☆BokuBorg vol.2『幸のナナメ』
脚本・演出:川本泰斗
(2017年3月18日14時開演の回/スタジオヴァリエ)
川本泰斗が主宰する演劇カンパニーBokuBorgの第2回公演『幸のナナメ』は、劇中の台詞ではないけれど客入れの音楽からして昭和の香りが強い。
そして、きっと川本君は自覚してのことだろうが「妊娠小説」(by斎藤美奈子)ならぬ「妊娠戯曲」とでも呼ぶべき展開ともなっていた。
『幸のナナメ』は、扇の要となるハルコと彼女を取り巻く周囲の人々の関係を通して、公演パンフレットにも記されているような「親子の話、家族の話、そして恋人の話」を描いていく。
その人間関係のあり様、物語の運び様は、観ていて「いーっ」となったり「いりいり」したりする部分も含めて線がはっきりしているというか、実にわかりやすいもので、冒頭にも記した通り、強く昭和を感じさせる。
また、あえて女性を物語の中心に置くことで、逆に川本君の意図や意識、切実さが浮き彫りにされているようにも思われた。
と、こう書くと、何やらべたで古めかしいホームドラマを想像する向きもあるだろうが、結構配役等々、そこはそうならないような演劇的な仕掛けも随所に施されている。
で、そうした仕掛けが巧く決まってすとんと腑に落ちる部分があった反面、無理から細工を弄してしまったような、ぎくしゃくとした感じを覚えた部分がところどころ観受けられたことも事実だ。
しかしながらそれは、単に技術的な問題ばかりではなく、川本君の嗜好や志向の問題と密接に繋がっているようにも僕は考える。
べたを恐れず一層オーソドックスな方向に筆を進めていくのか、自らの良い意味での歪み偏りをひと際デフォルメして破天荒を極めるのか、もしくはバランス配分にさらに留意するのか。
川本君の今後の作品に注目していきたい。
(実は、この『幸のナナメ』は今から4年前、川本君がまだ学生劇団に所属していた時期に書かれた作品なのだそうだけれど、学生劇団時代の彼が何をどのように吸収したかがよくわかる台本であると思った)
それこそ万華鏡のように変化に富んだピンク地底人2号をはじめ、藤居里穂、土肥希理子、勝二繁、野村眞人、堀内綜一郎の演者陣は、川本君の意図によく沿って与えられたキャラクターを演じ分ける努力を重ねるとともに、個々の特性魅力もよく発揮していたのではないか。
川本君自身が演者であることもあってだろう、作中演じがいのある場面が多々設けられていた。
ただ一方で、過去の役回りに引きずられていたり、類型の表現が過剰であるように感じられたりする箇所もいくつかあり、その点は川本君の今後の演出面での課題のように思われた。
いずれにしても、vol.3、vol.4…とこれからのBokuBorgの公演が愉しみである。
月曜までの公演。
ご都合よろしい方はぜひ。
ああ、面白かった!
2017年03月18日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック