☆第14回座錦湯
出演:月亭八斗さん、笑福亭大智さん、露の新幸さん、桂りょうばさん
(2018年1月22日20時開演/錦湯)
東北関東では激しい雪となっているそうだが、なんとか京都は雨で留まった。
それでも気温はぐぐんと下がって厳しい寒さの夜となったものの、今夜も錦湯さんには常連さんやご新規さんとなかなかの数のお客さんが集まり、まずは重畳。
14回目となる座錦湯は、支配人の月亭方気さんが拠無い事情のため急のおやすみとなったが、おなじみ月亭八斗さんのほか、笑福亭大智さん、露の新幸さん、桂りょうばさんの四人の揃い踏みで、危うげなく乗り切った。
定刻20時頃に、八斗さん、大智さん、新幸さん、りょうばさんが登場し、各々簡単な挨拶をすませたところで、早速大喜利に突入。
大智さん仕切りの下、大喜利猛者のゴハさんが用意した難問と呼ぶべきお題に残りの三人さんが挑むということで、これは苦戦するかなと思っていたら、なんのなんの。
最近の話題をあっけらかんの気楽感と盛り込むなど、これはという解答が続く。
こうしたスタイルの大喜利は初めてというりょうばさんも、そこはリリパ等々でもまれただけあって、毒っけも辞さずにコンスタントな答えを披露していた。
大智さんはその名の如く大柄で、かつ軽妙な仕切り。
林業をやっていたときの山で毒キノコを食べたエピソードがおかしかった。
で、頃合いのよいところで大智さんが高座へ。
笑福亭仁智さんのお弟子さんである大智さんといえば上記の如く林業(伐採)をやっていたことで知られているが、ラジオ好きとしては、ABCラジオの『兵動大樹のほわ〜っとエエ感じ』で兵動さんのトークに準レギュラー的に登場していることをすぐに思い出す。
(終演後お声がけしたら、二人で何か会ができないかとお話していると教えていただく。これは愉しみだ!)
そんな大智さんはお子さんとのほんわかしたエピソードをマクラで語ったのち、本題の『看板のピン』を演じる。
誰か博打のいい相手はいないかと町内の若い衆が声をかけたのは、隠居と呼ばれる老人だった…。
というおなじみの古典だけれど、大智さんは軽快な流れで間のよい筋運び。
隠居の老人の渋い声も堂に入っており、お調子者が真似をする際の間抜けぶりとの対比も面白かった。
続いては、りょうばさん。
二回目となる錦湯さんだが、ここは雰囲気がいいのでまた来たいと思っていた。
それに大きな通りからちょっと入った錦湯さん辺りのちょっと静かで暗い感じも貴重だし、脇のトイレのところなど真っ暗…。
といった流れから本題の『稲荷俥』へ。
高津神社の門の辺りで客待ちをしている人力車夫に一人の紳士が産湯まで運んでくれと声をかける。
狐や狸が出るので産湯には行きたくないという車夫だったが、車賃をはずむとの紳士の言葉に思わず承知してしまい…。
大師匠の桂米朝さんを筆頭に、いわゆる米朝一門が得意とする噺の一つであり、りょうばさんは要所急所をよく押さえつつ強弱を巧くつけた口演で、後半、車夫が紳士の忘れていった財布の金で酒盛りをはじめようとする場面などには話がぱっと広がっていく感じがした。
枠の中できっちり仕上げていく部分と、それを踏み越えて大きく跳躍しようとする部分の駆け引きというか、変化の様が興味深い。
三席目は、八斗さんだ。
先日とある落語のレースで苦汁をなめた、以前錦湯さんでかけたこともあるが、せっかくお師匠の月亭八方さんに教わったネタでもあるので、この間の研鑽をぜひとも観てもらいたいと『野ざらし』を演じる。
もちろん、八方師匠とのやり取りに触れて笑いをとることも忘れてはいなかったが。
八斗さんといえば、まずは鼻にかかった女ぶりが板についていて、これはきっと小股の切れ上がったいい女なんだろうなと想像するのだけれど、もう一つ忘れられないのは、あほな男が釣り竿持ってさいさい節を歌うところ。
ここの盛り上がりが強く印象に残った。
トリは、今夜で二回目の出演となる露の新幸さん。
身近で起こったちょっとおかしいと思えるエピソードをマクラで披露し、本題へ。
お師匠の露の新治さん(その名の通り革「新」的な落語家さんである)の十八番といえる『狼講釈』をかけた。
前半は革新的、じゃない確信的に丁寧に話を進め、肝となる狼相手の講釈の部分ではここぞとばかり語り上げていた。
その脱臼ぶりには、筒井康隆の小説を思い起こしたほどだ。
(というか、たぶん筒井はこの噺にも影響を受けてるんじゃないのかな)
前回の『金明竹』同様、新幸さんの高座の流れのよさを愉しんだ。
と、大喜利に古典落語四席と予想以上に密度の濃い回でした。
ああ、面白かった!!
2018年01月23日
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