*犬神家の末裔 第37回
前略
野々村珠世様
昨年来、再び東京での生活です。
千客万来、良くも悪くも騒々しい毎日が続いております。
最近、新青年のために八つ墓村という作品を書き始めました。これまた岡山を舞台にした作品です。
恒清君、出所されたとのこと。お身体の具合は、如何でしょうか。大禍なければ何よりですが。
これからが、貴方と恒清君にとって本当の正念場となるでしょう。
後ろ指を差す者、陰口を叩く者、少なくないでしょう。
それもこれも、生きていればこそです。
生ある限り、恒清君と手を携えて、耐え難き日々を歩み続けてください。
また一度ゆっくりお話できれば。
寒さ厳しき折、くれぐれもご自愛くださいませ。
昭和二十四年二月
横溝正史
草々
2016年05月12日
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