☆笑福亭笑利歴史落語公演 平賀源内
出演:笑福亭笑利さん
(2018年12月21日19時開演/瑞泉寺)
今では泣いてばかりいる西田敏行だけれど、正直昔は怖い役者の一人だった。
あいにく出だしの頃の青年座の舞台は観ていないが、吉村公三郎監督の『襤褸の旗』はもちろんのこと、ある程度有名になったあとでさえ、彼の顔付きには飢えた山犬のような鋭さがあった。
例えば、『特捜最前線』の高杉刑事にしても、『西遊記』の猪八戒にしても、池中玄太やサンキュー先生にしても、『おんな太閤記』の豊臣秀吉にしても、コミカルな演技を披瀝しつつも、目が怖い、顔が怖い。
そんな彼がソフトタッチに変化し始めたのは、まずもって『釣りバカ日誌』のハマちゃん、そしてナショナル時代劇『翔んでる!平賀源内』の平賀源内あたりではなかろうか。
残念ながら、『キラキラ音頭』というテーマ曲がいっちゃい過ぎていたか、もしくはコミカルな造りが敬遠されたか、それより何より水戸黄門や大岡越前といった権威主義まずありきの固定視聴者には平賀源内の魅力が伝わらなかったか、いずれにしても1シーズン限りで番組自体が翔んで行ってしまった『翔んでる!平賀源内』だが、いつもは悪役ばかりの川合伸旺が善玉を軽妙に演じていたこととともに、西田敏行の路線変更を窺わせたドラマとして強く印象に残る。
ただ、当方より少し上の世代の方々となると、平賀源内といえば早坂暁脚本、二代目クイズタイムショック、「くどい、くどいぞ忠相!」の怒りん坊将軍山口崇が源内を演じた『天下御免』ということになるらしく、今夜、笑福亭笑利さんがお客さん方に「平賀源内ってどんな人か知ってますか?」と話題を振った際に出た答えも、やはり『天下御免』のほうだった。
そう、この度笑福亭笑利さんが京都三条木屋町は瑞泉寺(松屋のすぐ隣)で始めた歴史落語公演は、まさしく笑利さんとお客さんが一緒に創り上げていくスタイルがとられているのである。
で、その一回目に笑利さんが取り上げたのが、何を隠そう、いやちっとも隠していない平賀源内なのだ。
江戸時代中期、マルチな人として活躍した平賀源内だけれど、名前ばかりが先にきて、例のエレキテル以外は今一つ何をやった人だかわからない。
そんな源内の人となりについて、お客さんと共に確認していこうというのが、今回の大きなテーマとなっている。
だから、落語以外のパートでは、お客さんからの反応質問合いの手も大いにウェルカム。
さらに、紙切りや『鯉つかみ』などこれまでも手先の器用さを発揮してきた笑利さんは、源内が少年時代に発明したといわれるお神酒天神(顔が赤く変わる掛け軸)やエレキテルのレプリカを自作したり、ビニールのカップとアルミ箔でエレキテルに使用されたライデン瓶(静電気を溜めた上で電気を発電させる)と同じ仕組みを造ってバチバチと実際にやってみたりと、お客さんを巻き込んでいく。
もちろん、そこは落語公演なので、きっちり自作の新作歴史落語のネタおろしも行う。
杉田玄白や田沼意次といった歴史上の人物を織り込みながら、江戸に出て高松藩から「仕官お構い」(他藩だろうが幕府だろうが、雇われてはならぬという命令)となった平賀源内の姿を扱った話で、あえて悲惨な晩年を描かなかった点など笑利さんの想いがよく伝わってきたし、笑利さんお得意の(と)ぼけたキャラクターが出て来てお客さんの笑いを掴んでいた。
あれやこれやと一手に引き受けて笑利さんも大変そうだったが、お客さんが40人を超えた上に、ご住職の中川龍学さん(中川学名義でイラストレーターとしても活躍。会のチラシのイラストも中川さんによるものだ。実は、お話をしたのは今夜が初めてだったが、『父のこころ』の谷口正晃監督のご友人で、その際お世話にもなっていた)も非常に積極的だし、お客さんとして来場されていた磯田道史先生が時折助け船を出すなど、笑利さんの繋がりの豊かさを強く感じる会でもあった。
ぜひとも長く継続してもらいたい。
ああ、面白かった!!!
そうそう、アンケートで好きな歴史上の人物として堺幸彦と書いたけど、これは堺利彦の間違い。
うっかりして、堤幸彦とごっちゃにしてしまった。
あと一人は、足利義昭。
我ながら、らしい人選ではある。
あっ、書き忘れていた。
休憩中、目薬の木を煎じたお茶が笑利さんから振る舞われたんだった。
非常に苦いものの、なんだか癖になる味だ。
まずい、もう一杯!!!
2018年12月21日
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