☆エリック・ホープリッチ&ロンドン・ハイドン弦楽4重奏団
出演:ロンドン・ハイドン弦楽4重奏団、エリック・ホープリッチ
座席:1階RA列1番
(2017年10月1日14時開演/兵庫県立芸術文化センター小ホール)
ロンドン・ハイドン弦楽4重奏団の来日コンサートを、西宮の兵庫県立芸術文化センター小ホールで聴いてきた。
ロンドン・ハイドン弦楽4重奏団は、キャサリン・マンソン(ファースト・ヴァイオリン)、マイケル・グレヴィチ(セカンド・ヴァイオリン)、ジョン・クロカット(ヴィオラ)、ジョナサン・マンソン(チェロ)の四人組。
2000年に結成されたピリオド楽器によるアンサンブルで、国際的に活躍するほか、hyperionレーベルでハイドンの弦楽4重奏曲集のリリースを進めるなどCD録音も活発に行っている。
今回の公演の1曲目は、自らのアンサンブルにその名を冠しているハイドンの弦楽4重奏曲第67番「ひばり」を取り上げた。
ひばりの囀りを想起させる第1楽章から「ひばり」の愛称の付いた有名作品で、実際冒頭のあのメロディが鳴り始めたとたん、ああ、いい曲、いい演奏だなあとわくわくするが、彼女彼らの場合、中間部分のちょっとした不穏な感じ、ハイドンの一筋縄ではいかない性質が丁寧に捉えられている点にも感嘆した。
と、言って、ロンドン・ハイドン弦楽4重奏団の特性魅力は、ピリオド楽器のアンサンブルにありがちな強弱のメリハリを思い切りつけて作品の要所急所を強調することではない。
その意味で、彼女彼らの魅力が存分に発揮されたのは、第2楽章の緩徐楽章ではなかったか。
ファースト・ヴァイオリンが抒情的な旋律を奏で、他の奏者たちが細やかにそれを支える。
まさしくインティメートな感覚に満ちた演奏で、強く印象に残った。
もちろん、続く第3、第4楽章でも精度の高い演奏を披瀝していたことは言うまでもあるまい。
2曲目は、最近この団体が積極的に演奏しているというベートーヴェンの初期の弦楽4重奏曲(作品18の6曲)の中から第6番。
かつてはベートーヴェンの初期の弦楽4重奏曲はハイドンをはじめとした先達たちの影響を云々かんぬんされたりもしたが、こうやって重ねて聴くと、ベートーヴェンの音楽の手数の多さというか、新たな音楽世界を切り開こうとする意志が明確に示されているように感じる。
特に、この第6番では、終楽章にラ・マリンコニアと題した序奏部分が置かれるなど、のちの中期や後期の作品にも繋がる「ベートーヴェン」的な要素がふんだんに含まれている。
ロンドン・ハイドン弦楽4重奏団は、ここでもバランスがよくてインティメートなアンサンブルで、間然としない演奏を生み出していた。
休憩を挟んだ後半は、ピリオド・クラリネットの名手ホープリッチをバセット・クラリネットのソロとして迎えて、モーツァルトのクラリネット5重奏曲が演奏された。
なお、バセット・クラリネットとは、一般的に想像されるクラリネットと異なり、吸い口の部分はサックスのように斜めに曲がり、下のほうはでこっという感じで顎のように出っ張っている。
質朴で暖かみのある音色と広い音域が持ち味だ。
ホープリッチはそうした楽器の持つ特徴を存分に活かして、真摯で闊達、美しい演奏を繰り広げていた。
一方、ロンドン・ハイドン弦楽4重奏団の面々も過不足のない演奏。
実に素晴らしかった。
アンコールは、モーツァルトの第2楽章。
陳腐な言葉になるけれど、天国的な美しさを再び味わうことができた。
そうそう、忘れてならないのが、この兵庫県立芸術文化センター小ホールの音響の良さだ。
ホールも楽器の一つであるということを再認識させられた。
ああ、面白かった!!!
2017年10月01日
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