☆ほそゆきのパイロット版17
「でさあ、本題なんだけど」
佐田がわざとらしく切り出す。
「シナリオのことやろ」
「そうそう」
と言って、佐田がA4の用紙の束を詠美に突き出す。
「わっちゃあ、もしかしてこれ全部」
「大丈夫大丈夫、一枚二十字×十行だし」
「半ペラか。それでもだいぶん量があるで」
そう言いながら詠美は、しぶしぶ佐田が書いたシナリオに目を走らせ出す。
「半ペラって」
「知らんなら、自分で検索してみいさ」
という詠美の言葉に、佐田はすぐにスマホを取り出す。
「そうだそうだ、二百字詰めの原稿用紙のことだ。前、伊地知先生が教えてくれたんだよね」
ようやく佐田は思い出す。
「しっ、静かに。今読み出すところなんやから」
「ありがとうございます」
と頭を下げて、佐田は右手を突き出す。
そして、ゆっくりと手刀を切った。
2019年05月08日
この記事へのコメント
コメントを書く