2016年01月20日

中村梅之助さんの死を悼む

☆中村梅之助さんの死を悼む


 劇団前進座の代表で歌舞伎俳優の、四代目中村梅之助が亡くなった。85歳。
 前進座の看板役者で設立者の一人である三代目中村翫右衛門の長男として生まれ、自らも前進座に入り活躍、さらには代表として劇団の維持運営に尽力した。
 また、テレビドラマや映画にも数多く出演し、中でも『遠山の金さん捕物帳』や『伝七捕物帳』、NHKの大河ドラマ『花神』(村田蔵六=大村益次郎)で知られる。
 ほかに、NHKの大河ドラマ『峠の群像』(近松門左衛門)、同じくNHKのドラマ『真田太平記』(徳川家康)に出演したり、必殺シリーズのナレーションを務めたりもした。
 三谷幸喜に大きな影響を与えたはずの『花神』(長い頭!)には間に合わなかったものの、遠山の金さんや伝七には再放送で子供の頃から親しんだ。
 非人=同和問題に切り込む回(川谷拓三がその他大勢で出演していた)すらあった前進座らしい前者、「よよよいよよよいよよよいよい、めでてえなあ」のフレーズでおなじみ後者(少し前に、AKB48のオールナイトニッポンで誰かがこのフレーズを突然口にしていて、びっくりした)と、いずれも忘れ難い。
 政治的社会的にリベラルな姿勢をとり続けた人でもあった(何せ、戦前の前進座は座員全てが日本共産党員になったような劇団だもの)。
 なお、長男は同じく俳優の二代目中村梅雀。
 深く、深く、深く、深く黙祷。

 十八番の『魚屋宗五郎』の宗五郎や『勧進帳』の弁慶は観逃したけれど、2000年9月13日に、今はなくなってしまった吉祥寺の前進座劇場での『芝浜の革財布』で梅之助さんの姿に接することができたのは、僕にとってよい劇場体験の一つだ。
 実は、この日の一番目の出し物、三好十郎の『噛みついた娘』は、大切な役回りを演じたベテランの女優さんが噛みまくって、これじゃあ『噛みついた娘』じゃなくて、『噛みまくった女優』やないかと内心唖然としていたのだが、梅之助さん演じる熊五郎を目にして、そんな不満はどこへやら、小判を数える熊五郎、花道を颯爽と駆け抜ける熊五郎にはほれぼれとしたものである。
 そして、改めてルーティン(演技の水準を保つこと)の凄さを思い知らされた。
(そういえば、この日は三遊亭鳳楽をロビーで見かけたんだった)

 そうそう、梅之助さんに北のご首領様に、小沢昭一に日本で拉致されて死刑を宣告されたこともある南の大統領に、岡田真澄に北の大国の偉大なる同志に扮してもらい、三人が肩を組み、握手をしあっている姿を撮影してみたかった。
 加えて、有島一郎に日出る国のやんごとなきお方に、芦屋小雁に大陸の革命家に扮してもらえれば最高だったが…。
posted by figarok492na at 20:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 観劇記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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