M☆3 文化庁京都移転記念特別公演『かえりのかい』
作:ブルーバード
演出・美術:杉原邦生
(2017年3月12日18時開演/元・立誠小学校音楽室)
文化庁京都移転記念特別公演と銘打ったM☆3の『かえりのかい』を観たが、これは足を運んで本当に大正解。
あえて文化庁云々などと名乗る意味が何重にも感じ取れた、作品・演出・演技諸々、すこぶる充実した出来の芝居を観る愉しみに満ちた公演だった。
ああ、面白かった!!!
と、こう記してしまえばそれで十分だと思うのだけれど、それではまあちょっぴり不親切か。
とある小学校の教室。
少々エキセントリックな先生のもと、これまた少々エキセントリックなクラスの面々がかえりのかいを始めるが…。
といった展開で、元・立誠小学校の音楽室という場所ありきと終演後のアフターイベント「かえりのかい」でも作者のブルーバードが語っていたから、なんだ機会音楽ならぬ機会演劇か。
と思ったら大間違い。
いや、機会演劇的側面は多分にありつつも、元・小学校が舞台であることが大きな意味を持った結構内容となっている。
で、前半はあるあるネタを盛り込んで笑いをとりながら、今現在の諸状況を指し示すようなエピソードを積み重ねていく。
伏線・含みとしても、作品の瑕疵としても、時折小首を傾げたくなるところはいくぶんあるものの、そこはメリハリ強弱が効いて(シャウトシャウトシャウト)スピーディーな杉原君流儀のスタティックでスタイリッシュな処理がよい具合にカバーする。
ただその分、変拍子や不協和音の多い巧緻な曲をよくコントロールされた合唱団で耳にしているような感じというか、本や演出の計算の高さ、役者陣の演技の達者さ健闘ぶりにまず関心がいったことも事実で、それほど心は動かない。
だが後半、物語が大きく跳躍を果たし、それまで単に指し示されていたものが、より深く抉られるというか、ぐっと刺し示されるようになって、その切実さ痛切さに強く魅かれ囚われた。
いやあ、こういうことがあるから芝居を観るのはやめられない。
むろん、ここでもグロテスクな笑いがふんだんに仕掛けられていたことは言うまでもないが。
良い意味でのグロテスクさといえば、12人の役者たちもそう。
緑川史絵(存在感と柔軟さ)、熊川ふみ(『ありがとう』の頃の水前寺清子のはっちゃけ感とドライないやらしさ)、森田真和をはじめ、御厨亮、松岡咲子、金子仁司、稲森明日香、長南洸生、合田団地(くせ球隠し玉を要所要所で決めてホールド達成)、九鬼そねみ、石原慎也、丹羽菜緒という東京勢と関西勢混成の座組みだが、均整がとれてまとまったアンサンブルを生み出す一方で、なべて個々の特性魅力を見事に発揮しており、一人一人の登場人物と集団(社会)の関係を描いたこの作品によく沿った演技を披歴していたのではないか。
当然そこには、杉原君の役者のチョイスと目配りのよく届いた演出が大きく寄与していることも忘れてはなるまい。
そうそう、この作品では衣装その他細かい部分も見落とすことなく愉しんでいただければ。
いずれにしても、足を運んで大正解。
ああ、面白かった!!!
2017年03月13日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック