☆京都市交響楽団 第612回定期演奏会
指揮:高関健
座席:3階LB1列5番
(2017年5月21日14時半開演/京都コンサートホール大ホール)
へび、長すぎる
とは、ルナールの『博物誌』の一節だけれど、その伝でいくと、
ブルックナーの5番、長すぎる
ではないか。
初期の数曲を除けば概して長大なブルックナーの交響曲の中でも、第8番と並んで第5番は特に長い。
で、へびは長さばかりが原因ともいえまいが、ブルックナーの交響曲第5番のほうは長さがとっつきにくさに直結している。
じっくり耳を傾ければ実は聴きどころ満載なのだけれど、やはり構え見てくれが災いして、というやつだ。
CDは置くとして、僕自身、ブルックナーの交響曲第5番の実演に接したのは、朝比奈隆指揮大阪フィルの第250回定期演奏会(1990年7月20日、フェスティバルホール)とハンス・フォンク指揮ケルンWDR交響楽団の定期演奏会(1993年10月29日、ケルン・フィルハーモニー)の二回きりである。
前者は、とっつきにくいものはとっつきにくくて何が悪い、男は黙ってブルックナーの5番といった武骨な流儀、後者は作品の性質を大きく掴んで再現しようという意図はよくわかったものの、指揮者とオーケストラの嚙み合わせが今一つの感が強かった。
(というか、朝比奈さんのほうは開演前にフェスティバルホールの下のビュッフェでビーフカレーの大盛りを慌てて冷水で流し込んだせいで、第2楽章あたりからお腹の調子がおかしくなり、ああやっと曲が終わったと思ったら、なんと『ニュルンベルクのマイスタージンガー』第1幕への前奏曲がアンコールで始まるという地獄の責め苦のことばかり思い出す。僕の朝比奈さんに対する好感の薄さは、けっこうこのことによるものかもしれない)
一方、今日聴いた高関健指揮京都市交響楽団のブルックナーの交響曲第5番は、目配り腑分けがしっかり行き届いており、耳馴染みのよい演奏に仕上がっていたのではないか。
もちろん、上述したようなこの交響曲本来の堅固堅牢な構成構造がないがしろにされているわけ訳ではないのだけれど、それとともに、例えば第2楽章の叙情性、歌唱性(弦楽器が美しく響く)や第3楽章の跳ねるような感じというか舞曲性もしっかりクローズアップされるなど、様々な聴きどころが丁寧に再現されていたからである。
そのおかげで、この第5番がそれまでの一連の交響曲の積み重ねの上にあることも再認識することができた。
慌てず騒がず、けれど鳴らすべきところは鳴らし、テンポも細やかに変化させる。
実に見通しがよくて、バランスのとれたブルックナーの交響曲第5番だった。
(ちなみに、高関さんはノンタクト=指揮棒なしでの指揮)
コンサートマスターに石田泰尚、第2ヴァイオリン首席に長岡聡季、チェロ首席にルドヴィート・カンタをゲストで迎え、対向配置(第1、第2のヴァイオリンが向き合って座る。なお、コントラバスは舞台後方正面で、ティンパニは客席から見てその右隣)に陣取った京都市交響楽団はソロ、アンサンブル両面で精度の高い、高関さんの意図によく沿った明晰な演奏を繰り広げていた。
プレトークでの高関さんのお願いも効いてか、フライングブラボーも一切なし。
息を飲み込む一瞬の静けさも嬉しく、ブルックナーの交響曲第5番の魅力を改めて感じたコンサートでした。
ああ、面白かった!!!
2017年05月21日
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