2016年04月22日

犬神家の末裔 第21回

*犬神家の末裔 第21回

 二年前に帰省した際、すでに事件そのものの記事に関してプリントアウトをすませておいた早百合が、何ゆえ事件直前の新聞に目を通そうとするのか。
 それは、戌神家の事件の二日前、一九四七年十月十六日の午後、三菱銀行那須支店で起こったある不思議な出来事を確認するためだった。
 そして、早百合が信濃民衆新聞那須版・一九四七年十月十七日付朝刊のマイクロフィルムを追っていくと、次の記事が見つかった。

[奇怪なる訪問者現わる]

 昨十月十六日、閉店直後の三菱銀行那須支店に、年の頃なら三十前後、厚生省技官・甲信越担当予防官 田山兵三を名乗る背広服姿の男性が現われた。
 田山兵三曰く、本日午前の預金者中、赤痢の感染者があり、ついては全行員、全紙幣の消毒を行わねばならぬ。
 驚愕、支店長の岡崎正勝氏が詳細確認をと告げて近隣の派出所に向かった隙に、田山兵三は持参の薬物を行員たちに飲ませようとしたが、行員中鼻っ柱の強さで知られたE君が、そんな奇態なもの飲めるかと反抗。
 しばし田山兵三とE君の言い争いが続いた末、田山兵三は責任部署の許可を得ると告げて、那須支店を退散した。
 一方、岡崎支店長が派出所を通じて確認したところ、一切然様な事実はないとのことで、またも驚愕。
 派出所の巡査共々支店に戻ったところで、田山兵三とE君の顛末を知らされた由。
 田山兵三はそれきり那須支店には戻ってこなかったというが、果たしてこの奇怪なる訪問者の目論見とは一体なんだったのだろうか。
posted by figarok492na at 13:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 犬神家の末裔 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック