☆第24次笑の内閣『日・韓・米 春のツレウヨまつり』日本編
作・演出:高間響
ドラマトゥルク:神田真直
演出補佐:小原藍、吉岡ちひろ
(2017年5月23日19時開演の回/アトリエ劇研)
2012年5月(第15次、吉田寮食堂)、2014年3月(第18次、KAIKA)と上演を重ねてきた笑の内閣の『ツレがウヨになりまして』だが、この度、そこに韓国編とアメリカ編が加わり、その名も『日・韓・米・春のツレウヨまつり』に改めパワーアップを果たして戻って来た。
で、まずは先月のソウル公演を大盛況で終えたばかりのオリジナル・バージョンと呼ぶべき日本編から観劇する。
地域警察署の生活安全課の係長を父に持つ日向あおい(土肥希理子)は女子大生。
そんなあおいの彼氏でニートの富山蒼甫(池川タカキヨ)が、中学時代の先輩に感化されてウヨってしまい、近所のスーパーマーケットの韓流フェアへと抗議に出向く…。
といった本筋はこれまでの上演と変わりがない。
いわゆるネトウヨ連中をおちょくりつつ、あおいと蒼甫のつたなくてもどかしくもある恋愛関係を通しながら、それじゃあ国を愛するってどんなもんじゃいなと尋ね直した作品であり、表面的な設定やくすぐりの極端さに反して、その実高間響という劇の作り手のバランス感覚とともに集団で何かをやり遂げることへの強い愛着もよく示されている。
強引さやまどろこしさを感じる場面・展開は残るものの、新たな座組もプラスに働いて、台詞のやり取りや出はけ・暗転の処理等々全体的に洗練され、精度が増したように感じられた。
(最近、長谷川康夫の『つかこうへい正伝』<新潮社>を読んだこともあってか、ところどころつか作品のパロディっぽく感じた部分もあったんだった)
演者陣では、蒼甫役の池川君を第一に挙げたい。
雰囲気そのものがまずぴったりなのだけれど、そこに細やかな感情のギアチェンジが効いて、蒼甫の情けなさ、弱さ、甘さ、終盤以降の激昂を見事に演じ切っており、ああこれだこいつだと大いに納得がいく。
初演再演であおいのゼミ友中道真実を巧みに演じた高瀬川すてらは、今回あおいのゼミ担当でリベラルな教授赤田小夜子に回ったが、ここでも演技達者ぶりを発揮する。
キャラクターに徹している上に、細かいけれど過剰ではない所作が愉しい。
初演以来の蒼甫の先輩内藤洋吉役の髭だるマン(全公演出演お疲れ様)、あおいの父親の部下金村聖斗役の由良真介はこの間の研鑽がよく出て厚みが増していたし、あおいの父親成彬役の松田裕一郎も甲羅を経た存在感を出していた(中でも強い発声の際、この人の出自というか狂言の素養が表れる)。
また、頑なで芯が強そうながらどこかで脆さと危うさを持ったヒロイン役の土肥さん、おバカさの再現を心掛けていた真実役のしらとりまなも、他の演者陣に伍して努力を重ねていた。
役柄を掘り下げるか、類型典型に徹するか、自分自身を前面に押し出すか、もしくはそういったもの全てのバランスをとるか。
技術技量というより、経験の長短もあって迷う部分は少なくないだろうが。
できないものはできないのだから、そうした今現在のできなさを役柄の弱さ、感情のふわふわとした変化に、あえて構えず気楽にあててみてもよいのではないか。
舞台上でも、いや実人生でも嘘をつくより、そのほうが何層倍も誠実だと思うし好感が持てる。
ほかに、スーパーマーケットの店長役を高間上皇が高間上皇らしく演じていた。
そして、忘れてはならないのがゲスト出演した黒川猛だ。
かつてベトナムからの笑い声で大いに鳴らし、今もTHE GO AND MO’Sで闘い続ける黒川さんだけれど、今夜も大奮闘。
危険な時事ネタの本家は俺だとばかりのネタのチョイスに、逆説的な愛情ある仕掛け、いじりと黒川さんならではの場面を作っていて嬉しかった。
あと、アフタートークは香山リカ。
ネトウヨの性質(ネット上では攻撃を続ける割に、ちっとも金は出したがらない等々)について自らのエピソードを交えながら高間上皇と快活に語り合ったほか、会場からの質問(共謀罪の問題等々)に対しても丁寧に返答していた。
と、本篇、ゲスト、アフタートークと盛りだくさんな上演でした。
ああ、面白かった!!!
2017年05月24日
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