2016年04月23日

犬神家の末裔 第22回

*犬神家の末裔 第22回

 さらに、信濃民衆新聞那須版・十月十八日付朝刊には、この「奇怪なる訪問者現わる」の続報が掲載されている。

[北那須駅に田山兵三]

 昨日付朝刊にて報じた奇怪なる訪問者、厚生省技官甲信越担当予防官 田山兵三を名乗る人物の足取りが、本紙の独自調査によって判明した。
 本紙調査によると、十月十五日の夕刻北那須駅で、東京発の急行列車から田山兵三と名乗る人物と同様の風体をした男性が降車したことを、同駅駅員の田沼則公氏他数名が目撃している。
 さらに調査を重ねたところ、同日十九時半頃、北那須駅前の旅館北那須ホテルに田山兵三を名乗る人物が入室したことがわかった。
 北那須ホテルの主人伊勢九兵衛氏は語る。
 思えばちょいとばかり妙なお客でしたな。戦闘帽を目深に被って、襟巻を鼻の上まで巻いてるんで、顔の中で見えるのは目だけだったんですからな。
 宿帳には、東京都麹町区三番町二十一番地、厚生省技官 田山兵三 三十歳と金釘流の文字で記されているとのこと。
 本紙が確認すると、厚生省の技官の中に田山兵三なる人物は実在するものの、田山氏は当年とって四十八歳、しかもこの三ヶ月ほどずっと東京に滞在していたというのだから、謎は深まるばかり。
 田山兵三を名乗った人物の正体や如何に。

 と、結んでいるが、本来ならば信濃民衆新聞はこの田山兵三を名乗る人物について、さらに取材を続ける予定だったのではないか。
 ところが、戌神家の事件が発生したために、その余裕がなくなってしまったのだろう。
 事実、その後しばらくの間、田山兵三の名は信濃民衆新聞紙上から消える。
 田山兵三の名が再び信濃民衆新聞に登場するのは、翌年一九四八年の一月に、あの帝銀事件が起こってからだ。
posted by figarok492na at 12:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 犬神家の末裔 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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