2016年04月16日

京都市交響楽団 第600回定期演奏会

☆京都市交響楽団 第600回定期演奏会

 指揮:広上淳一
管弦楽:京都市交響楽団

 会場:京都コンサートホール大ホール
 座席:3階LB1列5番
(2016年4月15日19時開演)


 創立60周年を迎える京都市交響楽団の新年度初の定期演奏会を聴いた。
 今回はちょうど600回と、これまた記念すべき定期演奏会だったが、30年近く京都市交響楽団を聴き続けてきて、いわゆるキリ番のコンサートに足を運ぶのはこれが初めてである。

 で、プレトークでは、当夜の指揮者で第12代常任指揮者兼ミュージック・アドヴァイザーの広上淳一が、チューバ奏者でベテランの武貞茂夫を交えながら、京都市交響楽団の昔話をひとしきり。
 広上さんは、京響初登場の際(特別演奏会/1990年10月22日、京都会館第1ホール/ハイドンの交響曲第100番「軍隊」とチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」)の想い出、特に京都会館の音響の悪さに辟易した話を披歴していたのだけれど、実はこのコンサートを聴いて、京都市交響楽団の音が断然違うと感心し、広上淳一という指揮者をできるだけ追っていこうと思ったものだった。
(他に、関西二期会の『リゴレット』の公演で京都市交響楽団を指揮した大野和士にも同じことを感じた)

 一曲目は、コープランドの市民のためのファンファーレ。
 金管楽器とティンパニ・打楽器による荘厳なファンファーレで、広上さんは常任指揮者就任後初となる第511回定期演奏会(2008年4月18日、京都コンサートホール大ホール)でも同じ曲を取り上げている。
 始まってしばらくひやっとする場面が続くも、最後は華々しく〆た。

 続いては、広上さんの十八番でもあるモーツァルトの交響曲第41番「ジュピター」。
 大編成の弦楽器(チェロも8、コントラバスも8。一方、管楽器はフルート1、オーボエ2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2)に、ゆっくりと急がないテンポ、と記すとオールドファッショな行き方を想像する向きもあるだろうが、弦の鳴らし方やティンパニの強めの打ち方、それより何より、目配りのよく届いた音楽づくりと、これはピリオド・スタイルの洗礼を明らかに受けた演奏だった。
 全体のまとまりとともに横の音楽の流れを重視しつつ、さらに細部の構成もしっかりと押さえる。
 中でも、第3楽章のメヌエットを遅めのテンポで運び、第4楽章のフーガで頂点を築くという音楽の劇的な構成には、とてもわくわくさせられた。

 休憩を挟んだ後半は、リヒャルト・シュトラウスの大作『ツァラトゥストラはかく語りき』。
 ニーチェの哲学を音楽化した交響詩…。
 と、言うよりも、スタンリー・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』で効果的に使われた冒頭部分が有名で、昨夜もゾワゾワと何かが蠢き出しそうな雰囲気が十分にとらえられており、まさしくつかみはばっちり。
 が、その後も難所急所の続く作品だけれど、広上さんの的確なコントロールの下、京都市交響楽団は力感があって、なおかつ肌理細やかな音楽を生み出していく。
 例えば、官能美というか、旋律の美しさ、濃厚さが前面に押し出されてリヒャルト・シュトラウスの劇場感覚を改めて思い知らされる「踊りの歌」や、厳粛なラスト等々、ただ単に大きく鳴らすのではなく、何を如何に演奏するかが大切な作品であるということを実感することができた。
 チェコ出身のオルガニスト、アレシュ・バールタ、コンサートマスターの渡邊穣、ヴィオラの小峰航一、チェロの上村昇らソロ、客演陣を含むアンサンブル、ともに大健闘だった。

 と、オーケストラを聴く喜びをたっぷりと味わうことができたコンサート。
 ああ、面白かった!

 そして、さらなる京都市交響楽団の充実とステップアップを心より愉しみにしたい。
posted by figarok492na at 09:01| Comment(0) | TrackBack(0) | コンサート記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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