☆日本センチュリー交響楽団 センチュリー豊中名曲シリーズVol.6
指揮:鈴木秀美
独奏:鈴木秀美(チェロ)
座席:1階C列17番
(2018年5月26日15時開演/豊中市立文化芸術センター大ホール)
ピリオド楽器のチェロ奏者で指揮者としても活躍中の鈴木秀美が日本センチュリー交響楽団に客演するというのだから、これはピリオド・スタイル好きにはたまらない。
なんとかスケジュールの調整がついたこともあり、センチュリー豊中名曲シリーズを聴きに豊中市立文化芸術センターまで足を運んだ。
プログラムは、ボッケリーニのチェロ協奏曲ト長調G.480で始めて、モーツァルトの交響曲第35番「ハフナー」、ベートーヴェンの交響曲第8番が続くという鈴木さんらしいスタイルだ。
(ちなみに、オーケストラは第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが向き合う「対向配置」。今回は前から3列目という直接音中心の場所ゆえ、ホールの音響に関してはとやかく言えまい。鈴木さんのソロを間近で接することができたのは大きな収穫だったが)
一曲目は、上述した如くボッケリーニのチェロ協奏曲。
自らチェロの名手として鳴らしたボッケリーニだけに、技巧的見せ場(聴かせ場)がはっきりするとともに、陽性の中に微かに窺える翳りのようなものも興味深い。
鈴木さんのソロは、表面的な手わざでどうこうの域を脱した名優のモノローグを観聴きしているような感じで、第2楽章での歌いぶりが強く印象に残る。
鈴木さんと高校大学で同級生という荒井英治(首席客演コンサートマスター)率いる弦楽器のアンサンブルも、ソロをよく支えていた。
続いては、モーツァルトの交響曲第35番「ハフナー」。
両端楽章の力感、劇的な表現には、まさしく機会音楽、祝祭性に富んでいるなあと感じたのだけれど、だからといって鈴木さんがそれいけどんどん、猪突猛進の音楽づくりを行っていたわけでは毛頭ない。
その端的な現れこそ、細やかな表現が為された第2楽章だ。
音楽の持つ美しさが、あざとさを排しながらよく示されていてとても聴き心地がよかった。
休憩を挟んだ、ベートーヴェンの交響曲第8番も基本的にそれまでの二曲と同じスタンス、というか音楽に対する向き合い方によって再現されていた。
ベートーヴェンの第8番といえば軽めの交響曲と目されがちだが、例えば第1楽章の激しく重々しさすら感じる表現には、この作品が、それまでのベートーヴェンの交響曲の成果であるとともに、のちの第9番の予兆とでも呼びたくなってくる。
一方で、この第8番が第7番と対になる「リズム」を重視した作品であることもよく示されていた。
クラリネットやホルンをはじめ、ソロ・アンサンブル両面で日本センチュリー交響楽団の面々は鈴木さんの意図に副う努力を重ねていたのではないか。
アンコールは、再び鈴木さんのソロでハイドンの交響曲第13番の第2楽章。
クールダウンに相応しい、しみじみとした音楽だった。
と、土曜の午後に相応しいコンサートでした。
ああ、面白かった!!!
(そうそう、ファースト・ヴァイオリンのベテラン相蘇哲の風貌雰囲気が落語の名人師匠のようで、台詞は一切口にしなくていいので、そういった役で映画かテレビドラマに出演していただきたいと思ったのだった)
2018年05月26日
この記事へのコメント
コメントを書く