2017年06月04日

川越塔子リサイタル

☆川越塔子リサイタル

 独唱:川越塔子(ソプラノ)
 ピアノ:細川智美

 座席:F-11
(2017年6月4日15時開演/青山音楽記念館バロックザール)


 以前よりお世話になっているプロデューサーで達人の館代表の橘市郎さんからお誘いのあった、ソプラノ歌手の川越塔子リサイタルに足を運んだ。
 締め切り等の関係でぎりぎりまで行けるかどうか危うかったのだけれど、これは足を運んで本当に大正解、密度が濃いのに押しつけがましさを微塵も感じさせることのない、知情意のバランスがよくとれた愉しいリサイタルだった。

 リサイタルの主人公である川越さんは、東大法学部を卒業後、武蔵野音楽大学の大学院で声楽を学び、ローマにも留学。
 さらにフランス、イタリアで研鑽を積み、現在は藤原歌劇団に所属しオペラを中心に活躍している。
 京都造形芸大の芸術劇場春秋座でのオペラ公演で度々ヒロインを演じるなど、京都でもよく知られた存在だ。
 加えて、2015年には、『パリの薫り〜コンセール・アペリティフ〜』と題されたフランス物を中心としたアルバムもリリースしている。

 さて、今日のリサイタルのプログラム。
 前半の一部はグノーの『ロメオとジュリエット』から「夢に生きたい」、オッフェンバックの『ホフマン物語』から「オランピアの唄」、マスネの『マノン』からガヴォット、同じくマスネの『エロディアード』から「甘く優しく」、プーランクの即興曲第15番「エディット・ピアフを讃えて」*、同じくプーランクの『ティレジアスの乳房』から「いいえ旦那様」とフランスの作曲家でまとめ、休憩を挟んだ後半の第二部は、團伊玖磨の『夕鶴』から「あたしのだいじな与ひょう」、プッチーニの『蝶々夫人』から「ある晴れた日に」と「可愛い坊や」、ドビュッシーの月の光*、クルト・ヴァイルの『ヴィーナスの接吻』から「愚かなハート」、メノッティの『泥棒とオールドミス』から「私を盗んで」、バーンスタインの『キャンディード』から「きらびやかに着飾って」と日本を舞台にした作品にアメリカで作曲された作品が並ぶという非常に意欲的なものとなっていた。
(ちなみに*は細川さんによるピアノ・ソロ)
 曲間のトークで、川越さんは自分が好きな歌、歌いたい歌を歌うことにしたとプログラミングについて説明していて、確かにそれはその通りなのだろうけれど、選曲(フランス語、日本語、イタリア語、英語の歌をあえて取り上げた点も含め)と全体的な構成には彼女の自負に矜持、知性と志向を強く感じたことも事実である。
 もちろん、それは川越さんの実力に裏打ちされたものであることは言うまでもない。
 バロックザールのホールを震わせるかのような声量の持ち主で、高音部の伸びもあり、強弱のコントロールもよくとれたその歌唱がまずもって魅力的な上に、作品、役柄を的確に演じ分ける演技力にも欠けていない。
 しかも、先述したトークも含めて機智とコケットリイ、サービス精神にも富んでいる。
 結果、いい歌だった、いいリサイタルだったとよい心持ちになることができた。

 ピアノの細川さんは過不足ない伴奏で、川越さんの歌をしっかりと支える。
 プーランクと月の光も、出しゃばらず、しかしリリカルさを失わないソロで、間奏曲的な役割を巧く果たしていた。

 なお、リサイタルの謎解きであり、川越さん自身のマニフェストともいえるプッチーニの『トスカ』から「歌に生き、恋に生き」、カスタネットでリズムを刻んだドリーブの『カディスの娘たち』、そして中島みゆきの『糸』の三曲がアンコールとして歌われた。


 オペラ好き、クラシック音楽好きはもちろんのこと、できれば演劇関係の人たちにも接して欲しかったリサイタルだ。
 ああ、面白かった!!
posted by figarok492na at 19:22| Comment(0) | TrackBack(0) | コンサート記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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