☆アガリスクエンターテイメント 第22回公演
『七人の語らい(ワイフ・ゴーズ・オン)/笑の太字』
脚本・演出:冨坂友
文芸助手:淺越岳人
(2016年09月10日14時半開演/in→dependent theatre 1st)
昨年の京都公演『ナイゲン(全国版)』(10月10日、元・立誠小学校音楽室)がすこぶる面白かったアガリスクエンターテイメントが大阪公演を行うというので、迷わずin→dependent theatre 1stまで足を運んだ。
今回は、昨年の黄金のコメディフェスティバル2015で優勝した『七人の語らい(ワイフ・ゴーズ・オン)』と新作の『笑の太字』の二本立て(45+45分。間に休憩10分)だったのだが、いずれも「自分たちが今現在何ゆえシットコム(シチュエーションコメディ)を演じるのか」という姿勢がはっきりと示された興味深く刺激的な作品となっていた。
もちろん、仕掛けが豊富ですこぶる面白かったことは言うまでもないことだけど。
で、前半は『七人の語らい(ワイフ・ゴーズ・オン)』。
舞台はロンドン。
デヴィッド=スミス(矢吹ジャンプ・客演)は妻のメアリー(鹿島ゆきこ)と共に仲睦まじい生活を送っている。
ところがこのデヴィッド、実はもう一人バーバラ(沈ゆうこ)という女性とも婚姻関係を結んでいたのだった。
そんなバーバラがメアリーを訪ねてやって来る。
なんと、二人は友人関係にあるらしく…。
と、ここまでは、例えばノエル・カワードはちょっと古いかな、アラン・エイクボーン調の××××事務所が好んで取り上げそうな典型的なウェルメイドのシットコム。
ただし、そこはアガリスク、そのまま幕切れまで進んでいくわけがない。
明日まで公演中なので、詳しくはぜひとも劇場でご覧になっていただきたいが、シットコムの「お約束」のあれやこれやを逆手にとって次から次へと笑いを仕掛けていく。
で、ありながら、というより、だからこそか、シットコムの長所や魅力を十分に踏まえた作品となっている。
加えて、自己言及性に富むというか、結構、設定、展開、キャラクター、いずれにおいても自らが寄って立つものが明快に示されていることも忘れてはならない点だろう。
(もしかしたら、アガリスクの作品を観続けてきた人には嬉しいくすぐりも結構あったのでは)
上述の面々に加え、客演の斉藤コータ(『ナイゲン』にも出演)、劇団員の津和野諒、塩原俊之、淺越岳人は作品世界によく沿ったアンサンブルを創り上げていた。
特に、翻訳調の部分とそうでない部分の切り換えのよさが印象に残った。
後半の二人芝居『笑の太字』ではひときわ自己言及性、てか、ぶっちゃけ三谷幸喜への想いが強く噴出する。
舞台は、大学の演劇学科の劇作コースの教員の部屋。
向い合うのは、教員と学生。
問題となるのは、二人の間に置かれた一冊の戯曲。
と、言うのも、学生が卒業制作として提出したこの戯曲というのが、ある有名な二人芝居をそのまま書き取ったもので…。
劇中のある台詞ではないけれど、『笑の太字』というタイトルが全てを表している。
もうあれは15年以上も前になるか、実は、僕も学生と同じ「作業」を手間暇かけてやったことがあって、学生の畳みかける台詞に、そうだそうだもっともっと言ってやれ、と思ったほどだ。
まあ、これは冗談半分としても、シットコム、てか三谷幸喜に魅せられた表現を志す人間にとっては他人事とは言えない内容となっている。
大いに笑いながら、でも、オリジナリティとは何か(これは『ナイゲン』でも触れられていた)といったことや、戯曲演劇はいったい誰のためのものかといったこと、そして創作表現そのものについて改めて考えさせられた。
もう一つ付け加えるならば、『ナイゲン』がそうであったように、この作品にもまた冨坂友という劇の造り手の「私戯曲」的要素が強く盛り込まれていたように思う。
ABCD4チームのうち、僕が観たのは、学生:沈ゆうこ、教員:鹿島ゆきこの女性二人組のDチーム。
ライヴ特有の傷は若干ありつつも、先ほどまでのバーバラ、メアリーとは一転、「本家」さながらの人物像を演じ切る努力を重ねていた。
中でも、沈さんからは、劇中にはそんな台詞一切ないにもかかわらず、「やってみなきゃあわかんねえだろう」というあの声が聴こえてくるような気がしてならなかった。
と、二粒で何度も美味しくおかしい二本立てでした。
来年の京都公演が本当に待ち遠しい。
ああ、面白かった!!
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