2017年11月08日

ルサンチカ『メザスヒカリノサキニアルモノ若しくはパラダイス』

☆ルサンチカ『メザスヒカリノサキニアルモノ若しくはパラダイス』

 脚本:松本大洋
 演出:河井朗
(2017年11月8日19時開演の回/ロームシアター京都ノースホール)


 ルサンチカが久しぶりに公演を行うというので、初日を観にロームシアター京都のノースホールまで足を運んだ。
 今回河井朗が選んだ作品は、松本大洋の『メザスヒカリノサキニアルモノ若しくはパラダイス』。
 漫画家として活躍する松本さんだが、この『メザスヒカリノサキニアルモノ若しくはパラダイス』は劇団黒テントからの依頼を受けて執筆したもので、岸田國士戯曲賞の候補作ともなっている。
(松本さんが当方と同世代の1967年の生まれな上に、2000年に書かれた本のため、河井君や若い演者陣にとっては若干古めのタームが多用されているかもしれない)

 四人のドライバーたちが集う古びたドライブインを中心に物語は進んで行くが、そこは『鉄コン筋クリート』の作者松本さんのこと、現実と非現実、虚と実、現と夢の世界が折り重なったり、急激に跳躍を果たしたりする。
 これまで寺山修司の『星の王子さま』や清水邦夫の『楽屋』、ヴェーデキントの『春のめざめ』、レイ・ブラッドベリ原作によるイトウモの『霧笛』を取り上げてきた河井君にとってはまさしくうってつけの題材と言えるのではないか。
 実際、より精緻さを求めたいというか、手探りさを感じる部分も少なくはないが、虚の側に重きを置いておもちゃ箱をひっくり返したような邪劇性が発揮される一方、透徹した抒情性も織り込まれていたし(その点で、これまでの一連の公演と同じく近藤千紘が重要な役回りを果たしていた)、それより何より、一縷の望みというと安い表現になり過ぎるかもしれないけれど、五里霧中の閉塞した状況の中でそれでも、そうだからこそこうして表現活動を続けて行くという切実さが強く表された公演となっていた。

 上述した近藤さんをはじめ、勝二繁、村上千里、御厨亮、中田凌輔、新藤江里子、牟田健の演者陣も、河井君の意図に沿う努力を重ねており、まずはその健闘を讃えたい。
 そうそう、帰りがけのエレベーターで女性のお客さんが公演のテーマ曲とでもいうべきある歌をずっと口ずさんでいたんだけれど、もうそれだけでしめたもんじゃないんだろうか。
 ああ、面白かった!!

 なお、京都公演は明日16時の回のみ。
 また、今月24日〜26日にはSTスポットで横浜公演の予定あり。
 ご都合よろしい方はぜひ。
posted by figarok492na at 23:15| Comment(0) | 観劇記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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