2017年05月27日

日本センチュリー交響楽団 いずみ定期演奏会No.35

☆日本センチュリー交響楽団 いずみ定期演奏会No.35

 指揮:飯森範親
 独奏:水無瀬一成

 座席:2階LA列5番
(2017年5月26日19時開演/いずみホール)


 CDで聴き馴染んだハイドンの交響曲第90番、第76番、第92番「オックスフォード」が演奏されるので、大阪のいずみホールまで足を運んだ。
 本来の室内オーケストラ編成という持ち味を活かすとともに、オーケストラを鍛える目的もあって新首席指揮者の飯森範親が始めた日本センチュリー交響楽団のいずみ定期「ハイドン・マラソン」(ハイドンの交響曲全曲演奏)の9回目、今シーズン最初の演奏会である。
 ハイドンといえば、CDでも実演でもあまり客が集まらないと言われて久しいが、満席大入りとはいかずとも6割程度か、なかなかの入りでまずは何よりである。

 で、弦楽器は第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが向かい合う対向配置で、8,8、6、5、3の編成。
 指揮者の正面にチェンバロ(パブロ・エスカンデ。適切な通奏低音を披瀝していた)が置かれ、その後ろにオーボエ2とフルート1、さらにその後ろにファゴット2、ホルン2が並ぶ。
 また、客席から見て右斜め後ろにティンパニとトランペット2が陣取っていた。

 一曲目は、交響曲第90番。
 フランスのドニィ伯爵のために作曲された交響曲の一つで、ハ長調という調性に相応しい晴れ晴れしい祝祭性を持つ一方、転調を活かした音楽的な仕掛けも施されるなど、ハイドンの機智が十全に示された作品となっている。
 強弱緩急のメリハリが効いてテンポが速く、ヴィブラートも控えめといういわゆるピリオド・スタイルが援用されていることは言うまでもないが、飯森さんの場合はそこにスタイリッシュというか表面的な精度の高さが加わってくる。
 そうしたスタイルはロマン派以降の作品ともなると、若干喰い込みの足りなさを感じさせる場合もあるのだけれど、古典派、特にハイドンの交響曲では効果的に発揮されているように思う。
 この交響曲では、第1楽章でのヴァイオリンのためや第3楽章のトリオでのオーボエ・ソロの即興的装飾(宮本克江が妙技を聴かせた。第1楽章の終盤にも同様の場面があって、宮本さんのほか、フルートの永江真由子も即興的な装飾を効かせていた)も巧く利用されており、聴き応えのある演奏に仕上がっていた。
 ただ、この交響曲の一番の聴かせどころである終楽章の転調後の偽終結は不発。
 というか、あえてあっさり流したような。
 飯森さんのことだから、一回どころか二回は仕掛けてくるかと待ち構えていたのだが。
 もしかしたらお客さんの多くもこの曲の騙しを知っていたのかもしれないし、まあ仕方ないか。

 続いては、昨シーズンより京都市交響楽団の副首席奏者からセンチュリーのトップに転じた水無瀬一成の独奏によるモーツァルトのホルン協奏曲第2番。
 若干不安定なところもあったけれど、鳴りのよい朗々としたソロを愉しむことができた。
 特に、第3楽章が強く印象に残る。
 飯森さんとセンチュリー響の面々も、同僚のソロをよく支えて過不足がなかった。

 休憩を挟んだ三曲目は、交響曲第76番。
 ロンドン訪問を当て込んで書かれた三曲中の一曲で、変ホ長調。
 モーツァルト同様、ティンパニとトランペットを除いた編成で書かれてはいるが、飯森さんとセンチュリー響は作品の持つ音楽的起伏(シンフォニックな部分と室内楽的な部分)や旋律の美しさをよく再現していた。

 そして、プログラム最後は交響曲第92番。
 ハイドンのオックスフォード大学名誉音楽博士号贈呈記念演奏会で演奏されたことから「オックスフォード」の愛称で知られる、ト長調の交響曲だ。
 なお、この曲ではチェンバロが退き、ティンパニとトランペット2が戻って来る。
 楽曲の構造構成や楽器の使用法などでハイドンの筆致はさらに進化を遂げており、第2楽章のヴァイオリン(首席客演コンサートマスターの荒井英治)とチェロ(首席奏者の北口大輔)の掛け合い等々聴きどころもたっぷりである。
 中でも、ぐいぐいと追い込んでいくエネルギッシュな終楽章に心動かされた。

 ソロ・アンサンブル両面で、日本センチュリー交響楽団は安定してまとまりのよい演奏を披瀝し、飯森さんの解釈によく応えていた。
 本音をいえば、ジョヴァンニ・アントニーニらバロック・ロック的な劇的な演奏でも触れてみたいが、まずはハイドンのこの3曲の交響曲の良質な実演に接することができたことに感謝したい。
 ああ、面白かった!!
posted by figarok492na at 01:12| Comment(0) | TrackBack(0) | コンサート記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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