☆シューベルト:マイアホーファーの詩による歌曲集
テノール:クリストフ・プレガルディエン
フォルテピアノ:アンドレアス・シュタイアー
録音:2001年1月、ケルン・ドイッチュラントラジオ・スタジオ
デジタル・セッション
<TELDEC>8573-85556-2
1月末日、さらには彼自身の219回目の誕生日ということもあって、これまで投稿しそびれていた、シューベルトのマイアホーファーの詩による歌曲集に関する感想を記しておきたい。
このアルバムには、シューベルトと直接親交のあったヨハン・バプティスト・マイアホーファーの詩による歌曲が23曲収められている。
おなじみの作品に比べると、一聴、すぐさま口ずさめそうな歌曲ばかりとはいかないが、それでもシューベルトの音楽の持つ旋律の美しさ、抒情性、劇性、形而上的思考等々は、十全に示されているとも思う。
プレガルディエンとシュタイアーはそうした歌曲の数々を、彼らが重ねてきた共同作業の頂点とでも評したくなるような高い表現力で再現し切っていて、何度聴き返しても全く聴き飽きない。
その意味でも、
>しかし私の身体の隅々からは
魂のこころよい力が涌き出でて、
私をとりかこみ
天上の歌を歌うのだ。
滅び去れ、世界よ、そして二度と
この世のものならぬ甘美な合唱を妨げるな。
滅び去れ、世界よ、滅び去れ<
と詩人自身の歌詞によって、訣別が歌われた『解脱』が最後に置かれていることは、非常に興味深い。
近年では、声の衰えを感じざるをえないプレガルディエンだが、ここでは透明感、清潔感があって伸びのある声質は保たれているし、一つ一つの作品への読み込みの深さは言うまでもない。
また、シュタイアーも時に押し時に引く見事な掛け合いでプレガルディエンの歌唱をサポートする。
今日たまさか、NHK・FMの『きらクラ!』のリスナーさんからのお便りに、シューベルトの歌曲のピアノは単なる伴奏ではなく、共に歌を歌っているように、二重唱のように聴こえるという趣旨の言葉があったのだけれど、プレガルディエンとシュタイアーはまさしくそうした関係を築き上げていたのではないか。
シューベルトの好きな方、特に彼の歌曲が好きな方には大いにお薦めしたい一枚だ。
2016年01月31日
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