2016年05月12日

犬神家の末裔 第37回

*犬神家の末裔 第37回

前略
野々村珠世様

 昨年来、再び東京での生活です。
 千客万来、良くも悪くも騒々しい毎日が続いております。
 最近、新青年のために八つ墓村という作品を書き始めました。これまた岡山を舞台にした作品です。
 恒清君、出所されたとのこと。お身体の具合は、如何でしょうか。大禍なければ何よりですが。
 これからが、貴方と恒清君にとって本当の正念場となるでしょう。
 後ろ指を差す者、陰口を叩く者、少なくないでしょう。
 それもこれも、生きていればこそです。
 生ある限り、恒清君と手を携えて、耐え難き日々を歩み続けてください。
 また一度ゆっくりお話できれば。
 寒さ厳しき折、くれぐれもご自愛くださいませ。

昭和二十四年二月
横溝正史
草々
posted by figarok492na at 12:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 犬神家の末裔 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック