつつ、山口さんは「リーディング劇」に相応しい劇場的なアクセントを加えていた。
 一方、演者陣もそうした作品によく副った演技を行っていて、全く観飽きない聴き飽きない。
 藤原さんの中年男のやるせなさ、おかかなしさの付き具合は言うまでもないだろうが、対する西村さんも作品や役柄に対する真摯さで今回の企画の意図を改めて強く感じさせる。
 例えば、感情が激しく前面に出る場面での表現など、これからの課題となる部分もなくはないだろうけれど、西村さんにとって諸々の課題がはっきりとするという点もまめだのきかくを始めた目的の一つだろうし、そうした課題云々を越えて痛切さ、切実さが伝わってきたことも忘れてはなるまい。
 それより何より、かつてのよい意味では柔らかいけれど、裏返すとどこかふらふらへらへらした感もないではなかった西村さんが、こうして舞台にすっくと立っていることを目にできただけでも、僕には嬉しくて仕方がなかった。

 いずれにしても、目にし耳にして大正解の公演だった。
 ああ、面白かった!!!
 公演は、明日のお昼にもう一回。
 ご都合よろしい方はぜひ!!!
posted by figarok492na at 16:24| Comment(0) | 観劇記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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