2016年08月06日

努力クラブ第11回公演『ピエロどうもありがとうピエロ』

☆努力クラブ第11回公演『ピエロどうもありがとうピエロ』

 作・演出:合田団地
(2016年8月5日19時15分開演の回/アトリエ劇研)


 白く塗り固めたかんばせに、派手派手しい身形。
 と、言っても最近どこかの知事となった女性のことではない、ピエロである。
(いやいや、もしかしたら彼女もそのうちの一人なのかもしれないが)
 滑稽な風貌仕種とは裏腹に、素顔がしかとは窺い知れないそのあり様には、曰く言い難い哀しさと不気味さがいつも付きまとう。
 実際、そんなピエロの存在は多くの表現者の創作意欲を掻き立ててきた。
 シェーンベルクの『月に憑かれたピエロ』にフェデリコ・フェリーニの『フェリーニの道化師』、江戸川乱歩の『地獄の道化師』。
 そういえば、さだまさし主演の映画に『翔べイカロスの翼』なんてものもあった。
 努力クラブにとって11回目の本公演となる『ピエロどうもありがとうピエロ』もまた、タイトル通り、ピエロが重要な役回りを果たす作品だ。
 むろんそこは合田団地のことだから一筋縄ではいかず、定石を外れてなんぼの劇運びでもあるのだけれど、それでも先達が指し示してきた印象感覚をしっかり受け継いでいたのではないだろうか。

 どうにも生き辛い男(大石英史)がいる。
 仕事先でも上司(酒井信古)になじられてばかりいる。
 しかしながら、男はそのことに得心がいっていない。
 謝れと言われれば、ただ謝るばかり。
 どうやら男は、自分に何かが欠けていることに気づけていないようだ。
 そんなとき、男は彼女(ヒラタユミ)から気晴らしにでもとサーカスに誘われる。
 そこで男はピエロ(丸山交通公園)に出会って…。

 といった具合に、『ピエロどうもありがとうピエロ』は進んで行く。
 ある種通過儀礼的な巡礼彷徨が設けられていたり、男を包み込もうとする女性が存在したりと、これまでの一連の作品に通じるモティーフがそこここに嵌め込まれていることは確かだが、今回の作品では「男芝居」というのか、男とピエロそれぞれを取り巻く状況や、両者の関係に主眼が置かれている。
 正直、いつも以上に好みが大きく分かれる内容だと思うし、物語の進行上の都合もあってだろう、若干停滞する箇所もなくはない。
 また、僕の観た回は、初日ということで、まだ巧く笑いがはまっていない部分も多々見受けられた。
 それでも、この『ピエロどうもありがとうピエロ』は掛け値なしに面白い。
 中でも、中盤の一見突拍子もなく見える「跳躍」や、男とピエロの「対峙」、諸々を経た上でのラストは大きな見どころだし、それより何より、合田君の真情が一層ストレートに表出されている点に強く心を動かされた。
(アフタートークで落語家の月亭太遊さんが鋭い指摘を加えつつ、男やピエロに何が仮託されているのかを合田君より巧く訊き出していた。合田君と長い付き合いもあってだが、流石は道化中の道化の一人、笑いのプロであると改めて感心した)
 あと、肝の部分以外、例えばピエロとインタビュアー(杉本奈月)のやり取りなど、細かな台詞にも注意を払っていただければ幸いである。

 演者陣では、まずもって男を演じた大石君とピエロの丸山君の二人。
 男のどうしようもなさと危うさを体現した大石君、辛抱立役とはちょっと違うけれど、はじめの飛車角落ち手足を縛られたような状態から我慢を重ね、悲哀を滲ませた丸山君、いずれも合田君の真情をくみ取りながら、そこに自分自身の真情をどう重ねていくか、「努力」を重ねていた。
 もちろん上述した人々のほか、池浦さだ夢団長、西野恭一、安藤ムツキ、熊谷みずほ(どちらかというと今回は軽い役回りだったが、どうしても彼女には「ヒロイン」的な雰囲気が漂う)、キタノ万里、佐々木峻一(またもがなる人に戻っていた)の演者陣も、それぞれの役柄にあった演技を行っていた。
 ただ、今回は努力クラブに初出演の人が多いこともあり、それがプラスに働く反面、個々の技量の長短の前に個々の演者間の齟齬というのか距離が気になったことも事実だ。
 それでも、結果的には際どい部分でバランスがとれていたと思うが、今後さらに新しい顔触れが座組みに加わる可能性は高く、肩書は別として、例えばかつての長坂ひかるさんのような、合田君の意図や気持ちを忖度できる人材が新たに必要なのではないかと思ったりもした。

 いずれにしても、ご都合よろしい方はぜひ!
 ああ、面白かった!!
posted by figarok492na at 09:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 観劇記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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