☆京都市交響楽団 第617回定期演奏会
指揮:広上淳一
独奏:ボリス・ベルキン(ヴァイオリン)
座席:3階LB1列5番
(2017年10月13日19時開演/京都コンサートホール大ホール)
サントリーホールでの第46回サントリー音楽賞受賞記念コンサートを成功裡に終えた広上淳一と京都市交響楽団だが、第617回定期演奏会もそうした両者の好調ぶりを証明する充実した内容となっていた。
一曲目は、ウォルトンの『スピットファイア』の前奏曲とフーガ。
英国空軍の戦闘機の開発を巡る映画『スピットファイア』の音楽の中から編曲されたもので、前奏曲ではシンフォニックに華々しく金管楽器が鳴り響き、フーガでは弦楽合奏が目まぐるしく交差するなど、ウォルトンらしさが十分に発揮された作品である。
京都市交響楽団は明快壮麗な、コンサートの開幕に相応しい音楽を聴かせた。
続いては、ロシア出身のボリス・ベルキンを独奏に迎えた、ショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番。
同じ広上さんが指揮した7月の定期演奏会に登場したピンカス・ズーカーマンがつやつやとして滑らかな音色の持ち主とすれば、ベルキンは艶やかさを持ちつつもどこか鋭く苦みを感じる音色を奏でる。
むろん、それをすぐさま彼が生まれ育った旧ソ連と結び付けて考えるのは単純で感覚的に過ぎるかもしれないが、こうしてショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲を聴くと、どうしても作曲者とベルキンに共通する体験経験、同じ体制を生きた共時性、歴史的積み重ねを感じざるを得ない。
特に、第3楽章の長いカデンツァ。
その重さと真摯さ、そこに垣間見える抒情性には強く心を動かされた。
加えて、それが高度な技術に裏打ちされたものであることも忘れてはなるまい。
第2楽章や第4楽章の速い部分では目の醒めるようなソロをベルキンは聴かせていた。
一方、京都市交響楽団はより音楽の持つモダンさを強調した機能的に秀でた伴奏を行っていたのではないか。
チューバの武貞茂夫が大活躍だった。
これだけでもお腹いっぱいという感じにもかかわらず、休憩を挟んだメインは、ブラームスの交響曲第1番。
ちょっと重たくはないか、と少々心配していたのだけれど、なんのなんの。
と、言って広上さんはピリオド・スタイルを援用したような速めのテンポで軽々と流していたわけではない。
全体的にテンポ設定自体はゆったりとしたもので、細部まで目配りが届いている。
ただ、流れのよさに京都市交響楽団の明るめの音色が相まって、重苦しく粘るようなことはなく、実に暖かみがあって見通しのよい演奏に仕上がっていたのだ。
中でも、第2楽章の美しさが強く印象に残る(ヴァイオリンのソロはコンサートマスターの渡邊穣)。
そして、終楽章の高揚感。
広上さんの指揮の下、ソロ、アンサンブル両面で京都市交響楽団は精度の高い演奏を繰り広げていた。
いやあ、聴き応えがあった、いやあ、よかったとショスタコーヴィチ同様、大きな拍手を贈ったことは言うまでもない。
と、大満足大満腹のコンサートでした。
ああ、面白かった!!!
2017年10月14日
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